
今月の音遊人
今月の音遊人:H ZETT Mさん「音楽は目に見えないですが、その存在感たるやすごいなと思います」
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バンドメンバーになった気分で、自分の好きな楽曲を演奏してみたい――音楽、楽器好きであれば一度は想像するだろうそんな憧れを叶える新感覚のスマートフォン用音楽アプリ「Extrack(エクストラック)」がリリースされた。「Extrack」とは、Track(楽曲)から必要な要素をExtract(抽出)して、アレンジしながらExtra(特別)な演奏体験を提供することをコンセプトにした造語で、手持ちのスマートデバイスから読み込んだ楽曲をヤマハの技術によって解析し、手軽にセッションの臨場感を味わえるというものだ。
ひとりでの演奏を楽しみながらも、「個人練習が続くと飽きてしまう」「バンド活動をしたいけれど、メンバーに出会う機会に恵まれない」といった悩みを持っている方も少なくないのでは? そんな状況を背景にして生まれた、「どなたにでも音楽と演奏を純粋に楽しんでもらいたい」という真っすぐな想いがExtrackの開発につながったと、アプリの企画を担当したヤマハの北村瑛梨さんは言う。
「私自身も過去に経験したことですが、人前で演奏することだけを目標に練習を続けていると、つらくなったり挫折したりということもありますよね。そこで『自宅で気軽に、ひとりで楽しむ』ことに着目し、初心者はもちろん経験者やプロの方まで、楽器を演奏する皆さんにさまざまな楽しみ方を提案したいと思い企画しました」
Extrackは、スマートデバイス内に保存している楽曲を読み込むだけで、楽器ごとの音源を分離させたり、コード進行を表示させたりできる。楽器単位で音量調整や消音が可能で、さらに楽曲のテンポ変更などさまざまな機能を用いて、音源と合わせて楽器演奏を楽しめる。
Extrackの最大の特長として挙げられるポイントは「音源分離機能」だろう。これは、読み込んだ楽曲データの音声をボーカル、ギター、ベース、ドラムなどの各楽器パートに分離する機能で、各パートの音量を自由に調整し、「自分が演奏する楽器の音をミュートして他のパートと一緒に練習する」「ドラムを強調させてリズムを把握しやすくする」など、各自の練習方法に応じた設定ができる。この機能はすでにExtrackを利用しているユーザーにも好評のようで、「耳コピでは気づけなかった音が聞き取れた」「弾きたいフレーズが把握でき、個人練習の幅が広がった」といった喜びの声も見受けられる。
楽曲データを読み込むとExtrackが楽器ごとにパートを分解する。リピートしたい箇所の指定や小節単位でのスキップが可能。
好きな楽曲のコード進行を自動解析し、演奏をサポートする「コード解析機能」では、楽曲の再生と同期してリアルタイムでコードが確認できる。ギターコードや鍵盤の押さえ方も視覚的に分かりやすく表示され、演奏しやすい仕様だ。
「使いやすさや『見てわかる』という点は特に意識しました。初心者や演奏に慣れていない方にとっては、タブ譜や五線譜を読むこともハードルのひとつとなるため、イラストで直感的に理解していただけるようデザインしています」(北村さん)
楽曲データを解析してコード進行を自動表示。ギターコードやピアノの鍵盤の押さえ方も一緒に確認できる。
スマートフォン用アプリというコンパクトな手軽さでこれだけのことができるのか、と驚くばかりのExtrackだが、開発段階ではその「小さいサイズに豊富な技術を盛り込む」点が課題になったと、開発担当の前田一樹さんは振り返る。
「操作手順を増やせばもう少し楽に収められたとは思うのですが、それでは“使いやすさ”とはかけ離れてしまいます。社内の幅広いメンバーにテスト協力を依頼し、『ひとつの画面に機能が多すぎると混乱しそう』『初心者の自分はコードがたくさん表示されるより、次に弾くコードだけが見える方が演奏に集中できる』など、率直な意見を参考に開発を進めていきました。加えて、自分を含めた開発メンバー自身も、Extrackを頻繁に試用することを心がけていました。実際に触っているからこそ、生まれてくる新しい視点や発想がある。そうしたいろいろな人の使用感や意見、アイデアを組み合わせてかたちになったアプリだと思います」
Extrackの企画・開発に携わったメンバーは、全員が楽器演奏者なのだそう。だからこそ“演奏者目線”での使いやすさにこだわることができたのだろう。リリース後も、いちユーザーとしてExtrackを活用しているという。
「私はずっとピアノを弾いていたのですが、アプリがリリースされたタイミングでギターを始めました。演奏力はまだまだですが、Extrackを使って演奏すると『自分が弾いている』感覚が増すんです。それが練習のモチベーションアップにもつながっています」(北村さん)
「私は普段ギターを弾いていますが、好きな音楽を聴いていると『ちょっとアレンジしてみたいな』という気持ちが湧いてくることがあって。そんな時、ギターパートをオフにして自分の解釈でリードのフレーズを弾いてみたり、ボーカルだけを流して弾き語り風にアレンジしてみたり、自分なりに曲を再構築して楽しんでいます」(前田さん)
それぞれの楽器の音量調整、テンポ調節など、自分のレベルや好みにあわせて練習を進められる。
ヤマハは「人と音楽は、もっと近くなる。」をコンセプトに、テクノロジーのチカラで人と音楽の可能性を広げながら、かけがえのない音楽体験の提供に取り組んでいる。長年の楽器づくりで培われた音・音楽に関する技術や知識を礎に、アプリケーションをはじめとするデジタルツール開発などの基点として2023年にミュージックコネクト事業推進部が発足した。今回の「Extrack」はその第一弾となるサービスである。着想からリリースまでおよそ一年という今までにないスピード感も、「新たなサービス、楽しさをユーザーの元へいち早く」という熱意の表れとも言えるだろう。
「まずは、Extrackをより多くの方に届けたいと思っています。そして楽器に親しむ人々がより長く、よりアクティブに演奏を楽しんでいただけるようなサービスを今後も展開していきたいと考えています」(北村さん)
音楽と新たな楽しみ方をつなぎ合わせて、私たちのミュージックライフをより豊かに。Extrackがその先陣を切る。
好きな楽曲をバンドメンバーになった気分で演奏できるiOS/Android対応アプリ。楽曲データを読み込むと、楽器ごとの音量調整やコード進行の表示、テンポ・キー変更などを簡単に行うことが可能。
詳細はこちら
文/ 高内優
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