今月の音遊人
今月の音遊人:村治佳織さん「自分が出した音によって聴き手の表情が変わったとき、音楽の不思議な力を感じます」
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至高の響きとともに音楽家たちの軌跡をたどる、壮大な旅を体験。『YAMAHA CFX PREMIUM CONCERT 清塚信也が音と映像で贈る、音楽とピアノの歴史』コンサートレポート
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2022.6.16
2022年5月15日、『YAMAHA CFX PREMIUM CONCERT 清塚信也が音と映像で贈る、音楽とピアノの歴史』が、立川ステージガーデンで開催された。ヤマハのコンサートグランドピアノ「CFX」の新モデルと清塚信也が一体となった至高の響き、そして音楽と美しく融合した映像が織りなすスペシャルなコンサートとなった。
東京・多摩地区最大規模を誇るライブエンターテインメントホール、「立川ステージガーデン」。ステージには巨大なスクリーンが配され、その中央には、約100人におよぶピアニストの意見を反映し、演奏者と一体になれるピアノを目指して開発された「CFX」の新モデルが佇む。
スクリーンに映し出された「2022」の数字は、時を巻き戻し「1722」へ。今回のイベントでは、清塚の演奏とともにチェンバロからフォルテピアノ、モダンピアノの時代へと歴史をたどる。クラシックの名音楽家たちの軌跡を追う壮大な旅の始まりだ。
ステージに現れた清塚が最初に演奏したのは、1722年に第1巻が完成したバッハ『平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 プレリュード BWV846』だった。荘厳な響きに、教会の映像や降り注ぐ黄金の光の演出が相まって神聖な雰囲気。聴衆を一気にバロックの時代へと誘う。
ここで、多くの観客が演奏とともに期待を寄せている清塚のMCがスタート。「今日の主役はあくまでもピアノ。こんな日まで笑いを取るか、最後まで悩みながらやっていきたいと思います」と会場を和ませる。ピアノや音楽の歴史に関するトークにも、ユーモアを散りばめた清塚の話術が光る。
続いては、古典派を代表するベートーヴェンの『ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章』。演奏が始まると、叙情的で慰めに満ちた響きに呼応するかのように、スクリーンが美しいヨーロッパの街並みを映し出す。強弱がダイナミックに変わる『ピアノソナタ第23番「熱情」第3楽章』は、ベートーヴェンがあたかも未来を予想したかのような曲。繊細かつダイナミックな演奏が、聴き手を魅了する。
そして、ロマン派の時代へ。繊細で詩的なリストの『愛の夢 第3番』と、華やかで力強いショパンの『ポロネーズ第6番 Op.53「英雄」』が続けて演奏された。ライバルでありつつ深い友情で結ばれていた2人。「巷ではショパンは繊細、リストは激しいと言われていましたが、お互い不服だったようです。ショパンの『ノクターン』を真似てリストが作曲したのが『愛の夢』ですが、途中で何度か激しいところが出てくるんですね。一方のショパンも自分だって激しい曲ができると作ったのが『英雄ポロネーズ』です」。そんな解説により、対比的な2曲はより味わい深いものになった。
さらに、近代音楽としてドビュッシー『ベルガマスク組曲より 月の光』の演奏が始まると、クリスタルのように透明感のある優しい響きに会場中が惹き込まれる。月の光に照らされた青い海原の幽玄な映像が音楽と融合し、心に深く染み入るパフォーマンスとなった。
休憩を挟んだ後半は、ガーシュイン『ラプソディ・イン・ブルー』からスタート。クラシックとジャズを融合させたスケールの大きい曲が、次の時代の到来を告げる。清塚が表現するそのダイナミズムは圧巻だ。
続いて、ドラマ『コウノドリ』で感動を呼んだオリジナル曲『Baby, God Bless』と『Brightness』を披露。魂を揺さぶるエモーショナルな音楽と映像で、会場を魅了した。
さらに、「動画の発達も音楽に大きな影響を与えた」と映画音楽の世界へ。映画『ひまわり』より『ひまわり』、映画『海の上のピアニスト』より『Playing Love 愛を奏でて』が演奏された。誰もが知る名曲だが、清塚とCFXがより深淵な世界を描き出していく。
「ピアノの音は二度と帰ってこない。一度押してしまうと音が絶対変わらないのがピアノの特徴であり、難しさです。一つひとつが遠くにいってしまう儚さと切なさがある」
そんな清塚の言葉を噛みしめたくなる最後の演奏曲は『フォーシーズンズ・メドレー』。『春よ、来い』『Summer』『枯葉』『戦場のメリークリスマス』と、ジャンルを超越したオールラウンダー清塚が次々と繰り広げる音の世界に聴き入るばかり。そして、その演奏に合わせて、スクリーンに鮮やかな四季の移ろいが映し出されていく。終盤は、雪の世界から再び春へ。よりスケール感を増した『春よ、来い』が壮大で力強く響き、「1722」に始まった旅はフィナーレを迎えた。
「最高級のピアノと最高級のピアニスト(笑)」という自身の言葉通り、音楽の深い知識と感性、そしてテクニックをあわせ持つ清塚と、彼の意のままに謳い奏でた新「CFX」。そしてそれらと融合した映像が生み出した贅沢な一夜となった。
関連ページ:清塚信也が奏でる新CFXで、時空を超えた遥かなる旅をする『YAMAHA CFX PREMIUM CONCERT 清塚信也が音と映像で贈る、音楽とピアノの歴史』
文/ 福田素子
photo/ 宮地たか子
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tagged: ピアノ, CFX, 清塚信也, コンサートレポート
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