Web音遊人(みゅーじん)

Chageさん「心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」 Web音遊人

今月の音遊人:Chageさん「頭ではなく、心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」

50代最後となる2017年の春も、ニューシングルのリリースやライブなど精力的な活動を展開するChageさん。デビューから38年、走り続けるChageさんに思い出の曲や自身の変化、音楽への思いをうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

ザ・ビートルズ のアルバム『アビイ・ロード』のB面ですね。『Here Comes the Sun』から始まり『The End』で終わる一連のメドレーになっているのですが、未完成の短い曲をつないでひとつの流れをつくるという編集が見事。中学生で初めてこのアルバムを手にして以来、繰り返しかけていましたね。今でも聴いています。
ビートルズとの出会いは小学4年生のとき。当時高校生だった叔父の家に遊びに行くと、初期のビートルズが必ずかかっていたんです。夏休みには、『ゴジラ』でも観るのかと思いきや、映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』に連れて行かれたこともありました。「この4人が世界を変える」という叔父の言葉は、今でも覚えています。といっても、僕は音楽漬けの日々を送っていたわけはなくて、野球が好きなごく平均的な小学生でしたから、そんなこと言われても……という感じでしたけれど(笑)。
ただ、時代が動く瞬間を叔父がリアルタイムで見て伝えてくれたことは、僕にとっては大きかった。叔父は九州から夜行列車に乗って日本武道館のビートルズ日本公演に行っていて、僕がデビューしたときにそのチケットの半券をくれたんです。それから何年後かに自分が武道館に立ったときには、やはり感慨を覚えましたね。ビートルズのマインドやエッセンスは、今も自分の体の中に入っていると思います。
ビートルズに限らず、僕はついUK(イギリス)の音楽を聴いてしまうんです。スコーンと抜けたアメリカのロックとは違い、UK の音楽はいわば曇り空。どんなに明るい曲でもどこか濡れている。自分の楽曲でもそんな切なさを出したいですね。

Q2.Chageさんにとって「音」や「音楽」とは?

辛いとき、楽しいとき、人は歌を口ずさみますよね。喜怒哀楽、感情の変化のすべてが歌につながっていると思うんです。「音楽」は特別なものではなく、生活の一部ではないでしょうか。
昔の僕は、感動を与えようとか、心を鷲掴みにしようといった思いが強かった。それはそれで必要なことだったし、そうやって成長してきました。でも、50代も終わろうとしている今、自分の中で変化が起きているのは事実で、リスナーの日常の中に寄り添いたいという気持ちが大きくなってきたんです。大上段に構えるのではなく、味噌汁やコーヒーを飲むように、Chageの音楽があったらいいな、と。哀しいときに聴くのか、楽しいときに聴くのかはリスナーの自由。ただ、音楽によってリスナーが少しでもポジティブな気持ちになれたり、その背中を押してあげたりすることにつながればいいなと思っています。
今は、そうした力の抜き加減を追求しているといってもいいかもしれません。ポールの日本公演を観ても非常にいい具合に肩の力が抜けていて、70歳という年の重ね方が音になっている。あんなふうになれたらいいですね。

Chageさん「心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」 Web音遊人

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

音楽はものすごく懐が深いですよね。ですから音で遊んでいるつもりが、遊ばれているんじゃないかなと思います。
僕は青春の思い出をつくろうと「ポプコン」に出場して、アマチュアからプロと呼ばれるようになって、それなりに頑張ってきました。でも最近、そろそろ音と対峙し、遊べるところまで行きたいと感じるようになりましたね。川、海、山、木……自然界のあらゆるところに音がある。それらを音楽と結び付け、つなげられるようになれば音と遊べるんじゃないかという気がします。
実は、3年ほど前から「水のように歌いたい」と思い始めました。これまでの僕は、濃い芋焼酎(笑)。でも、どんなに高級なお酒より、すばらしい職人がつくった銘酒より、森から出てきた水が一番おいしいんじゃないかと思うんです。
僕はどちらかというとクセがある歌い方をするので、一度それを取り払ってみたいですね。そして今、シンプルな音をつくることに歓びを感じています。頭ではなく、心から湧き出てくるものを素直に歌いたいという気持ちが強いんです。
今後はChageを通した音楽観を押しつけがましくなく、水のようにすっと入り込めるものにしていきたいですね。音楽には終わりはありません。これからも終わりのない遊びをずっとやっていくんでしょうね。

Chage〔チャゲ〕
「ポピュラーソングコンテスト」、通称「ポプコン」の第16、17回大会で「チャゲ&飛鳥」で入賞。1979年『ひとり咲き』でデビュー。その後、数多くのヒット曲を生み出し、日本を代表するアーティストに。現在はソロを中心に活動し、JFN系17局ネット『Chageの音道』でパーソナリティを務めるなど幅広い活躍を見せる。
Chageオフィシャルサイトhttps://chage.jp/

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:亀田誠治さん「音楽は『人と人をつなぐ魔法』。いまこそ、その力が発揮されるべきだと思います」

7107views

ジャズとデュオの新たな関係性を考える

音楽ライターの眼

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.11

3650views

楽器探訪 Anothertake

おしゃれで弾きやすい!新感覚のアコースティックギター「STORIA」

44960views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

25893views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

10533views

オトノ仕事人

最適な音響システムを提案し、理想的な音空間を創る/音響施工プロジェクト・リーダーの仕事

1782views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

11200views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6469views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8200views

上海ブラスバンド日本支部

われら音遊人

われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド

1923views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

6917views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29073views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

10858views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8200views

いい音楽に巡り会えたら、自然に言葉があふれ出す―珠玉のエッセイ集『音のかなたへ』

音楽ライターの眼

いい音楽に巡り会えたら、自然に言葉があふれ出す―珠玉のエッセイ集『音のかなたへ』

6080views

オトノ仕事人

ピアノを通じて人と人とがつながる場所をコーディネートする/LovePianoプロジェクト運営の仕事

17364views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

7967views

【楽器探訪 Another Take】ベルの彫刻デザインとマウスピースも一新

楽器探訪 Anothertake

ベルの彫刻デザインとマウスピースも一新

9079views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

10053views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5321views

知って得する!木製楽器の お手入れ方法

楽器のあれこれQ&A

木製楽器に起こりやすいトラブルは?保管やお手入れで気を付けること

20839views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

6666views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24752views