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ブルースの巨匠ライトニン・ホプキンスの名盤にして異色作2タイトルが重量盤LP再発
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2021.4.9
tagged: 音楽ライターの眼, The BLUES Album
ライトニン・ホプキンスの2大アルバムが2021年3月、180g重量盤アナログLPとして日本発売されることになった。
サミュエル・ジョン・ホプキンス(1912 – 1982)はテキサス・ブルースを代表するギタリスト/シンガー/ソングライターであり、その閃光のようなギター・プレイで“ライトニン=稲妻”の異名を取った。今回リリースされるのは『ライトニン・アンド・ザ・ブルース』と『モージョ・ハンド』という、ライトニンの代表的アルバムであり、ブルース音楽のオールタイム・ベストに挙げられることも少なくない名盤だ。
『ライトニン・アンド・ザ・ブルース』は1954年に録音され、“ヘラルド・レコーズ”からシングルとして発表された全12曲をアルバムにまとめた作品(1960年にアルバム発売)。こってり濃厚なスロー・ブルース『ナッシン・バット・ザ・ブルース』のハートに突き刺さるギター、師匠ブラインド・レモン・ジェファーソンの『ニューモニア・ブルース』を発展させた“病気系ブルース”の『シック・フィーリング・ブルース』、ロックンロールのルーツとしての『ライトニンズ・ブギ』『ライトニンズ・スペシャル』など、起伏に富んだサウンドで魅せる作品集だ。
一方の『モージョ・ハンド』は1960年に録音、1962年に“ファイア”レーベルから発表されたアルバムだ。1曲目『モージョ・ハンド』の“ルイジアナに行ってモージョ・ハンドを手に入れる”という宣言と、ワイルドな速弾きを交えたギターにはインパクトがあり過ぎるが、スローに攻める『オーフル・ドリーム』、黒馬がトコトコ走っていくようなインストゥルメンタル『ブラック・メア・トロット』、ライトニン自身のピアノも聴ける『ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン』など、全編そのインパクトが持続する。
両アルバムともライトニンはアコースティック・ギターにマイクを取り付けて生々しいプレイとサウンドを録音、ベーシストとドラマーを従えて奔放に弾きまくり、唸っている。音域が広く、重量感のあるサウンドは180gの重量盤LPでさらに効果を出している。
これまで紙ジャケット盤CDやボーナス・トラックを加えた拡大版エディションなども発売されている両作だが、アルバム本編のみで勝負する今回のリリースは、ピュアでストイックな仕様となっている。
歴史を超えた名盤と呼ばれることも少なくないこの2作だが、実はアルバムの発売当時、この音楽性は必ずしもライトニンに求められたものではなかった。1959年、ブルース研究家のマック・マコーミックとサミュエル・チャーターズが彼を“発見”、白人社会に紹介したとき、求められたアコースティック弾き語りのフォーク/カントリー・ブルースだった。1960年10月、彼が出演したニューヨークのカーネギー・ホールでの公演は、ジョーン・バエズ、ピート・シーガーとのアコースティック・ショーだった。
『ライトニン・アンド・ザ・ブルース』のジャケットには“アメリカン・フォークロアを歌う”という副題が付けられている。枯れた味わいの弾き語りを期待してレコードを手にした当時の白人オーディエンスは、スピーカーから飛び出す脂っこいブルースの塊とバンド演奏にぶったまげたのではなかろうか。
だが『ライトニン・アンド・ザ・ブルース』と『モージョ・ハンド』には、“異色作”を“代表作”にしてしまうマジックがある。近年ではこの2作を入口にしてライトニンの膨大な作品群に踏み込んでいくリスナーも少なくないだろう。筆者(山崎)もそうだった。
1947〜1951年の初期音源を集めた『シングス・ザ・ブルース』(1960)ではライトニンの若々しい歌声とギターを聴けるし、サミュエル・チャーターズがプロデュースしてカントリー・ブルースマンとしてのライトニンの姿を捉えた『ライトニン・ホプキンス』(1959)やソロでのニューヨーク吹き込み音源『ライトニン・イン・ニューヨーク』(1960)、サイケデリック・ロックの13thフロアー・エレヴェイターズとの共演作『フリー・フォーム・パターンズ』(1968)など、彼は幾多の優れたアルバムを世に出してきた。そんな豊潤なるブルースの道を歩んできたライトニンの軌跡の、まさに最高峰といえるのが、『ライトニン・アンド・ザ・ブルース』と『モージョ・ハンド』なのである。
アルバム『ライトニン・アンド・ザ・ブルース』
発売元:Pヴァイン・レコード
発売日:2021年3月31日
価格:4,400円(税込)
詳細はこちら
アルバム『モージョ・ハンド』
発売元:Pヴァイン・レコード
発売日:2021年3月31日
価格:4,400円(税込)
詳細はこちら
山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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