
今月の音遊人
今月の音遊人:山下洋輔さん「演奏は“PLAY”ですから、真剣に“遊び”ます」
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音で意気投合した二人の全力全開で自由な即興演奏/山下洋輔&林英哲DUOコンサート2025 乾坤一擲[ケンコンイッテキ]
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2025.6.26
フリージャズの巨匠、山下洋輔と、和太鼓のソロ演奏というそれまでにはなかった演奏スタイルを確立した林英哲が、二人きりで火花を散らす。まさに唯一無二のDUOコンサートが2025年7月15日(火)に東京国際フォーラム ホールCで開催される。
実は、山下と林の出会いは1985年に遡る。東京・中央区の倉庫にあったアートスペース「ギャラリー上田・ウエアハウス」で『和太鼓/ジャズピアノ』と題したDUOライブが企画され、初めてのセッションを行っている。
山下「初めてやったときのことは、はっきりと覚えています。打ち合わせも何もなく、すぐにリハーサルをやりました。ライブハウスみたいな狭いところに、太鼓のセットがダンと置かれていて、ピアノもあって。最初に英哲さんが太鼓をドーンと打ち鳴らしたときに、もうぶっ飛びました。その音がとても気持ちが良くて、自分も自由に演奏できるな、という安心感がありました」
林「当時から山下さんのことは知っていましたし、文筆家としてジャズの雑誌に連載されていたエッセイを読んだりもしていましたが、私はジャズをやったことがなかったので、お会いしてまず『何をやりましょうか?』『どうやりましょうか?』とお聞きしたんです。すると『ああ、好きにやってください』って」
山下「英哲さんが好きにやっている中に、僕がまぎれ込ませてもらうという、そういうやり方しかできないのでね」
山下洋輔
音で意気投合した二人は、その後も共演を重ね、100回近くの共演を行ってきた。その中には、ヨーロッパ、アフリカ、南米、アジアなど海外での公演もあった。どうしてこれほど二人の共演が多くなったのだろう。
山下「各地の公演で英哲さんがソロを何分間やっても、お客さんが満足していることがわかるんです。そんなすばらしい打楽器奏者と一緒にやれることがうれしくて、やるほどにますますおもしろくなって、もっとやりたくなる。だから、お話があるたびに共演させてもらっているんです」
林「私は山下さんと一緒だと安心なんです。あれ、昨日と違うなと思っても、だから困ったということにはならなくて、じゃあこうしようというのが自然に出てくる。最初に共演したときに最後の曲がラヴェルの『ボレロ』だったのですが、終盤にちょっとミスをして、終演後に『すみません、間違えました』と言ったら、『いやいや、今日はああやりたかったんだと思えばいいんですよ。音楽に間違いはない』と山下さんがおっしゃった。それからは本番で何が起こっても大丈夫、今日はこういうことなんだからと思えるようになりました。山下さんには絶対的な信頼があります」
林英哲
2003年にはDUO活動の集大成となるCD/DVD『Ken-Kon 林 英哲meets山下洋輔』を発表し、同年から翌2004年にかけて全国ツアー『乾坤価千金(けんこんあたいせんきん)』も行った。
山下「私たちがやるのは即興なので、このツアーでも公演ごとに内容が違いました。二人で積み重ねてきた土台のようなものはあるのですが、私はとにかく英哲さんの太鼓の音を聴いて、気持ちよくそれに乗れればいいと思って演奏していました」
林「私は山下さんの胸をお借りしながら、毎回が真剣勝負でした。自分のコンサートツアーでもこれほど多くの本数をやったことはなく、しかも二人だけでゲストもいません。このツアーは毎回どんどんヒートアップしていって、周りから『英哲さん、大丈夫?』と心配されるほどだったのですが、山下さんはそれもおもしろがってどんどん突き進んでいくので、こちらも必死でした。そういうことができるお相手は、山下さん以外にはいません」
このツアーから20年以上の時を経て開催される、今回のDUOコンサート『乾坤一擲[ケンコンイッテキ]』。円熟味を増した二人によって、どのような演奏が繰り広げられるのだろうか。
林「これまでと違うことは特にありません。40年前と比べれば、肉体的な経年変化はありますが、演奏が始まってしまえば、自分の限界を感じるようなことは全くないですね」
山下「私も同じです。英哲さんの音を浴びる心地よさはずっと変わらない。その音にピアノで応えるだけです。英哲さんとやるとき、私は全力全開でいきますし、その場でできるいちばんいいことをするという、まさにジャズの神髄のようなことができる。終わったときの“やりきった感”も大きいので、今回の『乾坤一擲』が終わっても、またやりたいね、ということになるのでしょう」
山下と林のDUOに初めて接した観客は、“たった二人だけの演奏なのに、これだけパワフルで豊かな音の世界を表現できるのか”という衝撃を受けることが多いという。圧倒的な音圧に揺れる会場の空気を体感しながら、その中から響いてくる繊細な音の美しさをぜひ生で味わってほしい。
日時:2025年7月15日(火)18:00開演(17:00開場)
会場:東京国際フォーラム ホールC(東京都千代田区)
料金(税込):S席9,000円/A席8,000円
詳細はこちら
文/ 前田祥丈
photo/ Sakae Oguma
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tagged: 林英哲, 乾坤一擲, ケンコンイッテキ, 山下洋輔
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