Web音遊人(みゅーじん)

Z EXPRESS BIG BAND - Web音遊人

スタンダードジャズから吹奏楽ナンバーまで、20人の凄腕たちが魅せた熱いステージ/Z EXPRESS BIG BAND

昨年秋に行われたイベント、「2016楽器フェア」を機に結成されたビッグバンド、Z EXPRESS BIG BAND の旗揚げ公演が4月22日、ヤマハ銀座スタジオで行われた。バンドの船出にふさわしく、豪華ゲストとの共演もあり、スタンダードジャズから吹奏楽ナンバーまで多彩なプログラムで観客を沸かせた。興奮の120分の様子をお届けする。

最初のナンバーは「Take The “A” Train」。しかし“おなじみのそれ”ではなく、ファンクアレンジでの演奏だ。バリトンサックスとバストロンボーンのベースラインが曲をリードし、菅野浩(サックス)、和田充弘(トロンボーン)、赤塚謙一(トランペット)のソロがはさまる。ラスト15秒のたたみかけでは、音の密度が濃くなると同時にテンションの高まっていく様子に圧倒された。

次はリズムが特徴的な「Tell Me A Bedtime Story」と「Fascinating Rhythm」。アンニュイなメロディのループ間に現れる変拍子に心地良く浸っていると、今度は転がるようなメロディをキレよく奏でていく。こうした楽曲の扱いの中に、早くもバンドの真骨頂を見たような気がした。

続いては、ソロやパートにフォーカスしたナンバー。これまで司会として会場を盛り上げてきた三塚知貴(トロンボーン)がソロを受け持ち、完璧な脱力のテクニックをもって、ロマンチックなスローナンバー「When I Fall In love」を歌いあげた。そして、「Take The “A” Train」でベースラインを担当した宮木謙介(バリトンサックス)、朝里勝久(バストロンボーン)がメインメロディを担当するバスパートのための楽曲「Bottom End Shuffle」へと続く。楽器をあえて強く鳴らす奏法で、低音ならではの太い音を会場いっぱいに響かせた。

第1部後半は、クラシックのサキソフォニスト雲井雅人をゲストとして迎えた。まさか自分がジャズのステージに立つとは思ってもみなかったと話すクラシック界の巨匠との、貴重なコラボレーションが実現したのだ。雲井はソプラノサックスとアルトサックスを持ち替えながら、「Someone To Watch Over Me」「Over The Rainbow」「Summertime」「Somewhere」の全4曲を披露。開始早々気づいたのは、バンドの柔軟性だ。さすが雲井の音色は美しく、そのバックで奏でるバンドの音色は、それまでとははっきりと違うものになった。一気に柔らかみを帯び、雲井のメロディに合わせて濃淡を付けたり、ドラマチックな演出を加えたりと、アシストというより共奏の空間を創り出していたのが印象的だった。

雲井雅人

第2部は2組目のゲスト、覆面をまとった2人組、TubamanShowのステージで幕を開けた。ユーフォニアムとチューバという異色のコンビだ。客席後方からチューバを吹きながら登場するというユニークな演出や、“チューバ星”からやってきたというふたりの謎めいたMCが会場の笑いを誘う。バンドと演奏したのは、吹奏楽の定番曲「宝島」と「The Carpenters Forever」。低音ゆえにくもりがちな音もはっきりと聴こえ、バンドとのコンビネーションの良さも見せた。

チューバマンショー

ライブは佳境を迎え、スタンダードジャズナンバーの「There is No Greater Love」「Emily」「It Don’t Mean A Thing」が続く。各曲に登場するソロパートで、メンバーは抜群の集中力を発揮。まず「There is No Greater Love」では、ピアノの佐久間優子のソロと共に、オールサックス、オールトロンボーンのパートがそれぞれ見せ場を作り、続く「Emily」では、トランペットのマイク・ザッチャーナックがセンチメンタルなメロディを静かに聴かせた。アップテンポな「It Don’t Mean A Thing」では、赤塚謙一、古屋ひろこ(トランペット)、石橋采佳(トロンボーン)のパワフルなソロに場内からかけ声が飛ぶ。

会場の温度が最高潮に達したところで、最後は雲井とTubamanShowも加わり、全員で「Spain」を演奏。雲井のサックスとTubamanShowのユーフォニアムとで交互に旋律を演奏し、そこにバンドのソロが入ってフィナーレを迎えた。

■ライブインフォメーション

『Z EXPRESS BIG BAND』
日時:2017年7月24日(月)1st.19:30開演/2st.21:15開演
場所:BLUES ALLEY JAPAN(東京・目黒)
料金:一般4,000円/学生3,000円(いずれも前売り・税込)
出演:菅野浩、福井健太、Raymond McMorrin、河村緑、宮木謙介(Sax)/石井真、赤塚謙一、古屋ひろこ、Mike Zachernuk(Tp)/和田充弘、フジイヒロキ、石橋采佳、朝里勝久(Tb)/勘座光(Ds)/佐久間優子(Pf)/岸徹至(B)/三塚知貴(MC/Tb)
スペシャルゲスト:エリック・ミヤシロ(Tp)
詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:上原彩子さん「家族ができてから、忙しいけれど気分的に余裕をもって音楽と向き合えるようになりました」

6800views

音楽ライターの眼

連載49[ジャズ事始め]フュージョン的アプローチでは生まれなかった大江戸ウィンドオーケストラ

1750views

P-515

楽器探訪 Anothertake

ポータブルタイプの電子ピアノ「Pシリーズ」に、リアルなタッチ感が得られる木製鍵盤を搭載したモデルが登場!

34061views

楽器のあれこれQ&A

目指せ上達!アコースティックギター初心者の練習方法とお悩み解決

101831views

大人の楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

19997views

オトノ仕事人

新たな音を生み出して音で空間を表現する/サウンド・スペース・コンポーザーの仕事

7553views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

11084views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

9227views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

20398views

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

11219views

サクソフォン、そろそろ「テイク・ファイブ」に挑戦しようか、なんて思ってはいるのですが

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォンをはじめて10年、目標の「テイク・ファイブ」は近いか、遠いのか……。

8543views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

31382views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11977views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

23935views

映画『プリンス ビューティフル・ストレンジ』

音楽ライターの眼

プリンスの故郷を通して見える素顔。映画『プリンス ビューティフル・ストレンジ』

1682views

松石陽介さん

オトノ仕事人

「音楽の輪・人の和」を大切にして、子どもたちを健やかに育てる/地域バンドをまとめる仕事

494views

われら音遊人

われら音遊人:ママ友同士で結成し、はや30年!音楽の楽しさをわかちあう

5749views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカで音楽好きの子どもを育てる

14541views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

22131views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8916views

ヴェノーヴァ

楽器のあれこれQ&A

気軽に始められる新しい管楽器 Venova™(ヴェノーヴァ)の魅力

2778views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

7134views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10551views