今月の音遊人
今月の音遊人:仲道郁代さん「多様性こそが音楽の素晴らしさ、私自身もまだまだ変化していきます」
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今月の音遊人:矢野顕子さん 「わたしにとって音は遊びであり、仕事であり、趣味でもあるんです」
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2023.3.1
自在にピアノを操りながら、オリジナリティあふれる世界を描くアーティストとして海外でも高く評価されているシンガーソングライターの矢野顕子さん。その音楽に対する想いを伺いました。
おそらくアソシエイションというアメリカのバンドの『チェリッシュ』という曲です。1966年の曲だから、たぶんわたしは小学校の4年生とかの時。そのくらいの年代で、しかも当時は青森に住んでいたから、入ってくる音楽のソースというのはすごく狭められたものしかなかったんです。
だから『チェリッシュ』はラジオで聴いていいと思ったのか、それとも医者をしていた父の患者さんにレコード屋さんだった方がいらして、そこで聴かせてもらったのが最初だったか……、そのどっちかだと思います。
当時は、とにかく聴ける限りの洋楽の曲をラジオでずっと聴いていたのですが、ビーチボーイズがすごく有名で、コーラスがかっこいいと言われていたんです。アソシエイションもコーラスグループですけど、わたしは、こっちの方がすごく好きというか、好みに合っていたんです。
ビーチボーイズはいかにもカリフォルニアという陽気な感じで、中には変わったコード進行の曲もあるけれど、『サーフィンUSA』とかヒット曲はコード進行もわりとシンプルというかな。それに対してアソシエイションのコーラスはより複雑な感じで、それがすごく自分としては気に入っていました。
大人になってから聴かない時期もあったけれども、レコードはいつもちゃんとすぐそばにありましたし、新しいアルバムが出れば必ず買っていましたね。今でもたまに聴くんですよ。クルマの中とかで聴いて、その当時の気持ちに戻ったりと。楽しんでいます。
えーと、いちばん好きなことで得意なことです。
他に言いようがないですね。
“音で遊ぶ”ということは、音を使ってただ面白おかしいことをするということではないし、自分だけが楽しいことをするというわけでもないと思います。そうではなくて、もっともっと大きな広がりを音でつくる。という感じじゃないでしょうか。ですから、“音で遊ぶ”ということは、音を使って人と人が楽しく生きてく、ということなんじゃないかなと思います。
なので、パッと思い浮かぶのは矢野顕子です。
わたしにとって音は遊びであり、仕事であり、趣味でもあるんです。
音楽はいちばん楽しくできることで、しかもそれでお金ももらえるなんて。こんないいことがあっていいのだろうかとも思います。だけど、わたしに関してはいいだろうと思っています。だって、音楽以外にはなにも出来ないし。それに自分のつくったもので、いくらかの人々に幸せな気持ちになってもらうことができているとも思えますから。
矢野顕子〔やの・あきこ〕
1976年、アルバム『JAPANESE GIRL』でソロデビュー。以来、YMOとの共演や様々なセッション、レコーディングに参加するなど、活動は多岐に渡る。2015年、Seiho、tofubeatsなどのトラックメーカーを迎えアルバム『Welcome to Jupiter』をリリース。2020年、宇宙飛行士の野口聡一氏との対談による書籍「宇宙に行くことは地球を知ること」を光文社新書から発売。2023年3月、野口聡一宇宙飛行士が2020年に国際宇宙ステーションでの長期滞在中に書いた詞に曲をつけた、全14曲のピアノ弾き語りアルバム『君に会いたいんだ、とても』を、矢野顕子・野口聡一名義にて発売。
オフィシャルサイト
文/ 前田祥丈
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