今月の音遊人
今月の音遊人:松居慶子さん「音楽は生きとし生けるものにとって栄養のようなもの」
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金管楽器に比べ、初心者でも音が鳴りやすいサクソフォン。でも基礎をしっかり身につけておくことで、その先の表現力にもぐっと差が出てきます。今回はサクソフォンの練習についてのお悩みにお答えします。
A. 考えられる原因は、マウスピースを上下の歯で噛み過ぎていることです。マウスピースをくわえると、多くの方は無意識のうちに噛んでしまうと思います。でも、「サクソフォンは上の歯である程度固定し、下顎はリラックスして吹くもの」。これが原則です。下唇はリードに触れているぐらいのイメージです。なぜなら、サクソフォンの表現の要は下顎にあると言っても過言ではないからです。音を曲げたり、ビブラートをかけたりとニュアンスを与えるのは下顎の役目。いかに下顎の力を抜くかが重要なポイントとなります。
下顎の力を抜く方法のひとつは、上下の奥歯をふだんより1ミリ開くように意識すること。そうすれば、自然と口の前側も開き、下顎がリラックスした状態をつくることができます。
A. サクソフォンは、体の使い方がとても大切。そして、ベースとなる体づくりは楽器を持たなくてもできます。Q1の回答で下顎のリラックスが必要だとお伝えしましたが、舌も意識してみてください。付け根が下がって楽な状態になり、舌先は上にアーチしているのが理想です。と言葉で言っても、なかなか難しいかもしれませんね。そんな時は、まずは声を出して最もよく響くポジションを見つけてみましょう。なぜ響いているかといえば、抵抗が少ないから。それが、舌の付け根が楽になっている状態です。そして、そのリラックス感は指の操りにもつながります。
もうひとつ、大事なのがブレスです。深いブレスを実感するには、四つん這い、あるいは立って前かがみになり、肺が下に広がりやすいポジションを作って呼吸してみてください(腹式呼吸といいます)。その時のブレスを意識して、ネックだけで練習してみるのもいいでしょう。吹く時に顎や舌がリラックスしていて、肺から空気が垂直に上っていく。その感覚をつかむ練習は、実際に演奏するときに大いに役立ちます。
A. サクソフォンのキーの可動域は、1cmほどしかありません。にもかかわらず、キーを押しこみ過ぎたり離し過ぎたりすると指が回りにくくなってしまうのです。
その対策としては、キーをゆっくり押し、ゆっくり離す練習が有効です。キーをゆっくり押すと、あるところまで押し返されるような反発があります。キーと本体がかちっと触れ合った瞬間も指で感じるはずです。押すのはここまで。そして、今度はキーの可動域分だけゆっくり離してください。このとき、余計な力が入らないよう意識してください。
A. サクソフォンは人間の声にいちばん近いとされ、歌うように吹くことができる楽器です。息のスピード感や圧力と、下唇や舌のポジションをコントロールすることで、表現の幅はぐっと広くなります。
それを身につけるためには、「いー」「えー」「おー」などと発音するようにして舌の位置を変えるアプローチもひとつの手。また、好きなサクソフォン奏者やボーカリストの曲を練習してみるのもいいでしょう。ここは感情がこもって音圧・音量がある感じ、優しく開放されている感じ……といった微妙な変化を聴き取り、その表現を真似してみることは、息のコントロールにつながります。いわゆる“棒吹き”ではない、歌うような表現力を手に入れてください。
協力:ヤマハ大人の音楽レッスン 佐藤渉講師
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