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ギリシャ出身のハード・ブルース・ギタリスト、スタヴロス・パパドポウロスがロリー・ギャラガー・トリビュート作を発表
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2020.1.30
tagged: ギタリスト, 音楽ライターの眼, スタヴロス・パパドポウロス
ギリシャ出身のポピュラー音楽アーティストといえば、映画『炎のランナー』でおなじみヴァンゲリスと彼の在籍したアフロディーテズ・チャイルド、元祖(?)メガネっ娘歌手ナナ・ムスクーリ、ファイアーウィンドやオジー・オズボーン・バンドで活動したガスGなどが有名だ。エクストリーム・メタルのファンだったらセプティックフレッシュやロッティング・クライストなどを知っているだろう。
そんなギリシャの音楽シーンから世界に羽ばたく新しいギター・ヒーローが、スタヴロス・パパドポウロスである。
1974年1月13日にギリシャ東部の港湾都市カヴァラで生まれたスタヴロスは、凄まじいほどのハード・ワーキングぶりで頭角を現してきた。彼はスーパー・ヴィンテージ、フリーロック・セインツ、ハード・ドライヴァー、レヴォリューション・ハイウェイ、ユニヴァーサル・ヒッピーズなどのバンドを次から次へと結成して活動してきたが、2019年12月にはソロ・アルバム『Spirits On The Rise』、ハード・ロックとギリシャ古典音楽をクロスオーヴァーさせたチルドレン・オブ・エージアンとしての『Mythologica』、インストゥルメンタル・ハード・ロック・バンドのストーンド・オリンパスの『Mystic Alchemy』という3枚のアルバムを同時発表するという離れ業を成し遂げている。
もちろん単に枚数だけ多いわけではなく、どのアルバムでも火を噴きそうなリード・ギターと雨のような哀メロを聴くことが出来る。常にトップ・クオリティが保証されているのがスタヴロスの作品なのだ。
ハード・ロックとブルースの両輪を駆って突っ走ってきたスタヴロスの音楽の原点は7歳のとき、4つ年上の姉が聴いていたディープ・パープルの『ファイアボール』だったというが、衝撃を受けたのは15歳のときに聴いたロリー・ギャラガーの『コーリング・カード』(1976)だった。
スタヴロスはこう語っている。
「ロリーのアルバムにはありったけの魂が込められていた。初めて聴いたとき、「ムーンチャイルド」に引き込まれたよ。ミュージシャンとして感銘を受けたのは『トップ・プライオリティ』(1979)だった。すべてを曝け出すギター、ハード・ロッキンな曲とプロダクションを聴いて、自分の魂が空に昇り、震えるのを感じたよ。現代の音楽シーンには、こんなアーティストが必要なんだ」
そんな敬意と愛情が実を結んだのが、“シャドウプレイ・プロジェクト”として制作した『ペイント・ザ・スカイズ・ブルー・フォーエヴァー(トリビュート・トゥ・ロリー・ギャラガー)』だ。日本では2020年1月29日にリリースされたこのアルバムは、全13曲すべてがロリーの曲、あるいは彼がライヴで演奏してきた曲である。
「ムーンチャイルド」「ウェイワード・チャイルド」「フォロー・ミー」など、スタヴロスが影響を受けた1970年代中盤のハード・ロック調ナンバーが軸となっているのに加えて、1970年代前半の名曲「100万マイルも離れて」、テイスト時代の「セイム・オールド・ストーリー」、ジュニア・ウェルズの「メッシン・ウィズ・ザ・キッド」(ロリーは『ライヴ・イン・ヨーロッパ』(1972)でカヴァー)など、ロリー初心者にも年季の入ったファンにも嬉しい選曲。オリジナルの味わいを生かしながら、スタヴロスならではの持ち味を加えたアレンジも絶妙だ。
スタヴロスの数々のバンドやプロジェクトでは、彼がさまざまなミュージシャンと合体することで起こす化学融合も魅力となっている。レヴォリューション・セインツでは、ザ・カルト〜ガンズ&ローゼズ加入前のマット・ソーラムがドラマーだったホークやフィフス・エンジェル、マシ、デヴィッド・エレフソン率いるエンジェルズ・オブ・バビロンなどで歌ってきた実力派のデヴィッド・フェフォルトがヴォーカルを聴かせていたが、シャドウプレイ・プロジェクトでは、ギリシャのハード・ブルース・ロックで知られるサキス・ドヴォリス・トリオのサキス・ドヴォリスが6曲で参加している。世界は広い。こんなヤツがいたのか!と驚嘆させられるのも、スタヴロスの作品を聴く楽しみのひとつだったりするのだ。
地元カヴァラで自ら運営する“フリーロック・スタジオ”でヒマさえあればレコーディングをしているというスタヴロスは、スタジオ作業のあまりの忙しさにもう3年以上ライヴをやっていないのだという。
2020年にも6月〜7月に2枚、さらに11月に2枚のアルバムを発表するというスタヴロス、その尽きることのない想像力の泉には仰天するしかないが、彼は「音楽のためなら必死で働くんだ。これが俺の人生だからね」と語っている。スタヴロス・パパドポウロスの豊潤なる音楽キャリアに、これからも注目していきたい。
シャドウプレイ・プロジェクト
『ペイント・ザ・スカイズ・ブルー・フォーエヴァー(トリビュート・トゥ・ロリー・ギャラガー)』
発売元:BSMF RECORDS
発売日:2020年1月29日
料金:2,400円(税抜)
詳細はこちら
山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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