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ライブ体験を無形の音楽・文化資産として後世に遺す「ライブの真空パック」アンバサダーにLUNA SEAが就任
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2024.10.9
tagged: Distance Viewing, ライブの真空パック, LUNA SEA, Real Sound Viewing, GPAP(General Purpose Audio Protocol)
ライブやコンサートの体験をそのまま保存し、時空間を超えて再現する「ライブの真空パック」をコンセプトに掲げ、技術開発に取り組んできたヤマハ。ロックバンドの演奏再現を可能にする新たな技術を開発し、2024年9月5日にはそのコンセプトに賛同した人気ロックバンドLUNA SEAが「ライブの真空パック」アンバサダーに就任した。
世の中には、さまざまな理由から観たくても観られないライブがたくさんある。しかし、一般的なライブビューイングでは臨場感や迫力は再現しきれず、そこから得られる体験は本物のライブとかけ離れている。それを解決するのが「ライブの真空パック」だ。その実現に向け、ヤマハは新たな技術の開発を進めてきた。
主な取り組みのひとつが、「Real Sound Viewing」。アーティストのパフォーマンスをデジタル化して記録し、楽器の生音による演奏を忠実に再現する。
また、もうひとつの柱となるのが高臨場感ライブビューイングシステム「Distance Viewing」。ライブ会場で収録した音声と大型スクリーンを用いた等身大映像と本番同様の照明演出で、アーティストのパフォーマンスをステージ上によみがえらせる。
そして、これらを支えるのが音声、映像、照明などさまざまなデータをオーディオデータ(wavデータ)の形式に統一して記録、再生できる「GPAP(General Purpose Audio Protocol)」だ。
「Real Sound Viewing」では、ピアノなどの鍵盤楽器やコントラバスやチェロなどの弦楽器、ドラムなどの打楽器まで幅広いアコースティック楽器の演奏の再現が可能だ。加えて、今回新たにエレキギター、エレキベースの演奏をリアルに再現する高精度なリアンプシステムの開発に成功した。
アンプを使った音づくりを効率化する従来の手法として「リアンプ」がある。ダイレクトボックス、オーディオインターフェイス、リアンプボックスを経由してアンプから音を出す仕組みだが、各機器が個別に設計されていることから音声データがとおる際に音質が変化してしまうという課題があった。これらの過程をトータルで設計することにより、音の変化や劣化を抑え、生演奏の音を忠実に再現することを実現した。
さらに、ドラム演奏の再現も大きな進化を遂げた。キックペダルを踏み込む量などをセンサーで測り、動きを再現する技術を開発。より迫力のあるロックドラムの演奏を再現できるようになった。
こうした取り組みの最終目標は、音楽とその体験を無形の音楽・文化資産として保存することにあるという。
LUNA SEAは、これらの新技術の開発をトップアーティストの視点でサポートしてきた。高いクオリティで音づくりやパフォーマンスを行い、ダイナミックなステージでファンを魅了してきた彼らの要求を満たす技術品質を達成できたことは、ヤマハにとって「ライブの真空パック」を実現していく上で大きなマイルストーンになったという。
早い段階から関心を寄せていたというSUGIZOさん(Gt.)は、こうした技術を「夢の塊」だと話す。
「ライブこそが自分たちの存在証明であり、ステージこそが自分たちの居場所。僕らのライブが、演奏が、息遣いが100年後、500年後に残る。そこにとてもロマンを感じました」
Jさん(Ba.)は、「全ミュージシャンの夢を乗せた挑戦」と表現する。
「音符をどう鳴らしていくかは、プレーヤーそれぞれの個性。そういう意味ではライブが後世に遺っていくことは、ミュージシャンンの魂が未来に遺ってくことだと思います。僕らが存在しなくなっても、魂が遺っていくことのすごさ。音楽はデータ化していますが、そのもとにある原始のエネルギーを未来に向けて遺していくのは本当にすごいことです」
さらに、「僕が魂をかけて音楽をやっている大きな理由は、次の世代にバトンを渡すため」(SUGIZOさん)、「今後『ライブの真空パック』が家でも楽しめるようになったら、飛び出してくる音楽に触れた子どもたちの人生にどう影響していくのか。それを想像すると、ワクワクすることしかない」(Jさん)と次世代への想いを募らせた。
2024年9月5日のアンバサダー就任式では、2023年5月29日に行われた伝説のライブ『LUNA SEA Back in 鹿鳴館』の“真空パック”がメディアに披露された。
ステージには演奏シーンを映す大きなスクリーンと、本人たちが使用するドラムセットやアンプが配され、それぞれの演奏を再現。ドラムのペダルの踏み込みの深さや力強いドラミングまでもが忠実に再現され、ギターアンプとベースアンプから出力される音声は圧倒的な迫力。音と連動する照明やレーザーなどの舞台演出もすべて再現され、ライブハウスにいるかのような臨場感をたっぷり味わうことができた。
ヤマハは今後も、最新技術とテクノロジーを用いてLUNA SEAのライブを無形の音楽文化遺産として保存、再現していく予定だ。そして、「ライブの真空パック」はこれが完成形ではないという。
「ライブの真空パック」は現代の音楽だけでなく、伝承が危ぶまれる伝統音楽や民族音楽の保存や継承にも役立つ。すでに筑前琵琶や馬頭琴などの保存にも取り組んでおり、学術的領域でも注目されている。
さらなる進化と用途の拡大に胸が躍る。
文/ 福田素子
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