「奇蹟の左手」が巻き起こす新しい音楽の世界

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ニコラス・マッカーシー
「奇蹟の左手」が巻き起こす新しい音楽の世界

盛大な拍手に迎えられながら一人の男性が笑顔でステージに登場し、客席に向かって一礼するとピアノの前に座って演奏の準備に入る。ほんの少しの静寂をはさみ、彼はガーシュウィンの『サマータイム』を演奏し始めるが、そこで私たちは鍵盤上を舞っているのが彼の左手のみであることを再確認し、その見事な音楽に魅了されていくのだ。

イギリスで大きな話題を集めている“左手のピアニスト”ニコラス・マッカーシーは、2016年2月10日に東京のサントリーホール・ブルーローズ(小ホール)へ登場。集まった聴衆や音楽ジャーナリストたちの前で、デビューアルバムの日本発売を記念するお披露目ライブを行った。アルバムにも収録されているリストの『愛の夢第3番』やショパンの練習曲『大洋』、さらには大ファンだという坂本龍一の『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲も演奏し、ステージ上での簡単なインタビューも行われた。

1989年にイギリスで生まれた彼は、生まれたときから右腕が左腕の半分ほどしかなく、日常の中でいろいろな困難に見舞われたという。しかし彼はその状況をことさらに悲観することなく、「Anything is possible(できないことなんてないさ)」という言葉を胸にさまざまな壁へ立ち向かった。

「友だちから『ニコラスは自転車に乗れないだろう』と言われると、一生懸命練習して乗れるようになるのが自分の生き方でした。ピアノの場合もそうでしたよ。友だちに日本人の女の子がいて、彼女がある日ベートーヴェンのソナタ『ワルトシュタイン』を演奏してくれたのです。本当に素晴らしい音楽でした。自分も演奏してみたいと思い、14歳のときにピアノを習い始めたのです」

人一倍の練習が実り、ロンドンの王立音楽大学で学んだ彼は、2012年の夏に同校を「王立音楽大学の歴史上、おそらく初めての左手ピアニスト」として卒業(本人談)。その2週間後にはロンドン・パラリンピックにおける閉会式で、憧れのロックバンドである「コールドプレイ」と一緒に演奏し、彼の知名度は一気にアップする。多くのコンサートを行って音楽に磨きをかけた彼は、2015年6月にデビューアルバム『ソロ~左手のためのピアノ編曲集』を録音。そこで演奏しているのは、ヤマハのコンサートグランドピアノ、CFXだ。

「CFXを演奏していると、楽器に宿った強い精神を感じることができます。繊細さと力強さを併せもち、広く安定したダイナミック・レンジに圧倒されますね。そういった楽器だからこそ自分も得られるものが多く、だったらこういうことも試せるだろうかというチャレンジができたり、楽器との対話が可能になったりするのです。その結果、スケールの大きな音楽が生まれるのは言うまでもありません」

音楽を通じて聴衆と感動を共有したいと語る彼だけに、これからもCFXが良きパートナーとして充実した音楽を作り続けるはずだ。
「障がい者と呼ばれる人たちにとっての、希望あるモデルケースになりたいのです。そのためには何かを決心する心と、やり遂げる意志が必要です。常にポジティブな自分を忘れずに」
今後も彼の活動から目が離せない。


Nicholas McCarthy – Solo

■アルバムインフォメーション

ニコラス・マッカーシー
『ソロ~左手のためのピアノ編集曲』
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2016年1月20日
価格:2,600円(税抜)

 

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文/ オヤマダアツシ