Web音遊人(みゅーじん)

兄弟それぞれのピアノへの想い/『レ・フレール』斉藤守也&斉藤圭土インタビュー

兄弟それぞれのピアノへの想い/『レ・フレール』斎藤守也&斎藤圭土インタビュー

1台のピアノの鍵盤を4本の手で華麗に繰る独特のプレイスタイルと、独自の楽曲で注目される兄弟デュオ「レ・フレール」。鮮烈のデビューから2016年で10年が経ち、兄・斎藤守也、弟・斎藤圭土ともにソロとしても活躍中だ。
2017年3月には、守也が初のピアノソロアルバムを、圭土が2タイトルを同時にリリース。コンポーザー、そしてピアニストとしての活動に目が離せないおふたりそれぞれにお話をうかがった。

■コンセプトは「アルバム1枚の中の多面性」/斎藤守也

コンセプトは「アルバム1枚の中の多面性」/斎藤守也

まさに“満を持して”という表現がふさわしい。2017年3月1日、斎藤守也の待望のピアノソロアルバム『MONOLOGUE』がリリースされた。「レ・フレールとしての活動を10年間集中してやってきた今だからこそ、できたアルバム。結果的にはこのタイミングで良かったと思っています」と彼は語る。
幼少期から音楽が好きで、家にあったキーボードで作曲していた。12歳でピアノを始めたが、その頃ピアノは作曲をするための手段だった。そして、すばらしい先生と巡り会いピアノの楽しさや気持ちよさを教わり、レ・フレールとしてデビュー。そして、今、心からピアノが好きだと思う気持ちがピークに達している。
「レ・フレールとしてやっているからみなさんが認めてくださっているという思いがあり、ピアニストとして自分はどうなんだろうという不安はずっとありました。これだけやっているのに、いまだにピアニストと呼ばれるのは恥ずかしい(笑)。でも、ピアニストとしての自覚をしなければと腹を決めてリリースしました」

「ソロだからこそできること」に心を砕いて自分の世界にどっぷり浸かり、かなり“素”を出した。独白を意味する『MONOLOGUE』というアルバムタイトルにも、その思いはにじむ。コンセプトは「アルバム1枚の中の多面性」。独特な世界観を築いてきた彼だが、今回はそれをさまざまな角度、時間軸、深度から表現する。情熱と静寂。清らかさと猛々しさ……。歌を奏でているような音色が心に響く。

自身にとって、今年は新たな幕開けの年でもあるという。「今までやってきたことを伝えていきたいという気分になっているので、今後は子どもたちのワークショップなども開きたいですね。2年ほど前から老人ホームや病院などの施設で演奏をしているのですが、観客に来てもらうライブではなく、こちらから行くという活動を展開していきたい。コラボレーションなど自分にできることならどんどんやっていきたいと思っています」
ますます広がっていく守也のフィールド。今後、いかなる世界を拓き、どんな音で魅せてくれるのだろう。

■ソロとして、ユニットとして/斎藤圭土

ソロとして、ユニットとして/斎藤圭土

レ・フレールとして、ブギ・ウギピアニストとして、そしてヴァスコ・ヴァッシレフとのユニットとして。多くの顔を持ち、多彩な輝きを放つ斎藤圭土。2017年3月15日にソロシングル『夜明け』とユニットとしてのセカンドアルバム『Viano Universe(ヴィアーノ・ユニバース)』を同時リリースし、また新たな魅力を見せた。

『夜明け』は、昇りゆく太陽が真新しい世界を照らし出す、そんな壮大な情景を鮮やかに描き出したメロディが心に迫る。同時収録されている『琉球頌歌』は、沖縄の旋律を取り入れ、その歴史、文化を音楽で表現した。この2曲に共通するモチーフは太陽、そして日本。『夜明け』は日本を象徴する太陽から、『琉球頌歌』は琉球に伝わる神話の太陽神から着想を得た。
「レ・フレールとして活動を始める前、僕はブギ・ウギピアニストとして海外での活動が多かったんです。自分の強みはなんだろうと考えたとき、根本的なこととして『日本人であること』なんじゃないかなと思って」
日本というテーマを独自の感覚で昇華させ、表現した楽曲は、メロディアスで物語性があり、そして美しい。

一方の『Viano Universe』では、また違った音世界を創造し、聴き手を魅了する。英国ロイヤルオペラハウスの第一ソロコンサートマスターに史上最年少で就任した、ブルガリア出身のバイオリニスト、ヴァスコ・ヴァッシレフとのユニット「KEITO&VASKO“Viano” (ケイトアンドヴァスコ ヴィアーノ)」は、2014年のメジャーデビュー以来、国内外で高い注目を集めている。「バイオリンとピアノの美しき融合」を見事に表現してきた彼らだが、今回のセカンドアルバムではさらに大きな広がりを見せる。
「ブルガリアン・ヴォイス、スペインのウインドオーケストラなどいろいろな国のアーティストが参加してくれています。『富士山ブギ』を海外のアーティストが演奏してくれるなど、楽しくてインターナショナルなアルバムに仕上がっていると思います」

「昨日より今日の方がうまい。それくらいの思いでやっていかないと上達しない」と語る圭土は、最近、ようやくピアノと一体になった感覚を得られるようになったという。「ピアノを始めてから30年以上経って、ようやくです。それでもほんの一瞬ですが」
常に進化を続ける彼の、今後の一層の活躍が楽しみだ。

■リリースインフォメーション

斎藤守也『MONOLOGUE』
斎藤守也『MONOLOGUE』
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2017年3月1日
価格:3,240円(税込)
詳細はこちら

斎藤圭土『夜明け』
斎藤圭土『夜明け』
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2017年3月15日
価格:1,000円(税込)
詳細はこちら

KEITO&VASKO“Viano”『Viano Universe』
KEITO&VASKO“Viano”『Viano Universe』
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2017年3月15日
価格:2,800円(税込)
詳細はこちら

■レ・フレールオフィシャルサイト

http://lesfreres.jp/

 

特集

亀井聖矢

今月の音遊人

今月の音遊人:亀井聖矢さん「音楽は感情を具現化したもの。だからこそ嘘をつけません」

1819views

音楽ライターの眼

FUJI ROCK FESTIVAL’19開催。多彩な顔ぶれと新しい発見への旅

5809views

アコースティックギター「FG9」

楽器探訪 Anothertake

力強さと明瞭さが拓くアコースティックギターの新たな可能性

2150views

楽器のあれこれQ&A

サクソフォン講師がアドバイス!ステップアップのコツ

2210views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

16878views

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

7052views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

10080views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6483views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14470views

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

10280views

山口正介 Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

マウスピースの抵抗?音切れ?まだまだ知りたいことが出てくる、そこが面白い

5647views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24777views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

11175views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12561views

音楽ライターの眼

ブルースの名門レーベル“アリゲイター・レコーズ”が創立50周年

1925views

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

舞台上の小さなボックスから指揮者や歌手に大きな安心を届ける/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(後編)

13227views

ギグリーマン

われら音遊人

われら音遊人:誰もが聴いたことがあるヒット曲でライブに来たすべての人を笑顔に

1872views

“音を使って音楽を作る”音楽の冒険を「ELC-02」で

楽器探訪 Anothertake

音楽を楽しむ気持ちに届ける「ELC-02」のデザインと機能

8349views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

13320views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

6586views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

2581views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2738views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24777views