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小泉文夫記念資料室

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

民族音楽学者であり、東京藝術大学音楽学部の教授だった故・小泉文夫氏のコレクションを展示する小泉文夫記念資料室。室長を務める東京藝術大学音楽学部の植村幸生教授に、資料室の成り立ちや自慢の楽器についてうかがいました。

日本における民族音楽研究のパイオニアであり、民族音楽の魅力を広く知らしめた小泉文夫氏。民族音楽がまだ一般的でなかった1950年代にインドに留学し、実技を学ぶかたわら現地の音楽の調査を実施。日本に帰国後は東京藝術大学で教鞭をとるほか、当時としては珍しくメディアに登場し、独自の視点とソフトな語り口で多くの人を魅了しました。
ですが、活躍の頂点にあった1983年に急逝。遺族から小泉氏が収集した楽器、楽譜、図書、録音テープ、映像資料、レコードなどが寄贈されたのを機に、1985年6月6日に小泉文夫記念資料室が開設されました。

小泉文夫記念資料室

小泉氏の民族音楽研究の出発点はインドだった

現在、所蔵されている楽器はおよそ800点。1950年代から1980年代前半に、小泉氏が数十か国から持ち帰った楽器を中心に展示されています。
「資料室の開設にあたっては、小泉先生が残したメモなどを頼りに約2年がかりで全ての楽器を鑑定し、目録をつくりました。ただし素材については判別が難しいため、来日した音楽家や現地の事情に詳しい研究者に助言を求めたり、ウェブサイトで一般に情報公開したりすることで今もなお情報を更新しています」と、植村教授。

コレクションのなかには今では見られない古いスタイルのものも多く、そのひとつがビルマの竪琴ともいわれるサウン。資料室にあるものは弦をひもで結んで棹(さお)にとめるタイプですが、調律に手間がかかるため、今はネジ式の楽器がほとんどだそう。
また、小泉氏が留学から持ち帰ったインドの楽器も古いスタイルのもの。手漕ぎ式のリードオルガンであるハルモニウム(写真一番上)や、19本の弦(弓で弾く4本の弦+共鳴弦15本)を持つエスラージなど、インドの香りを感じる楽器がそろいます。

サウン エスラージ

(写真左)サウン(写真右)エスラージ

加えて、小泉氏が日本における実践の基礎を築いたのがジャワのガムラン。当初は小泉氏の自宅に学生が集まって練習に励んでいましたが、その後、東京藝術大学の自らが受け持つ演習のなかでガムランを教え始めます。
「ガムランはかなりの大型なので、梱包や船便での輸入手続きなど、日本に運ぶのはさぞ大変だったろうと思います。先生の奥様で声楽家の、故・加古三枝子氏のお話によると、大きなガムランがある日突然自宅に届き、たいそうびっくりしたということです」

なお、当資料室では訪問者が楽器を手に取ることができ、一部の楽器については実際に音を鳴らすことも許可しています。興味のある民族楽器に触れながら心ゆくまで観察したり音を出したりできるのは、とても貴重なことではないでしょうか。

お宝楽器の紹介はまだまだ続きます。

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