今月の音遊人
今月の音遊人:佐渡裕さん「音楽は、“不要不急”ではない。人と人とがつながり、ともに生きる喜びを感じるためにある」
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厳選された一音一音がときめきを生む~ディズニー音楽を描いた珠玉のピアノ・ソロ曲集/加羽沢美濃『 ディズニー・ベスト・ セレクション』
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2020.9.18
tagged: ブックレビュー, ディズニー, 加羽沢美濃, ディズニー・ベスト・ セレクション
幼い頃からディズニーが大好きだったという作曲家・ピアニスト、加羽沢美濃。ディズニー音楽のピアノアルバム(CD)と楽譜集を手がけたのが1999年。以来、20年を超えて愛され続ける超ロングセラーとなった。そして今、ファンの熱い思いに応えるように誕生したのが、完全書き下ろしによる『加羽沢美濃ディズニー・ベスト・セレクション』。「チャーミングでキャッチーなメロディと、スケールの大きなオーケストレーションがディズニー音楽の最大の魅力」と語る加羽沢が、壮大なサウンドをピアノで絶妙に表現した珠玉のピアノ・ソロ曲集だ。
『美女と野獣』『星に願いを』ほかのリアレンジ4曲に、『アンダー・ザ・シー』『輝く未来』『彼こそが海賊』などの新作11曲を加えた本作は、繊細で美しいピアノの響きを生かす、加羽沢ならではの魅力にあふれている。
「ディズニー作品には、自由にアレンジさせてくれる懐の深さのようなものを感じる」という加羽沢。イントロや間奏、リズムアレンジなどに、オリジナルとは異なるエッセンスをバランスよく落とし込んだ。
「自分自身から出てきたものが原曲とどうなじむかは、面白くもあり、難しい部分でもあります。でも、作品とじっくり向き合って待つうちに、自然に呼び起こされるようにあふれてきたエッセンスが、イントロや間奏になりました」
ピアノだからこそできる表現が効果的に盛り込まれているのも特徴。そのひとつが音域だ。
「オーケストラも表現できる広い音域をもっていることがピアノの大きな武器です。たとえば海の深さも、上下の音域を同時に鳴らすことで広がりや深みを出すことができます。低音域から高音域まで、それぞれの魅力があるので、それをどう重ね、どのように緩急をつけるか。そして、作品のもつイメージを壊さずに、あまり難しくせずにピアノの魅力を発揮して……ということを、これまで多くのピアノアレンジを手がけるなかでも、考えてきたことかなと思います」
もうひとつ、音のからめ方でいかに深みを出していくかもアレンジのテーマだったという。
「ときには、和音や内声で音がぶつかり合ったりする部分もあります。でもそれは、音の繊細なうつろいや変化を表現した、とても胸キュンな部分。音域も含め、一音一音丁寧に選んだところです。ぜひ、ときめきの部分を探して、そういう感情を大切にして演奏していただけたらと思います」
音以外のアーティキュレーションなどにも、たくさんのメッセージを込めたという本作。新しいピアノ作品として長く親しみ、レパートリーを広げてくれる、大切な一冊となるに違いない。
ピアノソロ『加羽沢美濃 ディズニー・ベスト・セレクション』
著者:加羽沢美濃
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
価格:2,300円(税抜)
詳細と購入はこちら
加羽沢美濃(かばさわ・みの)
東京藝術大学大学院在学中にCDデビューを果たし、2017年にデビュー20周年を迎えた。作曲家として委嘱作品はもちろん、映画、舞台音楽などを手がけ、近年は作曲家の視点からクラシックをわかりやすく解説したレクチャーコンサート等を全国で行っている。活動は多岐にわたり、テレビやラジオにも出演している。
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