今月の音遊人
今月の音遊人:石川さゆりさん「誰もが“音遊人”であってほしいですし、音楽を自由に遊べる日々や生活環境であればいいなと思います」
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三人の“音の料理人”が世界の名曲をミックスして生まれ変わらせた新アルバム「HAPPYキッチン」リリース/TSUKEMENインタビュー
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2021.9.27
TAIRIK(バイオリン/ビオラ)、SUGURU(ピアノ)、KENTA(バイオリン)の三人組インストユニットTSUKEMEN。クラシック音楽をルーツにしつつ、変幻自在のボーダーレスな音楽性でファンを魅了してきた。
その独自の音楽をより身近に楽しんでもらうため、常に新しいカタチを追求。2020年は、長大なクラシックの名曲を大胆かつ斬新にアレンジし、深く濃い5分程度に“時短”したアルバム『JITAN CLASSIC』が話題を呼んだ。
そして、デビュー13年目となる2021年8月25日には、13枚目となるアルバム『HAPPYキッチン』をリリース。“音の料理人”をコンセプトに、ジャンルを超えた極上のミックス音楽を届けてくれる。
「作るプロセスや仕上げ方にそれぞれの個性が出る。そういった意味では、作曲や演奏と料理は似ていると思うんです」
そう話すTAIRIKは、NHKのテレビ番組「きょうの料理」から2021年4月にスタートした新シリーズ「栗原はるみのキッチン日和」にレギュラー出演するとともに、テーマ曲も担当。もともと料理好きだったが自宅で過ごすことが多くなり、魚をさばき始めSNSにアップしたことから白羽の矢が立った。
“音の料理人”というコンセプトは、そういった経緯のなか 三人で膨らませていったものだ。
実は料理はまったくしないけれど、作る人への感謝は誰よりもあると笑うのはSUGURU。
「コロナ禍でわかったことは、音楽は人の気持ちも料理できるということ。僕らの音楽でも、喜怒哀楽の“怒”以外は伝えることができるんじゃないかな。アルバムを通していろいろな感情になってもらい、最後には清々しい、癒される気持ちになってもらえたらと思います」
今回、三人の“料理人”たちが挑んだのは、クラシックから映画音楽、バレエ音楽やダンスミュージック、タンゴなどさまざまなジャンルの世界の名曲を、独自にミックスして生まれ変わらせることだ。
誰もが知る食材同士の衝撃的な組み合わせが、絶妙な味をもたらすように。生まれたのは、驚きのマリアージュであり、アッサンブラージュだ。
「クラシックをベースに、ジャンルの垣根なく音楽と向き合ってきたからこそたどり着いたひとつのオリジナルスタイルです。独自のアイデアから生まれた新しい音楽の可能性をぜひ堪能していただきたいです」
そう語るKENTAの推し曲は、自身が発案した『スワン・レイク・シャレード』。チャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』とオードリー・ヘップバーン主演の『シャレード』主題歌を融合させた。
「これこそ、ひらめきから生まれた組み合わせ。有名なメロディでありながらクラシカルなこの曲をどう表現するか。楽曲アレンジのみならず、演奏家としての腕も試される内容の濃い一曲です」
ショパンの名曲たちと世界的なダンスミュージック『セプテンバー』を組み合わせた『ショパン・ラブズ・セプテンバー』は、SUGURUが発案。障がいをもつ大富豪の白人とそれを介護する黒人青年の絆を描いたフランス映画『最強のふたり』が好きだという。
「音楽にはヨーロッパ発祥のクラシックや、ジャズ、ソウル、ゴスペルにヒップホップといったブラックミュージックなどさまざまなジャンルがありますが、 この映画では、黒人青年がクラシックを聴いたときに全然踊れない、聴いてられねぇ!という雰囲気になるんですよ。いやいや、何とか両方に分かり合ってほしい。そんな思いが最初にありました。僕個人としては、音楽は静かに聴くのではなくて踊ってほしいんです。クラシックでも体を揺らす曲もあるし、いろんな楽しみ方があるという思いをこの曲に入れさせていただきました」
『ゴジラ』の壮大な映画音楽は、ラヴェルのピアノ協奏曲とミックスし『ゴジラヴェル』に。
「『ゴジラ』の作曲家、伊福部昭さんは、ラヴェルを尊敬していたそうです。編曲してくださった和田薫さんは伊福部さんのお弟子さんで、2人の作曲家に最大のリスペクトを込めた楽曲となりました。バランスの妙がすごいです」(同曲発案者TAIRIK)
また、交響曲第九番、年末の風物詩である“第九”は、定番クリスマスソング『ホワイト・クリスマス』とブレンド。
さらに、アストル・ピアソラの『リベルタンゴ』などの楽曲たちを“時短”した『ピアソラMIX』も魅惑的な一曲。2021年に生誕100周年を迎えた革命児の、贅沢で欲張りなメドレーだ。
人気のバレエ音楽『くるみ割り人形』は、“おいしいところ”を抽出して巧みに料理した楽曲となった。
オリジナル曲にも注目したい。
「聴いてくださる方には、最後にはオリジナル曲にたどり着いてほしいという思いがあります」
そう話すSUGURUは、日本の夏の力強さを三人のアンサンブルに三味線、尺八を加えて情景豊かに表現した『蝉時雨』、ほぼアドリブで構築され、自身がもっとも気に入っていると話す『Brand New Day』、温かい気持ちになってほしいという思いを込めた『向日葵の咲く場所で』と、異なるベクトルの三曲を作曲。
KENTAによる『Beautiful Life』は、爽やかで美しいメロディが印象的だ。
表題曲『HAPPYキッチン』は、「栗原はるみのキッチン日和」のテーマ曲を膨らませたもので、今回のアルバムコンセプトの土台となる一曲。明るくハッピーな気持ちになれる曲だが、実はSUGURUがお玉でボウルを叩いてリズムを刻んだり、TAIRIKがソルト&ペッパーミルをマラカス風に振ったりした音も収録されている。
「気づかない方もいると思うので、ぜひ見つけてください(笑)」(TAIRIK)。
そしてTAIRIK作曲の『HAYABUSA』は、思いが壮大過ぎてなかなかまとまらず、10年近くの歳月を経てようやく完成した力作だ。
「昨今、一定のビートや電子音で構成されている楽曲が流行る傾向にありますが、クラシックをはじめ生の楽器の音色、音楽ってこんなに面白いアプローチができるんだよ!アンサンブルってこんなにワクワクしていろんな表情があって素敵なんだよ!という思いがたくさん詰まった作品になっています」(KENTA)
その自信作を引っ提げて、進化したアンサンブルを全国各地で披露していく。
アルバムで、コンサートで。これまでなかった新しい“料理”を味わってみては?
発売元:キングレコード
発売日:2021年8月25日
価格:3,300円(税込)
詳細はこちら
2021年10月24日(日)アトリオン音楽ホール(秋田県)
2021年11月20日(土)弘前市民会館(青森県)
2021年12月5日(日)フィリアホール(神奈川県)
2022年2月19日(土)岩国市周東文化会館(山口県)
※最新情報はオフィシャルサイトでご確認ください。
オフィシャルサイト
文/ 福田素子
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tagged: インタビュー, TSUKEMEN, HAPPYキッチン
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