今月の音遊人
今月の音遊人: 上野耕平さん「アクセルを踏み続けることが“音で遊ぶ”へとつながる」
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2年分のプレイリストと選り抜いた音楽コラムも掲載!/書籍『生活が踊る歌 TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」音楽コラム傑作選』
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2019.5.22
2000年以降、音楽配信サービスが普及し、私たちのリスニング環境は劇的な変化を遂げた。だが時代は変わっても、名曲との一期一会の出会いや、有益な豆知識を与えてくれるのがラジオ番組ではないだろうか。
ラジオの世界で、次世代のスターとして注目を集めているのが、作詞家、コラムニストとしてマルチに活躍するジェーン・スー。彼女がパーソナリティーを務める生活情報番組『ジェーン・スー 生活は踊る』(月~金曜、11:00~13:00生放送)は、TBSラジオの昼の顔として多くの人の知るところだが、番組を陰で支えているのが、音楽ジャーナリストである高橋芳朗(よしあき)の選曲。本著には、高橋の選曲リストと、毎週金曜日に放送している音楽コラム(音楽雑学を提供するコーナー)の一部を抜粋し、加筆・編集を加えたものが収録されている。
高橋芳朗は、音楽専門誌の編集者を経て音楽ジャーナリストとなり、ラジオに活動の場を広げてからは選曲をライフワークとしている。ちなみに、高橋が選曲に興味を持ったきっかけは映画音楽で、映画のなかで素敵な音楽シーンを見るにつけ、実際の人生や生活でもその都度気の利いた音楽が鳴ったら最高なのに……と、思うようになったそうだ。
「携帯音楽プレーヤーのシャッフル機能を利用していると、雨が降り出したときにちょうど雨にちなんだ曲がかかったりするような、小さな奇跡が起こることがあるじゃないですか。ああやって音楽によって生活がほんの少しでも色づく瞬間に、このうえない憧れと幸せを覚えるんです」(本著より)と、高橋は語る。よって、本番組の選曲をする際は、年代やジャンルより、季節や天候を踏まえた生活のサウンドトラックとしての鳴りを重視しているという。
また金曜日の音楽コラムは、「映画『ボヘミアン・ラプソディ』では聴けないクイーンの隠れ名曲」「なぜ?日本の70年代ロック、海外で人気の背景を探る」「音楽で振り返るアメリカ大統領就任式」など、毎回ひとつのテーマに絞り、話題のトピックや音楽と社会の関連性、洋楽視点で見た邦楽などについて独自の切り口で解説してくれる。ともすると難解になりがちな音楽カルチャーの話を、誰にでもわかりやすくかみ砕いた解説は、「ヨシくんは平たい解説をしてくれるので、リスナーをおいてけぼりにしないし、不快にしない」(本著より)と、ジェーン・スーも認めるところだ。
巻末には、2016年4月の番組スタートから約2年におよぶプレイリストと金曜日の音楽コラムのテーマが一覧で掲載されている。プレイリストから気になる曲を片っ端から聴くもよし、また音楽コラムから興味のあるトピックを探し、その日のプレイリストを聴けば、ひとつのテーマに沿って楽曲を聴くこともできる。
先入観なしに音楽を聴くのも楽しいが、アーティストや楽曲の背景を知ったうえで聴くと、また違った味わいがある。もう一歩踏み込んで楽曲を味わいたい人や、リスニングするうえで役立つ音楽知識が知りたい人は、ぜひ本著を手に取ってみてはいかがだろうか。
『生活が踊る歌 TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」音楽コラム傑作選』
著者:高橋芳朗
発売元:駒草出版
価格:1,500円(税抜)