Web音遊人(みゅーじん)

合奏の楽しさ、ここに再燃!3年ぶりの「ブラス・ジャンボリー2022」開催レポート

吹奏楽ファンが待ちに待ったこの日がついにやってきた。初心者からベテランまで、社会人も学生も、さまざまな管打楽器愛好者が多数集まって、その日会った人たちで大合奏を楽しむ「ブラス・ジャンボリー2022」が3年ぶりに開催されたのだ(2022312日(土)横浜港大さん橋国際客船ターミナル「大さん橋ホール」)。

大合奏の楽しさを誰でも体験できる「ブラス・ジャンボリー」

「ブラス・ジャンボリー」は、しばらく楽器演奏から離れていた人や、趣味として楽器演奏を始めたものの合奏の機会に恵まれない人でも、合奏を楽しめる貴重な場。「演奏する楽しみ」を原点に、大規模なコンサートとして2010年から毎年開催されてきた。しかし、新型コロナウイルスの影響で2020年、2021年は残念ながら中止に。2022年は例年よりも参加者同士の間隔を空け、検温・消毒の励行、30分の演奏ごとに20分の換気、と感染症対策を徹底して開催された。ある参加者は「こうして開催できたのは奇跡!よくぞ開催してくれた」と語った。これは、おそらくこの日集まったすべての人が感じていたことだろう。

13時から2回の休憩をはさんで約2時間のリハーサル、その30分後にコンサートを行う。事前にパート譜を購入し、それぞれに練習してこの日に備えるのだが、吹けないところは休んでもOK。「それで安心して参加できました。初参加だけれど、思い切って参加してよかった。すごく楽しいです」(一人で参加したという女性)。また、「ブラス・ジャンボリー」はリピーターも多い。異なる楽器でも一緒に演奏できる「ファミリー席」では、大学生の息子さんとお母さんが隣同士で演奏する姿もあった。

今回の指揮は、プレイヤーとしてマルチに活動し、自他ともに認める吹奏楽好きとしても知られるサクソフォン奏者の織田浩司さん。スペシャルゲストは、チューバマンとユーフォマンの2人によるユニット、チューバマンショーだ。プログラムは、華やかに幕開けを飾る『ブラス・ジャンボリーのためのファンファーレⅡ』、思いを込めてゆったり奏でる『花は咲く』、ユーフォマンとの共演による『トゥッティ!』『DREAM SOLISTER』(『響け!ユーフォニアム』より)、吹奏楽の定番曲から『エルザの大聖堂への入場』『宝島』など全8曲。限られたリハーサル時間のなか、織田さんは巧みな言葉がけで合奏をまとめていく。休憩のたびに正面の扉が開放され、海風が大会場を一気に通り抜けると、次の練習ではさらに集中力が高まり、最初のうちはたがいに様子見だったサウンドが、どんどん輝きを増していった。

リハーサルの様子

リハーサルの後はいよいよ本番!全8曲をコンサートで披露

そして迎えた本番。オープニングから驚くほど響きがまとまっている。演奏者たちが疲れないよう、適度なMCを入れながら、織田さんがコンサートを進める。そのなかで思わず発せられた「合奏って本当にいいですね!」という言葉を全員でかみしめながら、演奏はヒートアップしていく。チューバマンショーとの共演に織田さんのサクソフォンが加わり、さらに熱量をあげてクライマックスへ。最高に盛り上がった『宝島』で大熱狂のフィナーレとなった。

響きの余韻のなかに、なんとも言えない充実感が広がる。参加者の表情にも満足感が満ちていた。「社会人になって楽器から離れていましたが、どうしても吹きたくなって、一週間前にこれ(トランペット)を買って参加しました。こうして吹けることがとてもうれしい」「吹奏楽団に所属しているけれど、集まっての練習はほとんどできなくて、合奏するのは本当に久しぶりでした」「音が重なって、そのなかにいる感覚が大好き。私にとって、合奏ができるのはここだけです」(参加者の声)
参加した人の数だけ音楽への思いがあり、それがひとつになって、“この日、ここにしかない音”が生まれた。これこそが大合奏の醍醐味であり、ブラス・ジャンボリーが求められる理由でもある。
チューバマンショーのお2人の「合奏とは、こんなにも価値のあることなんですね」(チューバマン)、「生の音は成分が違っていて、雑音までが愛おしく思えました」(ユーフォマン)という言葉が、「ブラス・ジャンボリー2022」の大成功を物語っている。

クリックでPDFが開きます


ブラス・ジャンボリー2022 3年ぶり、大さん橋ホールで開催(KyodoNewsKK)

photo/ 宮地たか子

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:上原彩子さん「家族ができてから、忙しいけれど気分的に余裕をもって音楽と向き合えるようになりました」

8376views

音楽ライターの眼

サマーソニック2019、20周年を記念して3日開催へ。2020年はお休み

9536views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

28830views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

15051views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

5588views

音や音楽の“聴こえ”をサポートし、豊かな人生を届ける/補聴器を世の中に広める仕事

オトノ仕事人

音や音楽の“聴こえ”をサポートし、豊かな人生を届ける/補聴器を世の中に広める仕事

4184views

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

ホール自慢を聞きましょう

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

11348views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

7247views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

14524views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:仕事もバンドも、常に真剣勝負!

10472views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6401views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11749views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ギタリスト木村大とピアニスト榊原大がトランペットに挑戦!

8419views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

36931views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.5

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.7

5327views

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

オトノ仕事人

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

17926views

われら音遊人:「非日常」の充実感が 活動の原動力!

われら音遊人

われら音遊人:「非日常」の充実感が活動の原動力!

8963views

クラビノーバ「CSPシリーズ」

楽器探訪 Anothertake

これまでピアノを諦めていた多くの人を救う楽器。楽譜作成・鍵盤ガイド機能が付いた電子ピアノ/クラビノーバ「CSPシリーズ」

23782views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

16241views

山口正介 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

この感覚を体験すると「音楽がやみつきになる」

9351views

バイオリンを始める時に知っておきたいこと

楽器のあれこれQ&A

バイオリンを始める時に知っておきたいこと

9982views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

16876views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28118views