今月の音遊人
今月の音遊人:矢野顕子さん 「わたしにとって音は遊びであり、仕事であり、趣味でもあるんです」
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永遠の少女でいたい!恋愛偏差値を上げるおすすめのアルバム3枚
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2015.6.29
tagged: おすすめの3曲, 原田知世, カーリー・レイ・ジェプセン, コートニー・バーネット
原田知世が歌うラヴ・ソングのカバー・アルバム『恋愛小説』。全曲、洋楽でビートルズに始まり、ノラ・ジョーンズやジュリー・ロンドンにエルヴィス・プレスリー、メロディ・ガルドーにマルコス・ヴァーリと、時代もジャンルも多岐にわたる。様々な愛の物語が短編映画のように紡がれていく。なのに、一つのテーマに沿った物語集のように統一感があり、なんとも温かいものがジワジワと湧き起こる。電車の車窓を眺めているときのように、次々と風景は変わってもつながっていくような?いや、それよりもこれはラヴ・ソング集だから、誰かを思う気持ち…ときめきに始まり、やがて愚かさやら切なさやらを伴い、怒りや涙にも変わり、それでも誰かを思い続ける温かい気持ちを全10曲で表現していることの一つの流れなのだろう。そしてそういう気持ちを表現させたら、ピカイチだもん、知世ちゃんは。永遠に少女性を持ち続ける彼女の儚さみたいなものが、歌世界を輝かせる。ずっと聴いて、この世界に浸っていたら私の恋愛偏差値も上がるかもにゃあ(とか、書いてる時点でダメだけど)。
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ラヴ・ソングといえば、最近の洋楽ではアデルにしろテイラー・スウィフトにしろ、女性の歌うラヴ・ソングは軒並み別れた彼へのリベンジ・ソングみたいで強い強い。そんな中でカーリー・レイ・ジェプセンのラヴ・ソングは、実に普通の女の子然としてる。新作の『エモーション』もそうで、そこからの最初のシングル「アイ・リアリー・ライク・ユー」は大人の女性でも恋をすると女の子に戻って、バカげたことをしでかしたりすることを1980年代風サウンドに乗って歌ってる。ほかにもなかなか友達以上になれない男性への切ない思いとか、別れた彼が自分と別れたことを悔しがってほしいとか、そういうごく普通のラヴ・ソング。アメリカと並んでカーリー人気が高いのは日本だと聞いて、なるほど納得。恋に対して日本の女性たちは強さより切なさ主義だよねぇ。とはいえ、カーリーは実際には普通の人なんかじゃなく、相変わらずその声の魅力は突出して素晴らしい。この7色のシャボン玉みたいな声は、本当に本当に唯一無二だ。
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そんな2人とは一見、ぜんぜん違うロック娘がコートニー・バーネット。オーストラリア出身の27歳。グランジの神・カート・コバーンに比べられたりするんだもん、そりゃ強面な女性だ。スポークン・ワードよろしく吐き出すように繰り出す歌詞はボブ・ディランにも比べられ、物語性たっぷりで示唆に富み、頭の良さも並々ならぬ。カッコいい女。ギターの尖った音が似合う女。でもね、知世ちゃんにもカーリーの中にも、コートニーはいる。コートニーの中に知世ちゃんやカーリーがいる。彼女たちは少女性も強さも併せ持つんだ。コートニーも、人生のアイロニーを鋭い観察眼で切り取るだけじゃなく、実はラヴ・ソングばっかり歌ってるし。