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オーケストラのステージの“演奏以外のすべて”を支える/オーケストラのステージマネージャーの仕事(前編)
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2017.1.18
tagged: オーケストラ, オトノ仕事人, ステージマネージャー, 東京交響楽団
オーケストラの編成は少なくても30名前後、多くなれば100名を超えることもある。合唱が入るとその数はさらに増える。この大人数をステージに迎え、コンサートを滞りなく進行させるには、舞台裏で支える専門スタッフの力が必要不可欠。そのスタッフの中で中心的な存在を担っているのが、ステージマネージャーだ。
「ひとことで説明するなら、コンサートの進行に関するすべてを司る仕事といえばいいでしょうか」と語るのは、東京交響楽団のチーフ・ステージマネージャーとして日々奮闘している今村和弘さん。今村さんに、オーケストラの演奏を支えるステージマネージャーの仕事について伺った。
東京交響楽団はミューザ川崎シンフォニーホールを本拠地ホールとして活動し、定期演奏会やオペラ・バレエ公演の演奏、子どものためのコンサートシリーズなど、各地のホールで年間160前後の公演を行っている。現在89名の楽員が在籍し、編成は公演ごとに変わる。そして、ステージマネージャーは楽員と常に行動を共にする。「毎月出されるスケジュール表を見て、いつ、どこで、何をすればいいのかをまず把握します」
公演やリハーサルがある日はすべて仕事になる。東京交響楽団のステージマネージャーは今村さんのほかにもう1人。アルバイトスタッフも数名いる。しかし今村さんは、ほぼすべての現場に参加するという。
「オーケストラの使命は、お客様に満足していただける演奏をすることです」と今村さんは言う。そのために、プレイヤーが演奏に集中できるように努力するのがステージマネージャーの仕事なのである。
「演奏する曲やオーケストラの編成、演奏会場やリハーサル場所など、そのときどきの状況に応じて対応しなければいけないので、毎日が変化の連続ですね」。基本的な仕事の流れは決まっているものの、ルーティンではこなせないものだという。
では具体的にどのような仕事をしているのだろうか。ひとつの公演を想定して、ステージマネージャーの仕事の全体像を見てみよう。
楽団の最終決定スケジュールが出るのが公演の約2か月前。「これを見て、まず演奏曲ごとの楽器編成を確認します」
ほとんどの楽器は、本拠地であるミューザ川崎シンフォニーホールにあるが、楽団で所有していない楽器を使うときは、借り出しの手配も行う。また、他の会場でリハーサルや本番がある場合は、楽器を持ち出す手配も行う。数か所を移動するときなどは、できるだけ効率よく運べるように考えるそうだ。
そして、演奏会で使用するホールの舞台図面にオーケストラの編成を落とし込む作業をする。「オーケストラの配置を、リハーサルと本番で同じ形になるようにしたいので、本番の会場での配置を考えてから、リハーサルではどうするか検討し、図面に編成を書き込みます」
それぞれの場所によって、広さや使えるものが異なるため、綿密な作業が要求される。この配置のプランニングがもっとも気を使う仕事という。
編成のプランニングと並行して、各ホールには機材の搬入から搬出までのスケジュールを伝える。通常の編成だとそれほど苦労なく進められるとのことだが、時にはいつも以上の力仕事になることもある。「現代曲のときは打楽器の量がとてつもなく増えることがありますから大変ですね」
コンサート当日は、楽器の搬入、楽屋の準備、舞台の設営、ゲネプロ(最終リハーサル)、本番という流れになる。ホールにより空調や照明も変わるので、それらの調整も重要だ。そして開演の10分前くらいに、定刻通りに開演するかどうかを主催者に確認する。「開演の5分前になったらベルを鳴らし、楽員と指揮者にも声をかけ、時間が来たら楽員を舞台に送り出し、タイミングを見て指揮者も送り出します」
本番の演奏中は、何が起きてもすぐに対応できるように舞台の袖で見守っている。終演後は一息をつく間もなく、後片付け。ホールの退出時間が決まっているので、普通のコンサートならおよそ40〜50分で終えるという。
文/ 唐沢耕
photo/ 坂本ようこ
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