今月の音遊人
今月の音遊人:藤井フミヤさん「音や音楽は心に栄養を与えてくれて、どんなときも味方になってくれるもの」
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音楽家からの「言葉のギフト」が胸に響く1冊/新版 音楽家の名言~あなたの演奏を変える気づきのメッセージ~
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2019.8.19
音楽家たちの珠玉の言葉を集めたシリーズ完全版「新版・音楽家の名言」は、言葉の力を実感させてくれる書だ。著者の檜山乃武は「今、読み返してみると、優れた音楽家や演奏家が発した言葉というものは、その作品やパフォーマンスと同じくらい、力強いメッセージの光を放っていることに気づきます。それは作曲家も演奏家も私たちと同じ人間だからです」と綴っている(あとがきより)。
「決して順風満帆の日々ばかりではなかったであろう日々に、悩み、傷つき、苦しみ、葛藤しても、音楽家たちは音楽の力によって苦難を乗り越えた。だからこそ、言葉は真実の声、慰めの声となって、読む人の心を強く打つのではないか」とも。
バッハ、シューベルト、ツェルニー、ドビュッシーほかの言葉が並ぶ、第1章「音楽とは何か?」より、いくつかの言葉を紹介しよう。
「音楽には幅広い翼がある(ベルリオーズ)」
「感動とは人間の中にではなく、人と人の間にあるものだ(フルトヴェングラー)」
また、手紙や文書などにたくさんの言葉を残したベートーヴェンとモーツァルトの言葉からは、とくに多くの名言を取り上げている。
「この世でなすべきことは、たくさんある。すぐになせ!(ベートーヴェン)」
「音楽においてもっとも不可欠でもっとも難しく、主要な事柄はテンポだ(モーツァルト)」
ここではきっと、作品を理解するためのヒントが行間から読み取れるだろう。
演奏やレッスンを変えるきっかけとなりそうなのが第2章。
「毎朝、非常にゆっくりのテンポで練習し、指をしなやかにしなさい(ショパン)」
「指が5本ついている手がふたつあると思うな。身体から10本の指が生えていると思え(リスト)」
基本の大切さを改めて教えてくれる言葉の数々……。さらには、
「親のほうが子どもから得ることがよっぽど多い。それと同じで、教えるということはとても勉強になる(小澤征爾)」
といった言葉にも奥深いテーマが潜んでいる。
第3章には、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、そしてロマン派の名曲をどう弾くかのヒントが散りばめられている。
「バッハの『平均律クラヴィーア集』を毎日糧とすること。そうすれば、間違いなく、立派な音楽家になれる(シューマン)」
「シューマンの初期の作品は、当時としてはアヴァン・ギャルドといえるほど進歩的です(ブレンデル)」
そして、音楽をあきらめかけている人への励ましになる言葉、読む人が前を向いて音楽と生きるための言葉が並ぶ章へと続いていく。
ラストを飾るのは、偉大なチェリスト、パブロ・カザルスが子どもたちに語った感動的なメッセージ。まるでカザルスが傍にいるかのように感じる力強い一言一言が、深く胸に響く。
このほかにも、ネイガウス、ギーゼキング、ホロヴィッツ、グレン・グールド、フジコ・ヘミング、内田光子といったピアニスト、カラヤン、朝比奈隆、齋藤秀雄ほかの指揮者、さらには東儀秀樹、マリア・カラス、デューク・エリントンなど、時代やジャンルを問わず抽出された名言に触れることができる。言葉を読み解くうえで大いに役立つコラムも簡潔で読みやすい。
全方向から音楽を見つめ直すきっかけをくれる名言集。音楽と離れてしまいそうになったとき、自分の演奏に自信がもてなくなったとき、どこからでもページを開いて、ゆったりと読んでほしい。音楽好きな大切な人へのプレゼントにも最適だ。
タイトル:新版 音楽家の名言~あなたの演奏を変える気づきのメッセージ~
著者:檜山 乃武
発売元:ヤマハミュージックメディア
発売日:2019年6月23日
料金:1,500円(税抜)