今月の音遊人
今月の音遊人:ケイコ・リーさん「意識的に止めなければ、自然に耳に入ってくるすべての音楽が楽譜として浮かんでくるんです」
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今月の音遊人:Charさん「いろんな顔を思い出すね、“音で遊んでる”ヤツって。俺は、はみ出すヤツが好きなんだよ」
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2023.9.1
8歳のときにギターを弾き始めて以来、半世紀以上にわたって活動を続け、音楽の可能性を探求しているCharさん。楽器との出会いや、演奏する楽しみについて語っていただいた。
クリームの『クロスロード』だろうね。中学生の頃、この曲の5コーラスのギター・ソロを耳コピするのに千日かかってるからね。一番聴いたんじゃない?レコードの溝のどのへんに針を落とせば何小節目が聴けるか、わかるくらいにはなったから。
あまりに聴きすぎたもんだから、1974年のエリック・クラプトン初来日の日本武道館公演に行って本人の演奏を見たとき、“俺みたいな弾き方するな”と思っちゃったの。クラプトンは小指をあまり使わない弾き方をするんだけど、俺も自分で気づかないうちにそうなってたんだよね。
一生をかけて追求したいものになっちゃったのかな。小学校2、3年のときは、まだうちにギターがなかったから、輪ゴムをかけた下敷きを湾曲させて弓みたいにしてギターに見立てて弾いて、友達に聴かせたりしてたからね。やっぱり昔から興味はあったんだよ。今も外で電信柱を支えているワイヤー(地支線)を見かけると、それですら弾きたくなるからね。
そういえば、小学校に入って最初の保護者面談で、担任の先生が“竹中(Charさんの本名)君には芸術的なことをやらせたほうがいい”っておっしゃったんだって。で、おふくろが何をさせたらいいか聞いたら、“音楽の習い事はどうですか”って。そしたら、おふくろが家に帰ってくるなり、“あんた来週からピアノ習わせるから”って。当時は鼻たらして野球やってるようなやんちゃな子だったから、ピアノ教室に行くなんて絶対ヤダ!って。結局習いに行くことになったんだけど。
でも、それがきっかけで音楽を始めたわけだから、その先生の一言がなかったら、今の俺はなかったかもしれない。あと、先生の言葉を真に受けたおふくろのおかげだね。
いろんな顔を思い出すね、“音で遊んでる”ヤツって。逆に、遊べないヤツもいたけどね。例えば、セッションしようっていうときに、譜面どおり、テンポどおりって感じで、はみ出さないヤツがいるんだよ。でも人間って、はみ出すもんじゃん?ノッてくると。俺は、はみ出すヤツが好きなんだよ。
とりあえず、挨拶がわりに最初は合わせて弾いて、そのうちはみ出すヤツが出てきたら、“おっ、オマエそこまでいくのか。じゃあ俺はこうだ”ってなっていくのが楽しいんだよ。だから俺は、「音で遊ぶ人」を“セッションできる人”と訳したいね。
やっぱり、いろんな人に出会えたことじゃないかな。音楽というジャンルに限らず、本当にいろんな人と知り合えたからね。
まったく知らない国の人とセッションするときなんかは、それぞれのお国柄にも触れることができる。ジャマイカ出身のドラマーと一緒に演奏したとき、レゲエはこういうもんだっていう思い込みでギターを弾いたら、全然うまく絡めないんだよ。カッティングひとつにしても、向こうでは下から上に弾くし、そういうのは一緒にやってみないとわからなかった。
そうやって外に出て行って、自分が育った環境と違う人、違う音楽を聴いてきた人と演奏することで、“俺のこと”がわかったりするから、音楽っておもしろいよね。
Char〔チャー〕
1955年6月16日東京生まれ。本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。10代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976年『Navy Blue』でデビュー。その後、Johnny, Louis & CharやPsychedelix、BAHOといったバンド、ユニットでも活動。2009年ZICCA RECORDS設立。2023年7月、音楽制作に関わるすべてを独りで手掛けたアルバム『SOLILOQUY』を発表。
オフィシャルサイト
文/ 飯島健一
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