Web音遊人(みゅーじん)

レジェンドも旬の若手も登場。時代の先端を奏でるジャズを聴きたいなら真夏の音楽フェス「東京JAZZ」へ。

「21世紀のジャズとは何か?」
ミュージシャンでも簡単に答えが出せない……といわれるほど多方向に発展し、レジェンド級のミュージシャンたちが圧巻の演奏を聴かせ続ける一方、ジャンルのボーダーレス化によって若い世代のミュージシャンたちが先鋭的なパフォーマンスを見せてくれる、現在のジャズ・シーン。2002年にスタートし、2019年で18回目を迎える「東京JAZZ」は、冒頭の問いに対するヒントを提示し続けてきたフェスティバルだ。

ハービー・ハンコックやチック・コリアなど、名だたるベテランが出演する一方、スライ&ファミリー・ストーンや2018年のコーネリアスほか、ジャズにカテゴライズされないアーティストも登場して話題をさらい、常に新しいリスナーへ刺激を与えてきた。幅広い世代の日本人ミュージシャンや、若い世代の旬なミュージシャンが登場するのも「東京JAZZ」ならではだ。そういったラインナップは「国境を越えて、世代を超えて」というスローガンの精神そのものであり、「東京JAZZに行けばジャズの幅広さを知ることができる」という声も多い。

2019年8月31日(土)・9月1日(日)に、東京・渋谷のNHKホールと周辺のエリアで行われる「東京JAZZ」も、多種多様なアーティストが集合。「今年もまた来てくれた!」と喜びの声があがるレジェンドから、「ようやくライヴで聴ける!」と期待の声が大きい初登場のアーティストまで、刺激に満ちた2日間(それぞれ昼夜の計4セット)なのだ。

まず特筆すべきはジャズ・ファンにおなじみのチック・コリアだろう。今回は、オリジナルメンバーで20年ぶりの来日となるアコースティック・バンド(31日・夜)と、常に進化を遂げているエレクトリック・バンド(1日・夜)の両方が聴けるというスペシャル企画。長く聴き続けてきたリスナーも、彼の音楽に興味津々の若い世代のリスナーも魅了することは間違いない。

チック・コリア・エレクトリック・バンド with フランク・ギャンバレ、エリック・マリエンサル、ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル

それぞれのセットに話題のグループが出演することも、未知のアーティストとの出会いを演出する「東京JAZZ」らしい。アコースティック・バンドと同じセットには、チックに見出されたベーシストのアヴィシャイ・コーエンが彼のトリオを率いて登場。エレクトリック・バンドのセットには、グラミー賞の常連となりつつある変幻自在の音楽集団、スナーキー・パピーが出演し、ホールの空気をヒートアップさせてくれるはずだ。

(写真左)アヴィシャイ・コーエン(写真右)スナーキー・パピー

今回、特に若い世代のリスナーが期待しているのは、2018年にアルバム『Heaven and Earth』を大ヒットさせたカマシ・ワシントンだろう(1日・昼)。ソウルやファンク、ヒップホップ、クラシック(近現代音楽)など、他ジャンルの音楽を包括するような彼の音楽は「ジャズがここまで来た」と実感できるクオリティ。最先端のジャズに触れたいという方ならカマシはマストだ。同じセットには「東京JAZZ」初登場となるサクソフォンのチャールズ・ロイド。今回は若い世代のミュージシャンたちとクインテットを組み、安定したパフォーマンスを繰り広げてくれる。

(写真左)カマシ・ワシントン(写真右)チャールス・ロイド

そして、31日・昼のオープニング・セットに登場して2019年の「東京JAZZ」を盛り上げてくれるのは、カマシらに先んじてR&Bやヒップホップといったテイストをジャズと融合させたミシェル・ンデゲオチェロ。さらには日本を代表するシンガーMISIAが、ニューヨークを拠点に活動するトランペッター黒田卓也と共演し、自身の曲を新鮮なアレンジで披露してくれる。MISIAはミシェルのこれまでの音楽活動に注目し、リスペクトしているといい、その2人が並び立つステージにも期待したい。

(写真左)ミシェル・ンデゲオチェロ(写真中)MISIA(写真右)黒田卓也

NHKホールでの4セットだけではなく、ホール周辺の代々木公園ケヤキ並木(自由に行き交える道)や公園にもステージが組まれ(入場無料)、国内外の注目ミュージシャンたちが次々に演奏を聴かせてくれるというという趣向も。新進気鋭のプロ・ミュージシャンから大学のジャズ研究会まで、バラエティ豊かな顔ぶれが揃い、2019年の音楽フェスで話題になったグループも登場するなどネクスト・ジェネレーションを楽しめる場でもあるのだ。

2018年ケヤキ並木で開催された様子

夏休み最後の週末とあって、ファミリーで気軽にジャズを楽しむもよし(飲食の屋台なども豊富!)、街や代々木公園への散策途中で立ち止まるもよし。渋谷で愛される真夏の祭典「東京JAZZ」は、今年もアツい音楽を届けてくれる。

■東京JAZZ

●NHKホール
2019年8月31日(土)昼公演:12:30~、夜公演:18:00~
2019年9月1日(日)昼公演:12:30~、夜公演:18:00~
SS券:12,800円、S券:9,800円、A券:7,800円、B券:3,800円/SS1日通し券:24,600円(同日の昼夜公演)
※チケット発売の状況はオフィシャルサイトでご確認ください(券種・公演によって販売終了もございます)

●代々木公園ケヤキ並木
2019年8月30日(金)~9月1日(日)※入場無料
オフィシャルサイトはこちら

特集

今月の音遊人:清塚信也さん

今月の音遊人

今月の音遊人:清塚信也さん「音楽はあやふやで不安定な世界。だからこそ、インテリジェンスを感じることもあります」

12877views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#041 東西冷戦の最前線で生まれた西側エンタテインメントの真骨頂~エラ・フィッツジェラルド『マック・ザ・ナイフ~エラ・イン・ベルリン』編

824views

reface

楽器探訪 Anothertake

個性が異なる4機種の特徴、その楽しみ方とは?

8421views

バイオリンを始める時に知っておきたいこと

楽器のあれこれQ&A

バイオリンを始める時に知っておきたいこと

9384views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

13436views

オトノ仕事人

音楽をやりたい子どもたちの力になりたい/地域音楽コーディネーターの仕事

10249views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

7577views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

6589views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

23690views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8734views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

8913views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26835views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

10366views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33444views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#024 ジャズを“復古”させた圧倒的な才能の歌声~サラ・ヴォーン『枯葉』編

1297views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

7262views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:人を楽しませたい!それが4人の共通の思い

7140views

楽器探訪 Anothertake

存在感がありながら他の楽器となじむシンフォニックなサウンドが光る、Xeno(ゼノ)トロンボーンの最上位モデル

6254views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

6290views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

6344views

ギター

楽器のあれこれQ&A

ギター初心者のお悩みをズバリ解決!

1115views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8045views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10857views