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ジャズをバックグラウンドにした独自のスタイルで生み出す音楽/曽根麻央インタビュー
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2023.5.2
トランペットとピアノによる同時演奏のパフォーマンスで魅せる、マルチインストゥルメンタリストの曽根麻央。「まだまだいろいろなことを吸収し、自分の音楽に取り入れていきたい」と意欲を見せる曽根に、これまでの道のりと2023年6月からのツアーについてうかがった。
幼少期からピアノを習い、8歳でルイ・アームストロングに憧れてトランペットを始めた曽根。もともと譜面通りに弾くことを好まなかったこともあり一度はピアノから離れるが、小学校4年生のときに両親が連れて行ってくれたレイ・ブライアントのライブで衝撃を受け、ジャズ・ピアノの世界へ。瞬く間に頭角を現し、翌年のレイ・ブライアントのライブでは小学生にして前座を務めるまでになった。
「ともかく音楽の勉強がしたくて、東京藝術大学の附属高校を目指していました。なので、ジャンルは必然的にクラシックということになり、現在、東京藝術大学名誉教授を務めていらっしゃる世界的トランペット奏者、杉木峯夫先生のレッスンを受けたり、クラシックの音楽理論を勉強したり。中学校に上がるころには、ブラームスやショスタコーヴィチなどクラシックが大好きになっていましたね。趣味でソナタや弦楽四重奏を書くようにもなりました。そうしたことが、その後ジャズのコンポジションをする上での基礎になった気がします」
残念ながら附属高校への進学はかなわなかったが、ほどなくしてつかんだチャンスは大きかった。高校1年生のとき、師である杉木から紹介されてジャズの巨星、タイガー大越のクリニックを受講。すぐにその目に止まり、高校2年生の夏にはバークリー音楽大学の5週間の夏期講習で初めてアメリカへ。当時一緒に学んだ仲間には、石若駿や馬場智章、寺久保エレナら錚々たるメンバーがいた。その後は大学本科に入学し、首席で卒業。さらに、修士課程の第1期生としても首席で卒業している。
「タイガー先生の存在は大きいです。トランペット奏者としても僕のことを飛躍させてくれた方ですし、『麻央はいろいろなものが聴こえているから、すべてを表現した方がいい』とアドバイスしてくださいました。その言葉がなければ、トランペットかピアノのどちらかに絞っていたと思います」
バークリー時代には、ユニークな表現スタイルを持つ仲間とも出会った。親友となったプエルトリコのサックスプレイヤー、イスラエルや中東音楽から派生した音楽とジャズの融合を試みるイスラエルのハーモニカプレイヤー、スペインのフラメンコギター奏者、ヨルダンの民族音楽からクラシック、ジャズまで完璧にこなすバイオリニスト……。彼らと交わり、その要素を吸収していくなか曽根の音楽は多様性を増し、よりカラフルな色彩を帯びるように。ジャズをバックグラウンドに独自のスタイルを生み出す表現に磨きがかかる。
現在、曽根はピアノ・ソロのプロジェクト『Plays Standards』、および自身が結成したバンド『Brightness of the Lives』を両輪とした活動を展開している。バンドメンバーである井上銘(ギター)、山本連(ベース)、木村紘(ドラム)も、バークリー音楽大学留学時に出会った盟友だ。
「2014年のワシントンD.C.全米桜祭りの出演がバンド結成のきっかけです。ただ、3人は日本に帰国して、僕はそのままアメリカにいたので不定期に活動していました。2018年に僕が東京に拠点を移したあとも同じです。とくに今の時代はお互いが集まれるときに集まり、そのときのベストを尽くして熱量を爆発させる方が効果的なのではないかと考えています。メンバーはみんなものすごくクリエイティブで、集まるたびに彼らの成長やアイディアに感銘を受けています」
『Brightness of the Lives』としては、オリジナル曲をベースにメンバーのアイディアを盛り込んだ、バンド名を冠したアルバム『Brightness of the Lives』を2022年にリリース。ブルーノート東京やビルボード大阪でリリースライブも開催した。そんな彼らが、2023年6月にブルーノート東京を皮切りにツアーをスタートするというから、期待が高まる。
「Brightness of the Livesの音楽は民族音楽的だったり、ジャズ的だったり、フュージョン的だったり。いろいろなカラーが絶妙なバランスで展開していく類を見ないものだと思っています。今回のツアーのプログラムはアルバムの楽曲が中心ですが、僕に聴こえてくるサウンドは年々アップデートされているので、それによって昨年とはだいぶ雰囲気が変わったものになると思います。もちろん、メンバーの音楽もブラッシュアップされていますしね。まったく違うカラーでおもしろい感じに料理されていますので、ぜひ会場にお越しいただければと思います」
今回のツアーは、進化し続ける曽根麻央の“今”を肌で感じられる貴重な機会になりそうだ。ルイ・アームストロングの音に出会って以来こだわり続けている、明るく輝かしいトランペットの音色とダイナミクスを大切にした立体的な響き、そして情熱的なピアノ。絵画に例えるなら、多彩な絵具や筆を巧みに使い、多くの表現方法を持つ。それが曽根の真骨頂といえるだろう。
メンバーとともに創り上げるバンドサウンドを生ならではの躍動感で、ぜひ味わってほしい。
6月2日(金)Blue Note Tokyo(東京都港区)
6月6日(火)Cafe SOHO(岡山県岡山市)
6月7日(水)Mr. Kelly’s(大阪府大阪市)
6月8日(木)Mr. Kenny’s (愛知県名古屋市)
6月9日(金)Life Time(静岡県静岡市)
出演:曽根麻央(トランペット・ピアノ・キーボード)、井上銘(ギター)、山本連(ベース)、木村紘(ドラム)、Patrick Bartley, Jr(サクソフォン、東京公演のみ)
文/ 福田素子
photo/ 阿部雄介
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