Web音遊人(みゅーじん)

デビュー30周年、宝塚時代から現在までの軌跡を辿る名刺代わりの新作『Treasure~私の宝物~』/姿月あさとインタビュー

デビュー30周年、宝塚時代から現在までの軌跡を辿る名刺代わりの新作『Treasure~私の宝物~』/姿月あさとインタビュー

宝塚歌劇団の歴代トップスターの中でも屈指の歌唱力を誇る、姿月あさと。舞台生活30周年を記念した最新アルバム『Treasure~私の宝物~』を聴けば、彼女が万能の歌い手であることがわかるはずだ。難易度の高いミュージカルナンバーを激情的に歌い上げたかと思えば、シャンソンを語るように紡ぐ。さらには、クラシックからJ-POPまで。「30年という歴史の中でいろいろな音楽に携わってきました。昔には戻れないし、戻りたいとも思わない。今の自分にしかできないものを残せたかなと思います」。積み重ねてきた時の価値が詰まった一作だ。

宝塚音楽学校を経て歌劇団に入団したのが、30年前の1987年。小さい頃から習っていたピアノやバレエの素養を生かし、宝塚の舞台鑑賞に夢中になった中学時代の憧れを実らせた。まず花組に配属され、月組に組替えになると主要な役やソロパートを担うように。そして1998年、新たに創設された宙組の初代トップスターに就任する。

選ばれるべくして選ばれたスターの歩みに見えるが、「トップになるなんて一度も考えたことはない。舞台で歌い、踊るということだけが憧れだったから」と顧みた。月組で抜擢を受けた時も、「クリアしていくのに必死だった」と言い、宙組トップを打診された時は何度も固辞し続けた。「私には無理だと思ったし、怖かった。65年ぶりの新しい組。普通にトップになるだけでも重いことなのに……」

新しい組の道のりは、足跡のない雪道を歩くようだったが、志を同じくする組の仲間たちに支えられたという。そして、このトップ時代にかけがえのない作品との出合いがあった。オーストリア皇妃の生涯を描いたミュージカル『エリザベート—愛と死の輪舞—』だ。主人公、黄泉の帝王・トートを演じたとき、「テクニック的にとても複雑で、音楽の楽しさと同時に難しさを知りました。男役としてではなく一人の女性、姿月あさとという人間として、いろいろな歌に携わっていきたいと思うきっかけになった作品でした」

宙組初代トップスター・姿月あさとの代表作は、退団を決意する契機になった作品でもあった。別れを惜しむファンにとっては複雑な状況かもしれないが、一人の音楽家としては純粋で前向きな選択だったのだろう。「宝塚にいたからこそ色々なことを学べたし、まだまだ宝塚の中でも勉強することはありましたが、一人の人として音に触れていきたい、と気持ちは未来に向かっていました」。

デビュー30周年、宝塚時代から現在までの軌跡を辿る名刺代わりの新作『Treasure~私の宝物~』/姿月あさとインタビュー

退団後は、三枝成彰、秋元康、石井竜也など、大物作家らのプロデュースで、幅広い歌手活動を展開した。近年は、シャンソン界からのラブコールが多く、今年2017年は日生劇場での『越路吹雪に捧ぐ』やNHKホールでの『パリ祭』など大規模な音楽祭に相次いで出演。「シャンソンの魅力は、年を重ねるほど募る、人の憂いや悲しみ、孤独。宝塚音楽学校では、オペラ、シャンソン、カンツォーネ、合唱などの授業がありますが、当時15歳の時に歌った『愛の讃歌』と、今歌うもの、そして80歳の時では、同じ曲でも全然違うと思います」。5年前にシャンソンを薦めてくれたのが、秋元康であったといい、「やはり、先を読める方なのだなと改めて思いました」と実感を込めて語った。

1年半前(「2015年11月」に出した前作『Chante~シャンテ~』は、初めてシャンソンを特集したアルバムで、「歌い上げずに“語る”ということがやっとできるようになったと思います」という自信作。一方で、そうした抑制を効かせた深みのある表現に対し、「声が出なくなってしまったのでは?」と誤解されることもあるという。
「全然、出ますよ」。こう、いたずらっぽく笑って断言できるのは、まさに最新作『Treasure~私の宝物~』で『エリザベート—愛と死の輪舞—』の難曲『最後のダンス』を完璧に歌い上げているからだ。「私のことを知らない方が聴いてくださったとしても、この1枚で、宝塚にいた自分も今の自分もわかっていただけると思う。男役を経験したことによって低い声が出るようになった。その後も、自分の良さを模索し続けていろいろな表現に挑むうちに、それが全部引き出しになった。一つのジャンルに絞ることができないのが悩みでもあるけれど、お料理の素材みたいに、私のここをこうして使ってみたいなと思う音楽家やプロデューサーの方に出会いたい。名刺代わりの1枚です」

歌っている時の心境を問うと、「“ワープ”ですね」という独特の言葉が返ってきた。歌の世界に没入するということだろう。聴く立場としても、アルバム『Treasure~私の宝物~』をまわせば、収録された1曲1曲の奥深い世界の旅を味わうことができるはず。30周年という節目の2017年は、記念のソロコンサートも盛大に行われる。また、シャンソンやタンゴを特集するコンサートにメインの出演者として参加するほか、ゲスト出演するコンサートも多数予定されている。

■アルバムインフォメーション

『Treasure〜私の宝物〜』
Treasure〜私の宝物〜
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
発売日:2017年4月26日
価格:3,000円(税込)
詳細はこちら

■姿月あさと 30th Anniversaryコンサート in Magnolia 〜アコースティック〜

日時:2017年9月18日(月・祝)13:00開演/16:00開演
会場:逸翁美術館マグノリアホール (大阪・池田市)
料金:6,000円(税込/全席指定)
詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:大石昌良さん「僕がアニソンと出会ったのは必然だったんだと思います」

1998views

音楽ライターの眼

ボズ・スキャッグス、ソウル&ブルースと都会派AORを兼ね備えた2019年5月の来日公演

3843views

“音を使って音楽を作る”音楽の冒険を「ELC-02」で

楽器探訪 Anothertake

音楽を楽しむ気持ちに届ける「ELC-02」のデザインと機能

6730views

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ

楽器のあれこれQ&A

購入前に知っておきたい!電子ピアノを選ぶときのポイントとおすすめ機種

22502views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

6209views

オトノ仕事人

プラスマイナス0.05ヘルツまで調整する熟練の技/音叉を作る仕事

20220views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

9999views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

3430views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

7486views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:バンドサークルのような活動スタイルだから、初心者も経験者も、皆がライブハウスのステージに立てる!

5934views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

4065views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

24357views

おとなの楽器練習記 レ・フレール

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ピアノデュオ『レ・フレール』がトロンボーンに挑戦!

8299views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

22601views

音楽ライターの眼

連載19[ジャズ事始め]ジャズのフィーリングを体得した穐吉敏子が「フィリピン人のようだ」と褒められたワケ

1279views

梶望さん

オトノ仕事人

アーティストの宣伝や販売促進など戦略を企画して指揮する/プロモーターの仕事

8069views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

4400views

ヤマハギター50周年を機にアコースティックギターのFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギターFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

16940views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

6552views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

あれから40年、おかげさまで「音」をはずさなくなりました

3471views

楽器のあれこれQ&A

いつも清潔にしておきたい!ピアニカのお手入れ、お掃除方法

157428views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

9131views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

24357views