Web音遊人(みゅーじん)

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

展示室の楽器の維持・管理も学芸員が担う仕事のひとつだ。毎日、展示室を見回りながら、楽器の向きや状態をチェックする。
そして、月に2度、館内整理の日に待っているのが楽器の掃除だ。
「ガラスケースに入れていないので、楽器にホコリがつくんです。大きくて重いものもあれば繊細な楽器もあって、神経と体力を使う仕事です。仏具用のはけでホコリをはらうなど、道具も工夫しています」

世界中の楽器が集まっているうえに、現在はもう作られていない楽器も数多くある。浜松市楽器博物館では演奏家に依頼して収蔵品の演奏を録音し、音源として残している。後世に音を残していくことも大きな役割であるからだ。
「先輩方の姿を見て、自分が展示品のことを理解していなければ、お客さまにも伝わらないと気づきました。さまざまな角度から情報を集め深く理解したうえで、専門の用語を知っていてもそれを使わず、誰でもわかる言葉と順序でお話しするようにと、心掛けています」
落語が好きで寄席にも足を運んでいるという松尾さん。わかりやすい言葉と緩急のあるトークで、知られざる楽器の魅力をこれからも伝えていく。

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

何百年も前の楽器ながら、修復等により音を出せるものもある。大切な資料なので、楽器に触れるときのために白手袋を常備。時計やネックレスなどの装飾品も外している。

Q.学芸員の仕事の魅力は?
A.リードオルガン協会の会員の方がリードオルガンのギャラリートークを見学されていて、楽器についてお話を伺えたことがあります。私たちは多くの楽器について広く学んでいますが、ときに、造詣が深い方や専門家の方から深いお話を聞けるのも楽しみなことのひとつです。

Q.学芸員の仕事で大変なことは?
A.楽器の管理ですね。世界中から楽器が集まっていますので、楽器ごとに適した温度や湿度は違います。でも、空調は楽器ごとには変えられません。そうしたなかでコンディションをどのように整えていくのかはむずかしい課題です。また、ひび割れなどが起きた場合、オリジナルの状態を維持すべきか、修復して楽器としての機能を保つべきか、その都度悩むところです。

Q.学芸員にならなかったら、何の仕事をしていたと思いますか?
A.音大で教員免許を取ったので、音楽の先生になっていたかもしれません。小学校から中学校までピアノを習っていて、中学、高校時代には吹奏楽部でフルートを吹いていたんです。フルートはいまも続けていて、演奏活動もしています。

Q.趣味で楽しんでいることは?
A.落語が好きなので、機会があれば寄席などに行っています。大学の寮の近くにあった図書館で落語のCDを聴いたのがきっかけです。朝から夜まで一日中、浅草の演芸場で過ごしたこともあるんです(笑)。普段の仕事とはまったくジャンルの違うものなので、気持ちが解放されますね。美術館や博物館にもよく行っていて、用事で東京に行った折など、上野の美術館などに足を伸ばしています。

Q.美術館や博物館を訪れたとき、どこに着目しますか?
A.それはもう、いろんなところに。壁が移動するものかどうか、展示台が動かせるか、どこから人が入るのかなどなど。大きな展示物があると、どこから搬入したんだろうなどと気になります。絵画などの展示で、展示室の角に人がたまりすぎないよう、余裕を持って配置してあったりすると、「あー、配慮があってうれしいな」と感じます。「これは使えるな」ってアイデアを参考にすることもありますね。

Q.プライベートでよく聴く音楽は?
A.最近はフルートの作品を聴くことが多いですね。洋楽やポップスも聴きますが、結局クラシックを聴くことが多いです。フルートは、フランスのフルート奏者ジャン=ピエール・ランパルや工藤重典さん、それに自分の先生のCDを聴くことが多いです。

Q.最近行ったコンサートは?
A.ピアノコンサートが多いですね。あとはオーケストラも。コンサートではないけれど、落語ももちろん行きますし、歌舞伎やオペラも観に行っています。やはり、ライブを観ることも大事だなあと感じています。CDでは自分が聴きやすい音量で聴きますが、生音だと音量は楽器によってずいぶん違うんです。「意外と小さいんだな」って気がつくこともあるくらい。それに、会場の雰囲気や演奏家の醸し出す雰囲気やオーラを感じられるのは、ライブならではですから。

 >前のページに戻る

 

特集

ケイコ・リー

今月の音遊人

今月の音遊人:ケイコ・リーさん「意識的に止めなければ、自然に耳に入ってくるすべての音楽が楽譜として浮かんでくるんです」

2138views

音楽ライターの眼

連載22[ジャズ事始め]上海というアジアの拠点を失った“日本のジャズ”が次に求めたスタイル

1938views

アコースティックギター「FG9」

楽器探訪 Anothertake

力強さと明瞭さが拓くアコースティックギターの新たな可能性

2168views

日ごろからできるピアノのお手入れ

楽器のあれこれQ&A

日ごろからできるピアノのお手入れ

63762views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12103views

一瀬忍

オトノ仕事人

ピアノとピアニストの絆を築く、アーティストリレーションの仕事

3172views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

20337views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

8413views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12576views

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

われら音遊人

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

10573views

山口正介 Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

マウスピースの抵抗?音切れ?まだまだ知りたいことが出てくる、そこが面白い

5655views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29150views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

4390views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14485views

音楽ライターの眼

日本のギター界を牽引する4人が登場!渡辺香津美と押尾コータローが絶妙な呼吸で聴かせた、圧巻の「ボレロ」/Acoustic Guitar Festival Special Concert Vol.2

4401views

オトノ仕事人

歌、芝居、踊りを音楽でひとつに束ねる司令塔/ミュージカル指揮者・音楽監督の仕事

2658views

われら音遊人ー021Hアンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:元クラスメイトだけで結成。あのころも今も、同じ思いを共有!

4858views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

22813views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

13038views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

5481views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

2602views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5225views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24792views