Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:七海ひろきさん「声優の仕事をするようになって、日常の中の音に耳を傾けるようになりました」

宝塚歌劇団を退団してからたった1年半とは思えないほど多方面で活躍し、歌手として、声優として、俳優として、さまざまな顔を見せてくれる七海ひろきさん。これまでに2枚のソロアルバムをリリースし、2020年8月にはワンマンライブをインターネットでの生配信という形で成功させた七海さんに、音楽をテーマに語っていただきました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

天海祐希さんの宝塚退団公演だった『ME AND MY GIRL』の実況CDを、宝塚の受験時代にずっと聴いていました。公演を1本まるごと収録したアルバムで、セリフも歌も全部覚えてしまうぐらい、東京のレッスンに通う電車の中でも、通学中もひたすら繰り返し聴いていましたね。その後、東京宝塚劇場で生の舞台を観たときに、アドリブのセリフなど、CDとは違う部分があったんです。そこで「なるほど、こんなに違うんだ」と、あらためて生の舞台の面白さを感じました。
もともと宝塚に興味を持ったきっかけは、テレビで『風と共に去りぬ』を観て、レット・バトラーを演じる天海さんに出会ったことでした。お芝居も、姿も、もうすべてがカッコイイなあと思って。一目惚れというのでしょうか。『ME AND MY GIRL』では、天海さんが演じるビルが、ヒロインのサリーを想って歌う『街灯によりかかって』という歌が大好きで、自分のディナーショーでも歌わせていただいたぐらい思い入れのある曲です。

Q2.七海さんにとって「音」や「音楽」とは?

まず「音」については、退団してから声優の仕事をするようになって、テレビから流れてくるナレーションや、駅のホームで聞こえるアナウンスなど、日常の中の音に耳を傾けるようになりました。新幹線や飛行機も、仕事で毎日アナウンスしているからこその「波」みたいな、独特の調子がありますよね。今まではまったく意識していませんでしたが、そういったところにアンテナを張るようにしています。
そして「音楽」については、子どもの頃からエレクトーンや合唱をやっていて、つねに身近なものではありました。普段は日本のアーティストのロックを聴くのが好きで、ガンガンくる曲を聴いて元気をもらっていますが、自分がアーティストとしてアルバム・デビューさせていただいたことにより、もっと幅広くいろいろな音楽を聴きたいと思うようになりました。たくさんのミュージシャンとの出会いもありますし、これまで以上に音楽の多様さ、自由さを感じています。

2020年8月のワンマンライブ『One-man LIVE773“KINGDOM”ONLINE-SUMMER-』でも、素晴らしい音楽体験をすることができました。共演したバンドの方々は、前回の3月のライブでも一緒にやったメンバーだったので、「はじめまして」からのスタートではなく、とても安心感があって。バンドの皆さんのボルテージも、本番に向けてリハーサルを重ねていくごとに気分も上がっていって、私自身も心を解放して歌うことができましたし、音に乗って気分が高揚していくのを感じることができました。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

音楽に精通しているからこそ、自由に音を作り出せる人。たとえばライブのときも、バンドの方に「ここの尺をもうちょっと長くしたい」と本番の1~2日前にリクエストしても、「あ、わかりました」と言って、すぐに作ってきてくださるんです。楽器を長年やっていらっしゃるからこその、プロの仕事ですよね。ピアノでも楽譜をぱっと見て、初見で弾ける方がいますが、私からすると「音で遊ぶ人」に思えます。私はちゃんと練習してからでないと弾けないし、歌えないので。音を自由に感じて、広げていける人に憧れますね。
また、アルバムを制作するときは、自分の中のイメージや想いを制作スタッフさんに伝えて、曲を作っていただくのですが、想像していたものとドンピシャに「ぴったり!」というときもあれば、「ああ、こういうテーマに対して、こういう曲がくるんだ」というときもあって、出来上がりが毎回とても楽しみなんです。「ドラマティックに」とか「ミュージカル調に」とか、私がほわっとした言葉で伝えたものを、うまく形にしてくださるのはやはりプロの仕事ですし、イマジネーション豊かな「音で遊ぶ人」だからこそできることだと思います。

七海ひろき〔ななみ・ひろき〕
2003年3月、宝塚歌劇団に89期生として入団し、宙組に配属。2009年に『薔薇に降る雨』の新人公演で初主演。その後、『風と共に去りぬ』のスカーレット、『ベルサイユのばら‐フェルゼンとマリー・アントワネット編‐』のオスカルなど宝塚歌劇代表作の大役を好演。2015年4月に星組へ組替え後、『燃ゆる風‐軍師・竹中半兵衛‐』で単独初主役を演じるなど、男役スターとして活躍。2019年3月に宝塚歌劇団を退団。同年8月にアルバム『GALAXY』でメジャーデビューを果たし、2020年4月にはフルアルバム『KINGDOM』をリリースした。現在は、アーティスト、俳優、声優、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍している。
オフィシャルサイトはこちら

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:反田恭平さん「半音進行が使われている曲にハマります」

18137views

音楽ライターの眼

ドヴォルジャークの真の魅力に出合う一冊

6273views

楽器探訪 Anothertake

存在感がありながら他の楽器となじむシンフォニックなサウンドが光る、Xeno(ゼノ)トロンボーンの最上位モデル

7258views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

25406views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14788views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

9924views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

15234views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

4120views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

9508views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:仕事もバンドも、常に真剣勝負!

10472views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

クラス分けもまた楽しみ、レッスン通いスタート

5456views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28118views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

13543views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

9508views

音楽ライターの眼

追悼:ギターの“緑神”ピーター・グリーンの人生を振り返る

11220views

コレペティトゥーアのお仕事

オトノ仕事人

歌手・演奏者と共に観客を魅了する音楽を作り上げたい/コレペティトゥーアの仕事(後編)

8609views

みどりの森保育園ママさんブラス

われら音遊人

われら音遊人:子育て中のママさんたちの 音楽活動を応援!

7892views

長く使い続けてもらえる電子ドラムを目指して──電子ドラム「DTX6K5-MUPS」

楽器探訪 Anothertake

長く使い続けてもらえる電子ドラムを目指して──電子ドラム「DTX6K5-MUPS」

1229views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

14186views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

9589views

楽器のあれこれQ&A

エレキギター初心者を脱したい!ステップアップ練習法と2本目購入時のアドバイス

7636views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

12398views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28118views