Web音遊人(みゅーじん)

横山幸雄

ショパン作品は「もはや他人の曲を弾いている感じがしない」/横山幸雄インタビュー

デビュー30周年を記念する白熱のライブ盤をリリース

デビュー30周年を迎え、その芸術性にさらなる深みを増しているピアニスト横山幸雄が、ショパンの『ピアノ協奏曲』第1番と第2番、『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ』(ピアノ&オーケストラ版)を収めた30周年記念アルバムをリリースした。
これは、2022年1月に開催されたデビュー30周年記念コンサートのライブ盤。コンサートは、1991年のデビューコンサートと同じプログラム、同じ会場(サントリーホール)で行われた。共演は、デビューアルバムでもタクトを取った大友直人と、これまで何度も共演を重ねてきた東京都交響楽団。アルバムからは、華麗なピアニズム、そして繊細で美しいショパンのロマンティシズムがあふれ、この日、この演奏会だからこそ生まれたであろう熱気と感動が伝わってくる。

第12回ショパン国際ピアノコンクール(1990年)で、日本人として当時歴代最年少の3位入賞を果たしたのが19歳のとき。その翌年にデビューコンサートと日本縦断リサイタルツアーを行い、輝かしいデビューを飾った。以来、クラシック界のトップアーティストとして、つねに注目を浴びてきた横山は、「デビュー30周年の記念コンサートを、ライブ録音としてアルバムの形に残せたことをとても嬉しく思う」と語る。
「30年は長い時間だったと思う反面、演奏活動としては折り返し地点かもしれないという気もします。まだ道半ばという感じと、30年それなりに何かをやったなという両方の感覚がありますね。でも、ひとことで言うなら、あっという間でした」

デビューコンサートと30周年記念コンサート。いずれのステージでも演奏された2曲のピアノ協奏曲は、39歳で生涯を閉じたショパンが、19歳から20歳にかけて作曲した作品。
「どちらもショパンの若い頃の作品ですが、本当に書きたい自分の内面をそのまま表現したのが2番ではないかなと思います。より繊細でよりナイーブで、これが本来のショパンの姿ではないかという感じがします。一方、1番は輝かしく、華やかでロマンティックな作品。日本でもとても好まれていて、演奏される機会も多いですね」
記念コンサート、30周年記念盤、ともに第2番が第1番よりも前におかれたのはなぜだろう。
「2番の方が先に作曲された(第1番が先に出版されたことから、のちに1番とされた)ということもありますが、2番の繊細さは1番の前のほうがより伝わるのではないかという意味でも、最初に2番を聴いていただきたい、という思いがありました」

横山幸雄

全曲演奏することで見えてきた「ショパンの人生」

ショパン作品は、「もはや他人の曲を弾いている感じがしない」という横山。そこには、前人未踏のプロジェクトの存在があった。
20代で7年をかけてショパン全曲演奏に取り組み、ショパン生誕200年に当たる2010年を機に「入魂のショパン」シリーズ公演を開始。ショパンのピアノ独奏曲全166曲(2010年)、遺作を含むピアノ曲全212曲(2011年)をそれぞれ1日で、また室内楽曲、声楽曲も含めた全作品240曲を2日で演奏(2019年)と、さまざまな形でショパンの全曲演奏に挑んだ。近年は、厳選された作品をより深く探求する構成とし、2022年も円熟期のショパン作品をたっぷりと味わう、長大なショパン演奏会を開催している。
「ショパンは作品のほとんどがピアノ曲か、もしくはピアノを含む曲ですから、すべて自分で演奏できるわけです。それで、一生ショパンを弾き続けるのであれば、ショパンという人がどんな曲を書いたのかを知りたいと思いました。こうして全曲を通して見ると、ショパンの人生と社会情勢が作品から透けて見えるところもおもしろいと思いますね。ただ、どれも『こういう背景があってできた曲だろう』という次元をはるかに超えて、すばらしい作品だと思います」

ピアニストにとって、ステージに出る緊張感やプレッシャーは並大抵のものではないはず。長年、それに耐え続けるために心がけていることは?と尋ねると、「普段から平常心でいられること」だという。
「そのために、なるべくやりたいことをやって、美味しいものを食べて、好きな運動で気分転換をして、という感じでしょうか。でも自然体がモットーなので、おそらくもっとも気にしていないタイプだと思います(笑)」
着実にキャリアを重ね深化を続ける横山幸雄が、自身にとっての「原点の曲」を演奏したデビュー30周年記念アルバム。世界に閉塞感の漂う今だからこそ、ぜひ多くの音楽ファンに聴いてほしい。

■インフォメーション

アルバム『ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番 他』
横山幸雄
発売元:ソニーミュージック
発売日:2022年4月27日
価格:3,300円(税込)
詳細はこちら

facebook

twitter

特集

八代亜紀さん

今月の音遊人

今月の音遊人:八代亜紀さん「人間だって動物だって、音楽がないと生きていけないと思います」

9864views

安倍圭子傘寿記念演奏会

音楽ライターの眼

マリンバから生まれる多彩な音と可能性を堪能、多くの奏者が集った記念コンサート/安倍圭子 傘寿記念演奏会

5520views

NU1XA

楽器探訪 Anothertake

アコースティックピアノを演奏する喜びをもっと身近に。アバングランド「NU1XA」

2201views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!トランペットをうまく鳴らすコツと練習方法

114444views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

4343views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

歌うときは、体全部が楽器となるように/ボイストレーナーの仕事(前編)

23928views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

6394views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

8904views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14398views

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う 結成30年のビッグバンド

われら音遊人

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う、結成30年のビッグバンド

9051views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5266views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9589views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

8384views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

18841views

2019年4月、エリック・クラプトン来日。アメリカからイギリス、そして日本に流れ込むブルースの潮流

音楽ライターの眼

2019年4月、エリック・クラプトン来日。アメリカからイギリス、そして日本に流れ込むブルースの潮流

12042views

ステージマネージャーの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

ステージマネージャーひと筋に、楽員とともにハーモニーを奏で続ける/オーケストラのステージマネージャーの仕事(後編)

17168views

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

10217views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」

1views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

4277views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

4373views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

25768views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

8904views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

28960views