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【優待チケット】唯一無二のオーボエ奏者である師モーリス・ブルグから学んだこと/吉井瑞穂インタビュー
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2019.8.23
音楽家にとって師弟関係とは、そうでない者からはなかなか想像のできない、特別な絆で結ばれた関係なのであろう。マーラー室内管弦楽団の首席オーボエ奏者として世界の第一線で活躍する吉井瑞穂にとっても、師であるモーリス・ブルグと過ごした時間はかけがえのないものだという。2019年11月に80歳を迎える師の誕生日に、ヤマハホールでのコンサートを企画した彼女に話を聞いた。
「20歳前後の頃、京都フランス音楽アカデミーでブルグ先生のレッスンを受けて以来、ずっと先生に師事したいと思っていました。マーラー室内管弦楽団でプロ奏者として活動をはじめてからも、もうちょっと勉強したいなと感じていて。先生がジュネーブ音楽院で教えていることは知っていましたが、ちょうどこの時期にタイミングがあって習いに行くことができたのです。私にとって彼のもとで勉強することは長年の夢。それが現実になったのです。入学できる年齢ギリギリの27歳のときでした。仕事をしながら足かけ5年ほどレッスンを受けに行っていましたが、音楽院を卒業するには体育の授業の単位が足りなくて(笑)、卒業証書はいただけませんでした」
モーリス・ブルグといえば、オーボエ奏者にとって、またフランス音楽を愛する者のなかでは神ともいわれる巨匠だが、その素顔は気さくでチャーミングなのだという。
「レッスンは厳しかったですが、それ以外の時間には生徒たちと一緒に食事に行って人生相談に乗ったり、恋愛話を聞いてくださったりして。たくさんの時間を、先生とよもやま話をして過ごしました。すごく人間的な魅力にあふれた方です」
吉井は現在、東京藝術大学で教鞭を執っている。自分が教える側に立ったときも、ブルグの師としてのあり方に学ぶところがあるのではないだろうか。「ありますね。生徒たちとの接し方とか、距離の取り方とか、ブルグ先生はどうだったかなと思い出したりします。ただ、先生と私の場合は異性の師弟関係でしたが、私の生徒たちは圧倒的に女性が多いので、同性同士だとまた関係性が違ってくるんです。そのあたりは、まだまだ試行錯誤しながら学んでいる途上ですが、教えるのは楽しいですよ。今の子たちはものすごく優秀ですから。フィギュアスケートの世界と同じく、才能とテクニックを身につけた若い人たちがどんどん育っているのです。オーボエの世界も日々進化していて、音を出すだけでも大変な楽器なのにもかかわらず、高い技術を持ってちゃんと吹ける子たちが大勢出てきていて、嬉しい限りです」
ブルグもまた、東京藝術大学の「音楽学部卓越教授」として年に数回来日し、指導にあたっている。
「そういう面でも、今の子たちはとても恵まれていると思います。私の知る限り、ブルグ先生ほどフレンチ・バロックの真髄に触れる演奏をなさる方はほかにいません。もうすぐ80歳ですがまだまだ現役で、先生にしか出せない美しい音色を聴かせてくださいます。また、技術的な演奏理論や解釈論においても、先生のお話は大変貴重です。そんな先生の素晴らしさを多くの方に知ってもらい、次のジェネレーションに伝えたい。その思いだけで今回のコンサートを企画しました」
「モーリス・ブルグ80歳記念コンサート」では、ブルグと吉井に加え、ブルグからの信頼のあつい今仁喜美子(ピアノ)と桒形亜樹子(チェンバロ)、そして吉井と長年交流のあるギヨーム・サンタナ(ファゴット)という豪華な顔ぶれによる共演が実現する。
「プログラムを組むにあたって、まずブルグ先生からご希望の曲のリストを出していただいたのですが、その通りに組むと最初から最後まで先生が吹きっぱなしになってしまうので、『先生、いくらお元気とはいえ、それはちょっと大変なのでは?』と申し上げたところ、『ああ、そう言われればそうだよね!』と。そこで、先生が演奏なさる曲と、私たちだけで演奏する曲に分けて、先生がほどよくお休みできるようにプログラムを組みました。先生はゼレンカ、ハイドン、モーツァルト、そしてユダヤ人の強制収容所で亡くなったパヴェル・ハースの作品を演奏されます」
この公演に限らず、吉井はみずからコンサートを企画し、共演者を集め、プログラムを組んでいく。地元の鎌倉で主宰している「レゾナンス〈鎌倉のひびき〉コンサートシリーズ」は2019年で5周年を迎えた。このように演奏家自身が企画から手がけるコンサートがまだ多いとは言えない日本で、吉井の活動は注目すべきものである。
「日本ではあまりないという話をよく聞くのですが、海外では音楽家は誰もがみんな自分の地元の街や村で音楽祭を主宰しているので、とくに珍しいことだとは思っていませんでした。地元で昔から知っている市役所のおじちゃんに声をかけたり、教会の神父様に協力を頼んだり、おばちゃんに人を集めてもらったり、地元のつながりを活かしてやっているわけです。自分で企画して、自分で演奏するのですから、シンプルですよね」
今後もさまざまな編成の室内楽に取り組んでいきたいと語る吉井。どんな企画が生み出されるのか、楽しみは尽きない。
日時:2019年11月6日(水)19:00開演(18:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金:5,000円(全席指定・税込)
出演:モーリス・ブルグ/吉井瑞穂(オーボエ)、ギヨーム・サンタナ(ファゴット)、今仁喜美子(ピアノ)、桒形亜樹子(チェンバロ)
曲目:J.D.ゼレンカ/トリオ・ソナタ 第2番 ト短調 ZWV181、C-L.トリエベール&E.ジャンクール/ロッシーニの歌劇「アルジェのイタリア女」の主題による協奏的幻想曲(吉井、サンタナ)、F.J.ハイドン/ピアノ三重奏曲 第29番 ト長調 Hob.XV-15(ブルグ、サンタナ)、W.A.モーツァルト(F.E.ターナー編)/ソナタ へ長調 K.374d(376)(ブルグ、吉井)、A.ジョリヴェ/オーボエとファゴットのためのソナチネ(吉井、サンタナ)、P.ハース/オーボエとピアノのための組曲 Op.17(ブルグ)
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本公演の優待チケット(優待価格4,500円/定価5,000円)を20名様分ご用意しました。ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。
※ご応募の際は、ヤマハミュージックメンバーズの会員登録(登録無料)が必要です。
応募締切:2019年9月23日 (月・祝) 23:59