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今月の音遊人:宇崎竜童さん「ライブで演奏しているとき、もうひとりの宇崎竜童がとなりでダメ出しをするんです」
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2台のピアノがひとつの楽器のように。2人にしかできない音を奏でるDUET2022ツアー/小曽根真、塩谷哲インタビュー
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2022.9.27
小曽根真と塩谷哲によるピアノ・デュオのツアー「DUET2022」が行われる。お互いに「ソルト」「お兄」と呼び合うほどの仲である2人は、2003年以来、幾度となく共演を重ね、関係性を深めてきた。「毎回違うものが生まれる」と口を揃える2人に、ピアノ・デュオの醍醐味や公演のみどころを聞いた。
「前にやったときはソルト(塩谷)が2台ピアノのためのワルツを書いてくれたから、次は僕も曲を書きたいなと思っていて。それに、もともと違うプロジェクトのために書いた曲もこのデュオでやってみたいし、『オベレク』とかどう?」
2022年11月に行われる2人のツアー「DUET2022」に向けて、小曽根真と塩谷哲は楽しみで仕方がないといった様子。ポーランドの舞曲の名である『オベレク』は2021年の小曽根のアルバム『OZONE60』に収められ、小曽根が多重録音で1人2役のスリリングな2台ピアノを演じている。
小曽根の提案に、「あれはものすごい大曲ですよね。ぜひやりたいです!」と塩谷も応える。
「2021年の12月にやったコンサートでは、僕はこの曲を1人で弾いたから。こんどはぜひ一緒に弾きたいな。楽譜を送るよ!」
2人の関係が始まったのは、20年以上も前のこと。1998年に塩谷が発表したアルバム『88+∞(インフィニティ)』を小曽根がパーソナリティを務めるラジオでかけたことがきっかけだ。
「僕の大好きなタイプの音楽を作る人だな、というのが第一印象でした」と小曽根は当時を振り返る。
「もっと彼のことを知りたくなったので、『じゃ、この番組で電話インタビューをしよう!』ということになったんです」
いっぽう、塩谷はこの展開に、ただただ驚くばかりだったという。
「僕にとって小曽根真というピアニストは雲の上の存在。その人がラジオの番組で電話してきて、さらには『今度共演しようよ!』とまで言っている。最初は信じられなくて、『社交辞令だよね?生放送でそんなこと言っちゃって大丈夫なのかな?』くらいにしか思っていませんでした。だけど、そのうちに本当に公演が決まって、『本気だったんだ!』と(笑)。これはピアノに対する意識を変えて練習に取り組まないと、と思いました。そのくらい大きな出来事でしたね」
そして迎えた初共演の舞台は、2003年の3月。この公演は、塩谷にとって忘れられない、本当に大きな経験となった。
「この日を境に僕のキャリアは『小曽根前・小曽根後』に分けられるんですよ(笑)。何がすごかったって、相手の音を聴くということひとつとっても、レベルが全然違うわけです。お兄(小曽根)は、ただ『聴こえてくるものを聴く』のではなく、『自分から聴き獲りに行く』感じ。それをすべての瞬間でやっている。こちらがやろうとしていることを全部読んでいて、逆に絶妙のタイミングで仕掛けてくる。一流の人たちはこういう環境で音楽を作っているのか、と実感しました」
「ソルトは素晴らしいミュージシャンだから、やればすぐに対応できる。ただ、そういうことを知る機会がなかっただけなんですよね」と小曽根。「僕も若い頃に、チック・コリアをはじめ錚々たるミュージシャンたちから教えてもらい、とおってきた道なんです」
相手の音を、まるで空気を読むように感じ、2人にしかできない音楽を作り上げる。曲の構成を理解するためのリハーサルはするけれど、本番は即興。相手を信頼して音で会話を楽しむ。その結果、とてつもないミラクルが生まれることもある。それが、2人にとってのピアノ・デュオの醍醐味だ。
「僕たち2人の演奏を聴いた方から『どうやってアレンジしたんですか?』と聞かれることもあるけど、実はアレンジなんてひとつもしていないんです。その時に鳴っている音と自分の感性を信じて、音楽のことを第一に考えて取り組む。すると演奏は無限に広がっていくんです。まさにインフィニティなんですよね」(小曽根)
「気持ちをひとつにして、2人にしかできない音楽を作る。このデュオはクリエイティブな瞬間の連続で、2台のピアノがまるでひとつの楽器のようになるんですよね。“ひとりオーケストラ”とも言われるピアノが、さらに大きな楽器になるような感覚。自分でも想像できない世界が生みだされる喜びが、このデュオにはありますね。また、ドラマーがいないぶん、リズムで遊べるのもピアノ・デュオのおもしろいところだと思います」(塩谷)
今回のツアーでふたりが弾くのは、2022年に発表されたCFXの新モデル。「高音の立ち上がりと伸びがすごくいい」(小曽根)、「弾き方を変えると音もガラっと変わるのがすごい」(塩谷)という印象のほか、2人揃って挙げる特徴が、レスポンスのよさだ。
「これはヤマハのピアノ全般にいえることなんですけれど、スタッカートを弾くときにも、響きを残さずに止まってくれるんです。このコントロールのしやすさはジャズとかラテンを弾く人にとって、ありがたいと思いますよ」(小曽根)
「本当にリズムが作りやすいピアノですよね。リズムでガンガンに絡んでいける楽しさがあるので、11月のツアーもとても楽しみです」(塩谷)
最後に、ツアーのみどころとメッセージをいただいた。
「年を経るごとに、自分のやりたいことに正直でありたいという気持ちがどんどん強くなってきています。すると大切になるのが、一緒に音楽を作るパートナーの存在。その点でソルトはこのうえなく素晴らしいパートナーです。自分がやんちゃしても喜んでくれて、応えてくれて、愛してくれる。ツアーでは、会場に集まったみんなが生きている喜びや、いろんな想いを共有できるコンサートを作りあげたいと思います」(小曽根)
「自分の音楽を信じて、お兄の懐に飛び込んでいくと、自分ひとりでは到底作りえないような壮大な音楽、自分も想像できない世界が生みだされるんですよね。しかも、毎回違うものができるんです。今回は果たしてどんな音楽が生まれるか。その瞬間を皆さまと共有したいと思います。ぜひ会場に遊びにきてください」(塩谷)
日時:11月19日(土)15:00開演(14:00開場)
会場:RaiBoC Hall(埼玉)
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日時:11月23日(水・祝)16:00開演(15:30開場)
会場:三鷹市芸術文化センター(東京)※完売しました
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日時:11月24日(木)19:00開演(18:30開場)
会場:住友生命いずみホール(大阪)
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日時:11月29日(火)19:00開演(18:15開場)
会場:アクロス福岡(福岡)
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