Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人 綾戸智恵さん

今月の音遊人:綾戸智恵さん「『このコンサート安いわー』って言われたい。お客さんに遊んでもらうために必死のパッチですわ!」

2017年、デビュー20周年と還暦を迎えたシンガーの綾戸智恵さん。20周年の集大成となるアルバム『DO JAZZ Gokko』をリリースし、コンサートも各地で大盛況。小柄な見た目からは想像つかないパワフルな声と本音満載のトークが観客を魅了しています。音や音楽に対する考え方も、まさに綾戸流。エンターテイナーとしての覚悟がうかがえます。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

『スワニー』やね。映画『スタア誕生』の中で歌われる歌で、この映画は何百回と観ましたから。両親が映画が好きで連れて行ってもらったり、テレビで放送しているのだったり。2~3歳の頃から観ていて、今ではDVDも持ってます。家で、何か作業するときに流したりしてるけど、この歌が好きだからというわけやないんです。映画はジュディ・ガーランドが若手の歌手で、あるおっちゃんと出会って恋に落ちて成功していくんやけど、そのおっちゃんは落ちぶれていくというストーリー。何で?って疑問がわくところがおもしろい。この歌は映画の中で聴くからいいんです。
家で音楽を聴くことはありません。他の人のも、自分のも。静かなほうがいいんよ、自分がやかましいから(笑)。聴くんやったら、義太夫節などが多いですね。これも人形浄瑠璃や歌舞伎が好きやからかな。

今月の音遊人 綾戸智恵さん

Q2.綾戸さんにとって「音」や「音楽」とは?

気分ひとつで耳障り、気分ひとつで天国心地。
いらんときに音が鳴っていると、ガクッときます。反対にシチュエーションにぴったり合った音が鳴っていると、これくらいええもんはないですね。たとえば、寿司屋に入ったらジャズより海の男の歌のほうが「いい魚出てくるやろなぁ」って思うんです。単純な話、気分やね。
救急車の音とか、すぐに何の音かわかるのは好き。反対に、冷蔵庫のようなブーンとうなっているような音は苦手や。何の音かわからないのが嫌なんです。烏の鳴き声もあかんわ。上からフンが落ちてくるのがイメージされるから。
音はええとこもあるし、悪いとこもある。私の声かて息子には「うるさい」言われてますけど、わざわざ聴きに来てくれはる人もおる。以前、紅白に出たときに、「あっ、リメンバーのおばちゃんや」とか「テネッ♪テネッ♪のおばちゃんや」て言われた。清水ミチコさんがテレビで物まねしてくれたおかげやね。そうやって覚えてもらうのは嬉しいことやね。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

見に来てくれてはるお客さんやね。お客さんに楽しんでもらえるようやってますから。もう、必死のパッチですわ!お客さんはお金を払って来てくれてはります。それやのに「なんでこんなんに払わなあかんねん」って言われたらえらいことですわ。「このコンサート安いわー」って言われたい。チケット代に見合う、それ以上に楽しんでもらわなあかんって考えてますよ。お客さんには遊んでもらいます。ほら、遊女は遊んでないでしょ。遊女で遊ぶのはお客さん。せやから、私も音で遊んだことはないですわ。私は自分のことをアーティストとは思ってないんです。“音楽屋”ですね。“八百屋”が野菜を売るみたいに、私も「音楽をおひとつどうぞ」って売ってるんですから。
以前、ライブ中にすごく体調が悪くなって、もうこれ以上歌われへんってお客さんに土下座して謝ったことがあるんです。そうしたら、みなさんチケットを払い戻すどころか「延期の日を教えてね」と言ってくれはった。そういうお客さんが来てくれはるんです。「今日の綾戸はどんなか、ひとつ観に行こう」って。だから私も、どんな形であれ楽しんでもらいたいって思ってます。その日の自分を全部出した上で「来てよかったわ」と言ってもらえるよう、音で遊んでもらおうと思ってがんばってます。

綾戸智恵〔あやど・ちえ〕
3歳からピアノを始め、中学生の時からナイトクラブでピアノ演奏する。17歳で単身渡米。1991年帰国後に、大阪のジャズクラブで歌い始める。1998年にアルバム『For All We Know』を全国発売、翌1999年には後の代表曲となる『テネシー・ワルツ』『アメイジング・グレイス』を含む弾き語りアルバム『LIFE』をリリース。2003年には紅白歌合戦で『テネシー・ワルツ』を熱唱し、大きな話題をよんだ。その後もアルバム、ライブのほか、テレビ、ラジオ出演など、精力的に活動を続けている。
綾戸智恵オフィシャルサイト  https://www.chie-ayado.com/

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:下野竜也さん「自分を楽しく表現できれば、誰でも『音で遊ぶ人』になれると思います」

2696views

音楽ライターの眼

赤裸々に自己の内面を綴った『エフゲニー・キーシン自伝』

13303views

トランスアコースティックピアノ™

楽器探訪 Anothertake

音量の問題を解決し、ピアノの楽しみを広げる「トランスアコースティックピアノ」

3969views

日ごろからできるピアノのお手入れ

楽器のあれこれQ&A

日ごろからできるピアノのお手入れ

64369views

脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

10535views

佐藤順

オトノ仕事人

劇伴制作の進行管理や演奏シーンの撮影をサポートする/映画等の劇伴制作をプロデュースする仕事

3456views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

11566views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

9169views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

19416views

われら音遊人

われら音遊人:みんなの灯をひとつに集め、大きく照らす

5552views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

5575views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29679views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

7673views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

11226views

音楽ライターの眼

フランスから世界に飛翔するふたりのチェンバリスト

3327views

オトノ仕事人

ピアノを通じて人と人とがつながる場所をコーディネートする/LovePianoプロジェクト運営の仕事

17661views

われら音遊人 リコーダー・アンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:お茶を楽しむ主婦仲間が 音楽を愛するリコーダー仲間に

7818views

練習用のバイオリンとして進化する機能と、守り続けるデザイン

楽器探訪 Anothertake

進化する機能と、守り続けるデザイン

5082views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

12349views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

7045views

エレキギター

楽器のあれこれQ&A

エレキギターのサウンドメイクについて教えて!

303views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2918views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25065views