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テデスキ・トラックス・バンドがライヴ・アルバム『レイラ・リヴィジテッド』を発表。デレク&ザ・ドミノスの名盤『いとしのレイラ』を完全再現
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2021.7.15
tagged: 音楽ライターの眼, テデスキ・トラックス・バンドテデスキ・トラックス・バンド
スーザン・テデスキとデレク・トラックスのギターおしどり夫婦バンド、テデスキ・トラックス・バンドがライヴ・アルバム『レイラ・リヴィジテッド』を2021年7月に発表。
ブルースやサザン・ロック、ソウルなど、ジャンルを超えた音楽性で人気を博し、日本でも日本武道館を筆頭に大会場でライヴを行ってきた彼らだが、新作はなんとデレク&ザ・ドミノスが1970年に発表した『いとしのレイラ』をライヴで完全再現した作品だ。
2019年8月24日、ヴァージニア州アリントンで開催された“ロックン・フェスティバル”でのステージにはドイル・ブラムホール2世、そしてフィッシュのトレイ・アナスタシオがゲスト参加。豪華なラインアップで名盤からの楽曲をプレイしている。
エリック・クラプトンとデュエイン・オールマンのギターを中心に実力派ミュージシャン達が集結したデレク&ザ・ドミノスだが、デレクはこのバンドから命名されて、またスーザンは『いとしのレイラ』の発売日である1970年11月9日に生まれるなど、2人とも縁浅からぬ関係にある。
デレクは2006年、エリック・クラプトンの来日公演に同行したときに『テル・ザ・トゥルース』『恋は悲しきもの』『ハイウェイへの関門/キー・トゥ・ザ・ハイウェイ』『小さな羽根/リトル・ウィング』など、同アルバムからの曲をステージで披露してきた。最近では2019年6月、テデスキ・トラックス・バンドの日本公演でも『キープ・オン・グロウイング』を演奏している。2019年の“ロックン・フェスティバル”でも当初は『いとしのレイラ』から数曲のみをプレイする予定だったという。だがデレクが友人から「だったら全曲やればいいのに!」とアドバイスされたこと、またトレイがフィッシュでしばしば他アーティストの作品を完全再現するライヴを行ってきた(ピンク・フロイド『狂気』、ザ・フー『四重人格』、ザ・ローリング・ストーンズ『メイン・ストリートのならず者』など)ことも、彼らの背中を押すことになった。
『レイラ・リヴィジテッド』を聴いてみると、デレク&ザ・ドミノスのオリジナルへの敬意と、独自のアレンジを加えた個性が絶妙な形で融合しているのが窺える。デレクは生まれる前、母親のお腹にいる頃から『いとしのレイラ』を聴かされていたそうで、自らのギター・スタイルに多大な影響を受けている。エリックとデュエインのギター・プレイも身体に染みついており、大きくアレンジを崩すことはしていない。その一方で、デレク・トラックス・バンド〜テデスキ・トラックス・バンドで活動、ジョン・フルシアンテ、ジョン・メイヤーと共に“新世代3大ギタリスト”の一角と評価される個性的なスタイルを確立してきた彼ゆえ、単なるコピーに堕することがない。半世紀を超えながら愛され続ける名盤に新しい生命を吹き込んだ、まさに温故知新のニュー・クラシック・ロック・アルバムだ。
“ロックン・フェスティバル”で『いとしのレイラ』完全再現ライヴを行った後、世界各国のプロモーターから同様のオファーがあったというが、スーザンとデレクは「1回限定だから良いんだ」と固辞。自らのレパートリーを中心としたツアーを続けてきた。
新型コロナウィルスが蔓延した2020年初めから、すべての公演が中止あるいは延期になってしまったことで、彼らは自宅待機。ニュー・アルバムの曲作りと『レイラ・リヴィジテッド』のミックス、そして“ファイアサイド・セッション”と題したストリーミング・ライヴを行ってきた。そして1年以上の空白を経て、彼らは2021年6月11日、彼らが住むフロリダ州ジャクソンヴィルからツアーを再開している。
観客席に距離を置いたセーフ・ディスタンス・ライヴで、バンド編成も通常の12人でなく6人によるステージというイレギュラーなものだが、ライヴに飢えていた音楽ファンはこぞって集まり、多くの公演がソールド・アウト。2021年6月末の時点ではトラブルもなく、大きな盛り上がりを見せている。
2021年6月20日にはフー・ファイターズがニューヨークのマディスン・スクエア・ガーデンでワクチン接種済の観客を対象として1万5千人を集めた“通常”のライヴを行って話題を集めた。夏から秋にかけてツアーを再開するアーティストも多く、日本でも幾つかの夏フェスが開催される予定だ。変異株の発生、オリンピックによる感染リスク増大の可能性などが心配ではあるが、あまり性急になることなく、少しずつコンサート・ビジネスを復活させて欲しい。そして万全の体制で、再びテデスキ・トラックス・バンドを日本に迎えようではないか。『レイラ・リヴィジテッド』はその日までじっくり聴き込める、魅力に溢れるアルバムだ。
アルバム『レイラ・リヴィジテッド』
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
発売日:2021年7月16日
価格:4,070円(税込)
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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