歌うときは、体全部が楽器となるように/ボイストレーナーの仕事(前編)

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オトノ仕事人 ボイストレーナー
オトノ仕事人
歌うときは、体全部が楽器となるように/ボイストレーナーの仕事(前編)

声は一人ひとりに固有のものであり、同じ歌でも声の出し方で表情が変わってくる。だからこそ、より大きな声量で歌いたい、音域をもう少し広げたいと、声の出し方への思いも千差万別だ。ボイストレーナーは、そんな個々の思いをくみ取りながら、よりよい声の出し方を指導する。
どのように訓練をしたら、声の出し方は変わっていくのか。自身もライブ活動を行いながら、プロの歌い手からアマチュアの愛好家まで幅広く指導するボイストレーナー、うえむらかをるさんにうかがった。

「ギターやピアノのように楽器を演奏するのと同じ発想で、体を楽器としてどのように鳴らすのか。体をちゃんと鳴らしてあげるための体の使い方や、常によい声を保つための訓練をするのが、ボイストレーニングです。のどだけではなく、全身。頭のてっぺんから足の先まで使います。歌うときは、体全部が楽器となるようにと」
うえむらさんのもとでボイストレーニングを受ける人の中には、話し声の改善を目的としている人も、1~2割いるという。目的が違っても、基本的なメソッドは同じだ。
「よく通る声は、相手に聞いてもらいやすいので、意見も通りやすくなります。人が聞いて心地よい響きを作るという点では、歌が目的でも話すことが目的でも同じです」

「心地よい響き」の声へと導くポイントは、発声へとつながる呼吸にあるという。
「声帯に負荷をかけることなく、より響きのよい声を出せるのが腹式呼吸です」
腹式呼吸とは、胸郭を動かすのではなく、腹筋を使って横隔膜を上下させることによって行う呼吸のこと。日本語はアクセントの強弱が少なく音の上下で表現するので、腹式呼吸を使う機会が少ない。ゆえに、腹式呼吸からトレーニングを始める。
「体をどのように使って呼吸をしているのか意識すること、体の中に想像を巡らせることを大切にしています。腹式呼吸では『お腹に風船が入っていると想像して、それを膨らませるように空気を入れます。次に少しずつ空気が抜けていくように出していきましょう』と。これはどのトレーナーさんも同じだと思いますが、見えない体の中を意識できるようにと、指導していきます」
最初に挨拶をしたときの声の出し方で、腹式呼吸ができているかどうか、体のどこを使って声を出しているかを把握し、声質や骨格などの特徴を見ながら、指導の方向を考える。
「どなたにも徹底するのは、姿勢を正すこと。姿勢が悪いと呼吸がまっすぐ出ていきませんから」
呼吸の次に指導するのは顔面。表情筋をしっかり使うことで、声の音域が広がるからだ。日本語はあまり表情筋を使うことはないので、こちらも意識して使うように指導が必要だ。

うえむらさんは、ボイストレーニングはスポーツと一緒だと話す。
「声帯も筋肉ですし、横隔膜も筋肉です。使わなければ硬くなって動きにくくなります。地声ばかり出していると裏声が出なくなりますし、その逆も。一方で、訓練すれば動くようになり、声量が出て音域も広がります。先日も、地声しか出せなかったご年配の方がトレーニングを重ねて、裏声で高音が出せるようになったんです。思わず二人で『キャー』って喜んだくらい(笑)」

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文/ 佐藤雅子
photo/ 村上一光