今月の音遊人
今月の音遊人:甲田まひるさん「すべての活動の土台は音楽。それなしでは表現にはなりません」
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リビングで気軽に付き合える良い音を追求。HDMI(ARC)でテレビの音も楽しめるネットワークレシーバー「R-N2000A」
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2023.4.27
tagged: ネットワークレシーバー, R-N2000A
2023年5月発売のネットワークレシーバーR-N2000A。ネットワークレシーバーとは、簡単に言えばネットワークオーディオ機能を備えたプリメインアンプのこと。レシーバーとは、古くはFM/AMチューナーを内蔵したプリメインアンプのことを指し、今ではネットワークの音楽配信サービスやインターネットラジオ機能を持つものもレシーバーと呼ぶことがある。
今回はそのR-N2000Aについて、試聴を含めて詳しくレポートする。製品の特徴についての説明は、ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部の小林博文さんだ。
R-N2000Aは、型番からもわかるようにフロアスタンディングスピーカーのNS-2000Aとペアになるモデルだ。ブラックのモノトーンで仕上げられたスピーカーと同様にこちらもカラーはピアノブラック。ヤマハのHiFiコンポーネントに共通するデザインで2連メーターを備えた姿はなかなか精悍だ。
実用最大出力120W+120W(8Ω)のプリメインアンプに、FMチューナーを搭載したR-N2000Aは、MMカートリッジ対応のフォノイコライザーも備える。デジタル系では、Wi-Fi内蔵でradiko.jpなどのインターネットラジオの聴取をはじめ、Amazon Music、Spotify、Deezerといった音楽配信サービスに対応する。また、AirPlayにも対応しているので、サーバーに保存した音源やiPhoneに取り込んだ音楽を再生することもできる。また、ヤマハ独自のネットワーク技術「MusicCast」にも対応しており、対応機器との連携も可能だ。
そして、アナログ系4系統、デジタル系4系統(デジタル光×2、デジタル同軸×1、USB Type B×1)に加えてHDMI(ARC)も備えている。ARC機能に対応したHDMI端子を薄型テレビに接続するとテレビ側の音声をR-N2000Aで再生できる。さらにテレビと連動して電源オン/オフやテレビのリモコンで音量調節ができるなど、利便性にすぐれた機能だ。アナログ系、デジタル系の多彩な機器、スマホとの連携やネットワークオーディオ機能に加えて、テレビの音まで快適な操作で気軽に楽しめるというわけだ。
「R-N2000Aは、NS-2000Aと同様にリビングなどの生活空間で、快適により良い音を楽しみたい人に向けたモデルです。そのため、リビングにある薄型テレビの音も良い音で楽しみたいというニーズに応えられるよう、HDMI(ARC)を装備しました」(小林さん)
HDMI(ARC)については、AVアンプでは当たり前となっている機能で、古くからAVアンプを発売しているヤマハでは、そのためのノウハウもたくさん持っている。R-N2000AにはそうしたAVアンプの技術が惜しみなく投入されているのだ。
その一例と言えるのが、自動音場補正機能「YPAO」を搭載したこと。付属の専用マイクを使って室内の環境や接続したスピーカーを測定し、最適な音響に補正する機能だ。オーディオ専用の試聴室ではないリビングでは、スピーカーの位置を理想的な場所に置くことは難しく、また左右の壁の影響などもそれなりにある。そこで、スピーカーの距離や音量、室内の音響特性を測定・補正することで、理想的な再生音を実現するのだ。
「YPAO(Yamaha Parametric room Acoustic Optimizer)は、これまでさまざまな音楽ホールの設計などに関わってきたヤマハの音響測定技術を使って、家庭の室内環境で理想的な音を再現するための機能です。演算やイコライジング処理は64bit精度で高精度に行います。そして、音質への影響の大きな初期反射音を積極的に制御する『YPAO-R.S.C.』も備え、リビング環境で気になる室内の不自然な反響音の影響を抑えます。このほか、深夜など小音量で再生するときに、人間の耳の特性に合わせて自然な音質補正を行い、小音量でも迫力が薄れるようなことのない臨場感のある音を再現する『YPAO Volume』も備えます。リビングのような場所で気軽に良い音を楽しむための機能をしっかり盛り込みました」(小林さん)
デジタル信号処理された音楽信号をアナログ信号に戻すのがD/Aコンバーター。これは定評のあるESS社製DAC「ES9026PRO」を採用。8ch分のD/Aコンバーターを持つLSIで、再生用として4ch分を左2ch+右2chで使っている。ハイレゾ音源にも対応する高性能D/Aコンバーターで、より高品位な音の再現を可能にしている。
もちろん、プリメインアンプ部分もしっかりとこだわって設計している。電源部には大容量のトロイダルトランスを搭載。トランスとインナーシャーシの間には3mm厚の真鍮製ベースプレートを挟み、トランスの振動を制御している。パワーアンプ回路は、ヤマハ独自の「フローティング&バランス・パワーアンプ」を搭載。出力段の左右チャンネルのプラス側とマイナス側で合計4つの電力増幅回路を持ち、フローティングすることで、アンプ動作の完全対称化と電源供給を含む全回路をグラウンドからの独立を実現したもの。電圧変動やノイズの影響を徹底的に排除できるアンプ回路だ。
アンプ内部を見ると、アンプ部は左右対称の設計になっていて、左右のチャンネル間の悪影響も抑えられる。全体を支えるシャーシも、これまでのHiFiアンプと同様に「メカニカルグラウンド・コンセプト」を継承。電源トランスやブロックケミコンなど、振動源にもなる大型パーツをベースフレームに取り付け、ベースフレームに直接装着された脚部が受け止める構造だ。脚部も真鍮削り出しの剛性の高いパーツが使われている。また、電源用ケーブルはPC-Triple Cを採用するなど、パーツのひとつひとつまで音質を吟味して選ばれている。
「これまでは、リビング向けというとインテリア性を重視したデザインの製品が多かったですが、肝心の音に不満を感じる人は少なくありませんでした。R-N2000Aでは、インテリア性や使い勝手の良さを盛り込みながらも、基本的な音質にもしっかりとこだわった本格的なものを目指しました。大好きな音楽を気軽に優れた音で楽しんでいただきたいと思います」(小林さん)
いよいよ、R-N2000Aの音を聴かせてもらうことにした。組み合わせたスピーカーはもちろん、NS-2000Aだ。今回の試聴では、主にハイレゾ音源を中心に聴いている。
ネルソンス指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による『ブルックナー/交響曲第8番』を聴くと、豊かな音場と鮮明な音の演奏が印象的だった。第4楽章の冒頭の雄壮なメロディも力強く鳴らし、打楽器やコントラバスによる低音の豊かな響きも雄大だ。打音の勢いの良さや豊かな響きを含めて、アンプとしての駆動力の高さもよくわかる。
NS-2000Aは柔らかな感触の自然な音が印象的なスピーカーだが、R-N2000Aと組み合わせるとその自然な感触はそのままに、ヴァイオリンの艶やかさ、金管楽器の輝くような音色を鮮やかに描く。心地良い音で、しかも色彩感のある音だと感じた。個々の音の粒立ちもよく、音場の豊かさとあいまって実に見通しのよい再現になる。
熱気たっぷりのジャズ映画『BLUE GIANT』のサントラから『N.E.W.』を聴くと、テナーサックスの力強い音が勢いよく出て、金管楽器らしい質感も豊かに再現される。ピアノの力強いタッチと音色の鮮やかさも印象的で、演奏の熱気を伝えながら、気持ち良く鳴り響くジャズの高揚感にあふれた演奏になる。
私見ながらNS-2000Aは自然で心地良いが、『BLUE GIANT』のような激しいジャズやロックなどでは少し穏やかに感じるところがあったが、R-N2000Aと組み合わせると、鮮やかで生き生きとした感じが加わり、元気の良さやエネルギー感がわかりやすく感じられる音になった。音楽を楽しむためのコンポーネントというコンセプトがよくわかる音だ。
「R-N2000Aは開発の段階からNS-2000Aとペアになることを想定していましたし、音質のチューニングでもそれを意識して仕上げています。良い音楽を気持よく楽しんでいただけると思います。また、HDMI(ARC)でテレビの音を再生することも意識し、テレビ放送や音楽番組なども良い音で楽しめるものにしています」(小林さん)
薄型テレビと接続して、HDMI(ARC)の音も聴いてみたが、明るめの色調の音はテレビの華やかな音と相性がよく、楽しい音であると同時に細かな音まで鮮明に再現する基本的な実力の高さにも感心した。音楽番組のライブステージでは、女性ボーカルも色気のある音でニュアンスの豊かさもあり、映像と一体になった音楽の魅力がよく感じられた。
基本的な実力の高さを持ちながら、鮮明ではつらつとした音になっているのが聴きやすく、自然に良い音を実感できた。音楽と真剣に向き合うような生真面目な感じではなく、リラックスして気持ち良く楽しめる音だ。YPAOの音場効果については、リビングを模したスピーカーの間に薄型テレビを置いた環境では、思った以上にテレビ画面の音の反射の影響が大きく、中央のボーカル音像を乱していたことが実感できた。リビングでテレビの両脇にスピーカーを置いた環境では、YPAOの効果はかなり大きいと言えそうだ。
最後にデザインにも触れよう。長方形のスイッチや中央に備えた2連メーターなど、基本的な意匠はオーソドックスなオーディオ機器だが、深い艶が美しいブラックはリビングでも引き締まった印象がある。2連メーターのLEDランプはリビングに合わせて暖色系の色調としているのも落ち着いた印象で良い。
そして、ちょっと驚くのが、フロントパネルの下部にある白色有機ELのディスプレイ。一見すると下部全体がクリア仕上げになっていてモダンさを演出するデザインかと思うが、そこに各種の表示が現れる。ハイレゾ音源などの再生時には楽曲名も日本語で表示される。これがなかなかかっこいい。いかにもディスプレイという感じはなく、自然に文字だけが浮かび上がる姿もきれい。写真などではわかりにくいので、ぜひ実際に店頭などで電源の入った状態で見てほしい。
R-N2000Aは音質的にはもちろん、テレビの音も高音質で楽しめ、多彩なメディアに対応する機能性、リビングで良い音を実現するYPAOなど、リビングオーディオとして求められるものがしっかりと入った製品だ。本格的なオーディオだけでなく、こうした気軽に付き合える製品は今後も増えてくると思う。リビングに本格的なオーディオを導入しようと考えている人は、このような新しいスタイルの製品にも注目してほしい。
さまざまな音楽コンテンツをこれ一台で。いつものリビングに上質なオーディオライフをお届けするHiFiネットワークレシーバー。
R-N2000A製品サイトはこちら
まさに音楽ファンのための音。インテリアに調和するスピーカー「NS-2000A」新登場(Web音遊人)
文/ 鳥居一豊
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