
今月の音遊人
今月の音遊人:上原彩子さん「家族ができてから、忙しいけれど気分的に余裕をもって音楽と向き合えるようになりました」
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その日、その時、そのメンバーでしか生み出せない自分らしい演奏を届けたい/廣津留すみれインタビュー
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2025.2.14
バイオリニスト、そして起業家や大学准教授としての顔をもつ廣津留すみれ。活動の幅を広げながらも「自分らしい演奏を届けること」に真摯に向き合う姿勢と、コンサートに対する思いを聞いた。
12歳で九州交響楽団と共演。高校在学中にカーネギーホールでソロデビューを果たしハーバード大学へ進学。卒業後にはジュリアード音楽院の大学院でバイオリンを専攻……と輝かしい経歴のバイオリニスト廣津留すみれ。朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」で、金曜日のレギュラーコメンテーターを務めるなど、その活躍は多岐にわたっている。
しかし本人は「自分の軸は音楽」と明言する。その言葉が示すとおり、近年は国内外のオーケストラとの共演のほか、全国各地でソロリサイタルを行うなど精力的な演奏活動を展開。「ジャンルにこだわらず、さまざまな楽曲を演奏できる今が楽しい」という廣津留すみれのコンサートが、北陸地方を中心に行われる「ガルガンチュア音楽祭」の一環として2025年春の大型連休期間中に開催される。
まず、デュオでの共演は2度目となるピアニスト實川風とのリサイタル。聞けば、初めて共演した際の忘れられない思い出があるそうだ。
「ある作曲家さんの新曲の初演だったのですが、これが超を何個つけても足りないほどの難曲で、ふたりとも息をつく暇もなく、演奏に集中しないと音を見失うくらい大変だったんです。“はじめまして”と挨拶したと思えば、必死にリハーサルを重ねて、本番は一瞬の呼吸を合わせただけで最後まで全力で弾ききる!といった感じでしたから、今はどんな曲が来ても大丈夫という心持ちです」
デュオリサイタルでの演奏曲は、ガーシュウィン『ポーギーとベス』(組曲より)、バルトーク『ルーマニア民俗舞曲』、クライスラー『美しきロスマリン』など、アメリカにゆかりのある作曲家たちの作品構成になる予定だ。
「とても幅広いレパートリーをお持ちの實川さんと相談しながら『アメリカン・クラシックでまとめよう』と決めました。中でも『ポーギーとベス』は久しぶりに演奏します。今回のラインアップはコンサートで頻繁に披露される曲というわけでもないので、観客の皆さまには『掘り出し物を見つけたぞ』というような新鮮な気持ちで楽しんでいただければと思います」
初演での得がたい経験を互いに経た實川に対する信頼も非常に大きいという。
「ピアニストとしてはもちろん、音楽家としてのディスカッションがとてもしやすく、曲に対して同じリズムを共有しているような感覚で演奏できます。特に、ジャズの影響も受けているガーシュウィン作品などは、ちょっとスウィングしたりもする。譜面には書かれていない“ノリ”が試される曲もありますし、實川さんと私だからこそ生み出せるオリジナリティを表現するリサイタルにしたいですね」
もうひとつは、デンマーク国立フィルハーモニー管弦楽団とのクラシックコンサートだ。スウェーデンの名門イェーテボリ・オペラで音楽監督を務めているヘンリク・シェーファーを指揮に迎え、シベリウスの交響詩『フィンランディア』やチャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』などが演奏される予定。廣津留はチャイコフスキーの『バイオリン協奏曲 ニ長調』を披露する。
「小さいころからかなり鍛えられた曲で、ずっと弾き続けてきました。メロディの美しさが素晴らしい、いちばん好きなコンチェルトです。言わずと知れた名曲ですし、耳にしたことがある方も多いのでは。流れるような旋律をオーケストラの皆さんとマエストロ、そして私らしい演奏でお届けできればと思っています」
さらにもうひとつ、心に願うことがある。
「2025年の元日に放送された朝の情報番組の中で、『能登の鎮魂と希望』をテーマにバイオリンの生演奏をしました。テレビ放送に乗せていろいろな気持ちが届くようにと想いを込めて演奏したことを鮮明に覚えています。そして今回、石川県でのコンサート開催が叶いました。このタイミングでこうした機会をいただけたことは本当にありがたいですし、生の演奏を聴いていただけたなら、これほど嬉しいことはありません」
ガルガンチュア音楽祭でのデンマーク国立フィルとのコンサートは、この石川公演を含めて愛知、神奈川、全3か所での開催となる。意外にも、同じ演目、同じオーケストラで各地を回るのは今回が初めての経験だとか。
「本番を重ねるごとにメンバーそれぞれの弾き方も変わるでしょうし、新しいインスピレーションも湧きそうで今からわくわくしています。それに、同じプログラムでも会場によってお客様の受け取り方や反応がまったく違ってくるので、その場所ごとのお客様と一緒に、私自身もコンサートを思い切り楽しもうと思っています」
さわやかな陽気に誘われて、バイオリンの豊かで華やかな響きに身をゆだねる。2025年はそんな春になりそうだ。
2025年4月29日(火・祝):静岡 長泉町文化センター ベルフォーレ「ホール」
2025年5月3日(土):石川 金沢市アートホール
2025年4月30日(水):愛知 愛知県芸術劇場 コンサートホール
2025年5月5日(月・祝):石川 音楽堂 コンサートホール
2025年5月6日(火・休):神奈川 横浜みなとみらいホール
チケットの詳細はこちら
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文/ 髙内優
photo/ 坂本ようこ
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