今月の音遊人
今月の音遊人:AIさん「本当につらいときも、最終的に救ってくれるのはいつも音楽でした」
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今月の音遊人:小野リサさん「ブラジルの人たちは、まさに『音で遊ぶ人』だと思います」
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2015.9.1
tagged: ボサノヴァ, 小野リサ, アントニオ・カルロス・ジョビン, ジョアン・ドナート
1989年のデビュー以来、ボサノヴァを歌い続ける小野リサさん。2013年には日本でのボサノヴァ普及の功績に対し、ブラジル最高勲章のひとつであるリオブランコ国家勲章を受勲。日本のボサノヴァブームの立役者である小野さんにお話をうかがいました。
アントニオ・カルロス・ジョビンの『イパネマの娘』ですね。演奏するのを含めれば、ですけど。今まで何百回、何千回歌ったかわかりませんが、いつでも新鮮に歌えるんです。この曲には軽快さもあるし、メランコリーもある。その時の自分の気持ちを映し出してくれるような気がします。この歌はほんとうに多くの人が歌っていますが、人によっても味わいが違います。ですから何回聴いてもまったく飽きることがありません。
そういえばボサノヴァを聴き始めた中学生の頃、ジョビンのアルバムを買いに銀座のヤマハに行ったことを覚えています。当時はボサノヴァのアルバムが買えるお店があまりありませんでした。都内では渋谷のレコード屋さんか、銀座のヤマハくらいでしたので、お小遣いをためてはよく銀座にジョビンやジョアン・ジルベルトなどのブラジルのレコードを買いに行きました。
音楽は私にとって生活の一部ですね。演奏も聴くことも大好きですが、「聴く」で言えばヘッドフォンステレオが発売された時の衝撃が忘れられません。それまで音楽は家でスピーカーの前で聴くか、自分で演奏する以外にはなかったんです。でもある日突然、外で歩きながら聴けるようになった。初めて外で音楽を聴いたとき、自分の視野が急に広がって「全部私の空間!」みたいな気分になりました。
「演奏」に関しては、中学生の頃、ブラジル音楽の演奏家になりたいと思い、1日に8時間以上、寝る時と食べる時以外はギターを弾いていましたが、練習というつもりはなく、とにかく毎日楽しくてしかたありませんでした。そしてプロになった今も、音楽を作ることが楽しいんです。そう思うと音楽は私自身の一部と言ってもいいかもしれません。
ジョアン・ドナート(※1)です。彼はとにかくずっと遊んでいるみたいに音に反応して、ケラケラ笑いながら音楽を作っているんです。アントニオ・カルロス・ジョビンもそうでした。ジョビンの家に行ったら、いきなりピアノでコードをジャーンと鳴らして「チャイコフスキー!」って叫んでニコニコ笑っている。彼らのような天才は、きっと子どものようなピュアな感性をそのまま大切にしているんだと思うんです。だから自然の音にも敏感で、普通の人なら気にとめないような音、たとえば鳥の鳴き声を聞いても彼らはそこから何かを感じ、インスピレーションを得て、メロディに昇華してしまうんです。
でもそういった天才たちだけでなく、ブラジルでは普通の人たちも、音で遊んでいる気がします。バーなどにサンバを演奏する流しのミュージシャンたちがやって来ると、そこで飲んでいる人がほとんど立ち上がって踊り始めるんです。もうカラダが自然に動いてしまう。まさに「音で遊ぶ人」だと思います。
※1 ジョアン・ドナート:ボサノヴァ黎明期から活躍する天才ピアニスト。1995年、小野リサはジョアン・ドナートと共にアルバム『サウダージ』を制作した。
小野 リサ〔おの・りさ〕
ブラジル・サンパウロ生まれ。10歳までブラジルで過ごし、15歳からギターを弾きながら歌い始める。1989年デビュー。ナチュラルな歌声、リズミカルなギター、チャーミングな笑顔で瞬く間にボサノヴァを日本中に広める。ボサノヴァの神様、アントニオ・カルロス・ジョビンなど著名なアーティストとも共演。日本におけるボサノヴァミュージシャンの第一人者としてその地位を不動のものにしている。
小野リサオフィシャルサイト http://onolisa.com/
文/ 池谷恵司
photo/ 福知彰子
tagged: ボサノヴァ, 小野リサ, アントニオ・カルロス・ジョビン, ジョアン・ドナート
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