Web音遊人(みゅーじん)

清春

今月の音遊人:清春さん「僕にとっては、歌が唯一、感動へと昇華できるもの」

黒夢やSADSの活動を経て、孤高のロックシンガーとしての地位を不動のものとしている清春さん。2024年にデビュー30周年を迎え、ますます輝きを放つ彼に、音楽への想いを伺いました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

DEAD ENDの『SONG OF A LUNATIC』ですね。『GHOST OF ROMANCE』というアルバムの最後の曲で、ライブビデオも1000回は観ています。高校はデザイン科だったんですけど、ロックが好きな先輩の部屋に遊びに行った時に、初めてDEAD ENDの『DEAD LINE』を聴かせてもらって。メタルバンドの中でパンクのボーカルが歌っているような衝撃。それがMORRIEさん(ボーカル)との出会いで、歌はもちろん、服装やメイクにも憧れましたね。
DEAD ENDはメタル系の雑誌でも取り上げられていたけど、ストリート感があってカッコよかった。『GHOST OF ROMANCE』でメジャーデビューすることになって、名古屋の芸創センター(名古屋市芸術創造センター)にライブを観に行ったんですよ。演奏は激しいのに、3曲目ぐらいまでMORRIEさんが体育座りで歌っていて、驚きました。
DEAD ENDの初の渋谷公会堂での『SONG OF A LUNATIC』は、VHSで観すぎて、2回ほどテープを切ったぐらいです。演奏にも惹かれたけど、映像の編集もすごかった。ライブ映像から急に画面が切り替わって、エンドロールが流れるなか、メンバーの皆さんが煙とともに、どこかに消えていくんですよ。「ライブは最後に盛り上げるものだ」という固定観念を覆されました。そんなデカダンな世界観も大好きでしたね。

Q2.清春さんにとって「音」や「音楽」とは?

結局は、歌。そして、声でしょうね。声のトーンをオケにどうぶつけていくかっていうのが僕の「音楽」に近いのかな?楽器や楽曲に歌が合わさる瞬間が一番ですね。僕にとっては、歌が唯一、感動へと昇華できるもの。言葉や発声を全部うまく整えられたら「音楽」になるんだと思います。

清春

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

わからないなぁ……。僕はまだ遊べるレベルじゃなくて、いつも必死です。声が出る/出ない、自分の肉体、プレイする楽曲。ライブの時は、その3つにお伺いを立てていますね。
たとえば歌では、フリーのフレーズでほかの楽器の人と戦えるようになってきました。今ソロで一緒にやっている栗原健さん(サックス)、加藤エレナちゃん(ピアノ)、SATOKOちゃん(ドラムス)たちのように、相手のプレーヤーがすごければすごいほど、音で遊べている感じがします。ソロのライブでは、本編中盤で即興的なセッションのコーナーもあるんですよ。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

高校の時にエレキギターを欲しいと思って、安いのを親が買ってくれたけど、まったく弾かずに飾ってあるだけでした。楽器を持ってステージに立とうと思ったのは34歳なんですよね。SADSの最後の『EVERYTHING』っていう曲。Am、Em、Dの3コードしか弾けない、右手のストロークもままならない状態でステージに出たんですよ。いざ本番になるとなんにもできなくて、難しいんだなと思いました。「これは一回、練習してみよう」じゃなくて、「やめよう」って(笑)。
けどギターは、作曲する時に弾いているうちに、だんだんできるようになりました。練習はしたことがなくて、ステージで弾いて上手くなるっていう。今は多少弾けるんですけど、アルペジオ、バッキング、ストロークぐらいですね。「習得」というと、ギタリストの方々に申し訳ないくらいです。
ギターをやっていて良かったと思うのは、曲作りの時ですね。かつての黒夢では、ほとんどの曲を口ずさんで作っていました。だから、今ギターで弾いてみると、理に適ってないことがたくさんある。たとえば『少年』だと、「あれ?なんでこの音に行っちゃうの?」っていう転調をしているんです。「転調したあと、戻れないじゃん」っていう。でも、当時の僕は「これがいい!」と思ったんでしょうね。そこが面白かったりもするんですけど。
不思議なもので、ギターがまだ弾けなかった時期に作ったSADSの『忘却の空』を今、弾いてみたら、理に適っているんですよ。「うまくできているな!」って。楽器を弾けるようになると、そういうことがわかって良いですね。あとは地方で、ライブの打ち上げで行くバーとかにギターが置いてあると、「ちょっと弾けるとカッコいい」ってぐらいですかね(笑)。
僕自身は音を鳴らすことはできていると思うんです。歌によって、光みたいなものを遠くまで届けることを「鳴らす」って僕は呼んでいるんですけど、それが音楽をやっていて良かったことかな。演奏はできても、鳴らせていない人は意外と多いんですよ。

清春〔きよはる〕
1994年、黒夢としてメジャーデビュー。その独創性溢れるパフォーマンスとメッセージ性の強い楽曲で人気を博すも、その絶頂の最中、わずか4年間で突然の無期限活動休止を発表。1999年にSADSを結成し、2000年TBS系ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の主題歌「忘却の空」が大ヒット。同曲を収録したアルバム『BABYLON』はオリコン1位を記録。2003年、DVDシングル『オーロラ』で清春としてデビュー。2004年「DAVID BOWIE A REALITY TOUR」大阪公演にオープニングアクトとして出演。2020年には自叙伝『清春』を発刊。2024年3月、ヤマハミュージックコミュニケーションズ移籍第一弾オリジナルアルバム『ETERNAL』をリリース。2025年2月9日、東京ガーデンシアターにて約10年ぶりに黒夢を復活させ、同年7月から全国Zeppツアーを開催。9月3日にライブBlu-ray『CORKSCREW A GO GO! SAINT MX XXXX XXXX』をリリース。
オフィシャルサイト

YouTube公式チャンネル オフィシャルX(旧Twitter) オフィシャルInstagram

photo/ 森好弘

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人 岡本真夜さん

今月の音遊人

今月の音遊人:岡本真夜さん「親や友達に言えない思いも、ピアノに聴いてもらっていました」

11756views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#034 ジャズであることの二律背反をまっとうした“祈り”のシンフォニー~ジョン・コルトレーン『至上の愛』編

2473views

Pacifica

楽器探訪 Anothertake

「自分の音」に向かって没入できる演奏性と表現力/エレキギター「Pacifica」

3831views

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法 - Web音遊人

楽器のあれこれQ&A

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法

17830views

大人の楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

21364views

アカネキカク akaneさん

オトノ仕事人

楽曲のイメージをもとに、ダンスの振りを考え、演出をする/振付師の仕事

3856views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

30435views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

8108views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

27539views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

11141views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

6946views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28252views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

9746views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

27539views

ジャズとロックの関係性

音楽ライターの眼

ジャズ・ギターとビートルズの出逢い~なぜ『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』まで出逢えなかったのか?

3871views

松石陽介さん

オトノ仕事人

「音楽の輪・人の和」を大切にして、子どもたちを健やかに育てる/地域バンドをまとめる仕事

1413views

ざぶとんず

われら音遊人

われら音遊人:本家ディアマンテスが認めた 力強く、心躍るサウンド!

1162views

長く使い続けてもらえる電子ドラムを目指して──電子ドラム「DTX6K5-MUPS」

楽器探訪 Anothertake

長く使い続けてもらえる電子ドラムを目指して──電子ドラム「DTX6K5-MUPS」

1298views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

17316views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

5296views

SE ArtistModel

楽器のあれこれQ&A

クラリネット入門!始める前に知りたい5つの基本

758views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

11239views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11841views