今月の音遊人
今月の音遊人:押尾コータローさん「人は誰もが“音で遊ぶ人”、すなわち“音遊人”なんです」
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今月の音遊人:五嶋龍さん「『音遊人』と聞いて、子どもの頃に教えてもらったギリシャ神話のことを思い出します」
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2020.9.1
1995年に札幌でデビューを果たして以来、2020年で25周年という節目を迎えたバイオリニストの五嶋龍さん。出身地であるニューヨークを拠点として音楽活動を続けながら、一方では国際文化交流や社会貢献活動なども積極的に行っています。そんな五嶋さんの一端を垣間見るお話を伺いました。
いろいろなジャンルの音楽を聴いていますから、お答えするのがとても難しい質問です。夜を徹してアーミン・ヴァン・ブーレン(世界的に人気を得ているトランス・ミュージックのDJ)も聴きましたし、『となりのトトロ』の曲が耳から離れなかったり、タン・ドゥンが作曲した映画『HERO』の音楽を夢の中で指揮していたり……。でも確かに答えられるのは、自分が練習した曲、コンサートで弾く曲が「最もたくさん聴いた曲」だと言えますね。
自分と、聴衆と、自然と、あらゆるものとのコミュニケーション・ツールのひとつです。ただしそれはあくまでも僕の言い分であって、聴いてくれる人たちにどのように受け止めていただけるかは、シチュエーションによってさまざまかもしれません。“理想的なバイオリンの音”ということでしたら、「文句なしに好きな音」ということになります。自分が好きな音であると同時に、その音を持つバイオリン自体が「僕のことを好きだ」と確信させてくれる。そんな音だと言えるかもしれません。
初めに思い浮かべるのは古代ギリシャ神話。小学校の頃に先生から聞いた話ですので、勇気ある強き神や万能の神、美しき神などのことが多く、悲しみをそそる話は出てきませんでした。でもそれが星座につながっていて、プラネタリウム(ニューヨークのグランド・セントラル駅の天井にある彫刻)を校外学習で見に行ったり、ラテン語の学習につながったり、理科の元素記号を覚えるのがちょっとおもしろくなったりしたことは確かです。そしてこれらの背景には常に音楽がある。ハープの元祖である竪琴、オーボエのような縦笛が登場して、そうした話の途中でモーツァルトの交響曲「ジュピター」やホルストの「惑星」などを聴かせてもらいました。堅苦しい授業というより楽しく勉強へつながる時間だったかもしれません。「音遊人」と聞いて、僕はそんなことがあった子どもの頃を思い出します。
五嶋龍〔ごとう・りゅう〕
1988年、ニューヨーク生まれ。7歳のときに「PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)」でデビュー以来、国内外で数多くのコンサートを行い、ドイツ・グラモフォン・レーベルと専属契約を結んでCDも多数リリース。ニューヨークでは「五嶋龍“Excellence In Music”(音楽優秀賞)」を通じて公立高校生に奨学金を授与するなど、社会福祉・貢献活動も盛んに行っている。使用楽器は1722年製のストラディヴァリウス「ジュピター」(日本音楽財団より貸与)。
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