今月の音遊人
今月の音遊人:矢野顕子さん 「わたしにとって音は遊びであり、仕事であり、趣味でもあるんです」
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ふたりの才能がスパークしたクラシック楽曲アレンジによるコラボレーション動画/バイオリニスト﨑谷直人×プロデューサー浅倉大介対談
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2024.10.31
tagged: エレクトリックバイオリン, 﨑谷直人, YEV PRO, 浅倉大介
2024年秋、新たに発売されるヤマハのエレクトリックバイオリン「YEV PRO」のプロモーションビデオに、バイオリニストの﨑谷直人と音楽プロデューサー・作曲家の浅倉大介が登場。磨き抜かれた演奏によりクラシック音楽界の中心で活躍中の﨑谷と、シンセサイザー・ミュージックの最前線を走り続ける浅倉、ふたりの才能とセンスがスパークしたクラシック楽曲アレンジによるコラボレーション動画が完成した。制作の舞台裏やお互いの音楽、YEV PROについて、ふたりに語り合っていただいた。
──おふたりは今回のコラボレーションが初顔合わせとのことでしたが、﨑谷さんはかねてから浅倉さんの大ファンだったそうですね。
﨑谷:はい、「これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?」とインタビューで聞かれて「浅倉大介さんの曲です」と即答するほど、ずっと聴いてきました。仕事ではクラシックを聴いたり弾いたりしますが、プライベートではベートーヴェンよりも総再生時間は長いかもしれません。今回のコラボレーションは本当に夢のようです。
浅倉:はじめて﨑谷さんにお会いしてお話を伺ううちに、僕の曲についてとても詳しくて、コンサートにも足を運んでくださっていたことがわかり……とても嬉しかったのと同時に、﨑谷さんのご期待にちゃんと応えないと!と身が引き締まる思いでした。
──今回はクラシック楽曲を、エレクトリックバイオリンとシンセサイザーのオーケストラで演奏されましたが、浅倉さんにとってクラシック楽曲のアレンジはいかがでしたか?
浅倉:僕はもともと音楽のジャンルというものを意識しないタイプなので、クラシックだからといって特別なことはありませんでした。最初に﨑谷さんと打ち合わせをしたとき、YEV PROを弾いて、楽器や楽曲について1時間ほどプレゼンテーションしてくださったのですが、それがとても刺激になりましたね。クラシックだけどここまで自由に弾いていいんだという見本を﨑谷さんが聴かせてくださったおかげで、のびのびと自信をもって取り組むことができました。
﨑谷:浅倉さんのサウンドを思い描きつつ、恐縮ながらリクエストもさせていただきました。ヴィヴァルディの『四季』の『冬』でのサルサ風のリズムは、もともと浅倉さんの楽曲にあるもので、ずっとそういうアレンジで弾いてみたいと思っていたんです。
浅倉:「なんかサルサっぽい曲、ありましたよね?」みたいに、ちょこちょこ言い出すんですよ。「あ、この人全部知ってるな」って(笑)。
──YEV PROという楽器の魅力やポテンシャルについては、どのように感じましたか?
浅倉:﨑谷さんが奏でるYEV PROを聴いたとき、はじめは頭の中で姿と音色が一致しなかったんですね。バイオリンは木でできたボディが共鳴して音が出るものだと思っていたのに、骨格だけのようなおしゃれなデザインの楽器から美しいバイオリンの音色がしたので、「すごい!」というのが素朴な感想でした。
﨑谷:エフェクトなどをなにもかけない状態ではじめて弾いたとき、“自分の音”がしたのには驚きました。YEV PROはエレクトリックの楽器でありながら、アコースティックの楽器と同じぐらい、弾き手の個性がよく出るんですよ。
浅倉:だからこそ、トゥーマッチにやりすぎないよう気をつけましたね。今はどんな音でも、波形レベルで切ったり貼ったりループさせたり、いくらでも加工することができるのですが、今回はあくまで生身の人間が奏でる音が、エレクトリックバイオリンによって新しい変化をつけられるということが主眼だと思ったので。
──バッハ、ヴィヴァルディ、モンティと、曲想が変わるごとに、﨑谷さんの音色も表現もガラリと変わって、YEV PROのさまざまな可能性を伝える映像に仕上がりましたね。
浅倉:曲想によって演じるキャラクターまで考えて弾き分けていて、﨑谷さんは名俳優みたいだなと思いました。あるときは闇堕ちしたバイオリニスト、あるときは陽気な南国のバイオリニストというように。映像もひとつのストーリーのように見られるのがいいなと思いました。
﨑谷:最後には浅倉さんのカッコいい演奏姿もあって。映像監督の地代所悠さんは、自身がコントラバス奏者でもあるので、音楽家としてのセンスで我々の音楽をキャッチして、映像化してくれたのだと思います。
──お互いの音楽に対して理解とリスペクトを持ったおふたりの、深いレベルでのコラボレーションだったことがお話からも伝わってきます。思い描いたイメージがピタッと合っているというか。
浅倉:それは僕もありがたかったです。でも“イメージ”って言葉で言うのは簡単ですけれども、それを音楽という形に落とし込むのは、実際にはとんでもなく大変な作業でもあって。頭の中では簡単に鳴るんですけどね。
﨑谷:それは僕も痛感しました。シンセサイザーのことは詳しくありませんが、たとえば“キラッ”という1音を出すのにも、いろいろな音色の引き出しを開けて、組み合わせて、何時間もかけて音を作っていくわけですよね。それは僕らバイオリニストが普段、自分の身体と感覚でイメージに合う音に近づけようと練習することとまったく同じだなって。
──なるほど。おふたりそれぞれに、今回のコラボレーションで得たものが大きかったようですね。
浅倉:僕は最近、音楽を作るときに「これは AI には作れないだろう」というポイントを考えたりします。そういう意味で、今回のコラボレーションのようなアプローチは AI の学習データにはまだまだ少ないと思います。今後に向けての、ひとつの切り口を見つけたように思います。
﨑谷:デジタルの最先端にいながら、決してテクノロジーに操られていない浅倉さんの音楽づくりを間近で見ることができて、やっぱり音楽は人間が作るものなんだと感じられたことが自分にとっては大きかったです。
──今後のご活動も楽しみにしています!
演奏感は限りなくアコースティックバイオリンに近づき、さらに豊かな響きを実現。ステージユースを意識した存在感のあるスタイリッシュな外観と高い操作性を持った仕様にアップデートしました。演奏者がアコースティックバイオリンで培った表現を最大限に引き出し、見るものの心を惹きつけます。
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文/ 原典子
photo/ 宮地たか子
浅倉大介 衣装協力/ D.Nart.Ampta(SHIFFON:03-6666-4321)
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