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【優待チケット】ドビュッシーをめぐる趣向を凝らしたプログラム/ジャン=エフラム・バヴゼさんインタビュー
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2023.2.20
tagged: ヤマハホール, CFX, ジャン=エフラム・バウぜ
フランスの名ピアニスト、ジャン=エフラム・バヴゼ。1962年、ブルターニュ地方のランニオンに生まれ、パリ音楽院でピエール・サンカンに学び、ケルンのベートーヴェン国際ピアノコンクールに優勝して国際的キャリアをスタートさせた。フランスものはもちろん、ハイドンやモーツァルトなど古典派のレパートリーでも評価される。
2023年3月17日にバヴゼがヤマハホールのリサイタルで披露するのは、「自分でもとてもよい組み合わせだと誇らしく思う」というプログラム。
「実はこのプログラムは、ロンドンのウィグモア・ホールでの3シーズンのドビュッシーをめぐる演奏会シリーズの一つです(使用ピアノヤマハCFX)。さまざまな作曲家との関係性を探りながら組み合わせ、ドビュッシーがどこから来て私たちをどこに導くのかを示し、聴き手に発見をもたらすことを目指しています」
前半は、ドビュッシーと彼が影響を受けたショパン。両者の書いたバラード、ワルツ、マズルカ、タランテラを交互に聴くことで、一つの旅を感じて欲しいのだそう。
「ドビュッシーはもちろん、自作がショパンと交互に弾かれることを想定してはいなかったでしょう。しかしここでは演奏家としての自由な立場を生かし、プログラミングを工夫することで、あるアートを用い、もう一つの大きな別のアートを生み出すということをしてみたいと思いました」
そして後半は、戦後の音楽界をリードしたフランスの作曲家、ブーレーズの小品『12のノタシオン』より第7番『厳かに』ではじめ、ドビュッシー『12の練習曲』第1巻を続ける。
「ブーレーズが10代の終わりに書いた初期作品と、ドビュッシー最後のピアノ作品を組み合わせました」
バヴゼは生前のブーレーズと知己があり、本作もご本人の前で弾いたことがある。
「『12のノタシオン』はシンプルな音楽的アイデアに基づいていますが、最終的にはそれが発展して複雑で知的な楽曲となっています。実は私はこの作品に二つの作曲上のミスを見つけました。ブーレーズの前で演奏したときにそのことを伝えると、一つ目については、彼は私の指摘が正しいと認めてくれました。そこでスコアに“承認済み”と書き込みました。でも二つ目については、どうやら彼はちょっと気分を害したみたいでそこは直さなくていいというので、“却下”と書き込みました。私の指摘はどちらも正しいと思ったのですが(笑)。いすれにしてもこの作品からは、彼が20歳に満たない若さで、すでに先の音楽を見通していたことわかります」
あわせるドビュッシーのエチュードについては、「それまでの音についての見識を変えてしまった作品」だと話す。
「彼は音楽について根本から新たなアプローチをし、発明したことで、多くの作曲家のインスピレーションの源となっています。どの作品も“開く”には特別な鍵が必要です。ただドビュッシー自身には、ルールを壊しているとか未来の音楽を書いたという意識はなかったのがおもしろいところ。彼は、ショパンやシューマン、さらに遡ってフランスの17世紀の作曲家を尊敬していて、自分が好む自然な音楽を書いているだけだと話しています。でも現実には、革命を起こしてしまっているのです」
個性豊かな作品が求める音を鳴らすには、良いピアノの助けが必要だ。その意味でバヴゼが良い楽器だと感じるのは、どんなピアノなのだろうか。
「三つのポイントがあります。一つは音の均一性です。全音域の音が同質で、一つの家族から来ているイメージであってほしい。音が良くないなら、むしろ全音域良くない音のほうがいいです。
二つ目は、音の持続性。特にドビュッシーやショパンのようなロマンティックな音楽を弾く上では不可欠です。この点でヤマハのピアノはとても優れています。以前にヤマハCFXでモーツァルトのピアノ協奏曲を弾いて、アンコールにドビュッシーの『月の光』を演奏したときの幸福感は、今も忘れられません。
三つ目はアクションの心地よさ。この点でもヤマハはすばらしく、いわばピアノのロールスロイスですね。2022年ハイドンのソナタ全集を完成させましたが、録音にはヤマハCFXを使用しました。たくさんのトリルや速い指の運びが求められますから、理想的なピアノでした」
幅広い時代の多彩なレパートリーを得意とするバヴゼだが、音楽を的確に演奏するうえで重要な問題は、「作品がいかに多様でも全てに共通している」と話す。
「音楽は言語なので、理解するには、文法や特徴を知らなくてはなりません。一方の伝える側は、正しいフレージングやセンテンスの繋ぎ方を理解している必要があります。時に音楽は“ユニバーサルランゲージ”などと言われますが、私は少し違うと思っています。もちろん、ただ流れる音を感じることはできるでしょうが、その意味を本当に理解するには、基本をわかっていなくてはいけません。
このことについて、ブーレーズとの思い出があります。あるとき、ブーレーズの前で彼のピアノ・ソナタを演奏する機会がありました。最初の私はロボットのように弾いていたのでしょう。ブーレーズは『息を吸って!』とアドバイスをしたあと、作品の有機的な構造について説明してくれました。
彼のソナタは、1小節をちゃんと譜読みするにも10分かかるような複雑なもの。私はそれをほぼ暗譜で弾けるほど勉強していましたが、本当の意味では理解できていなかったため、フレージングやセンテンスの繋ぎ方が適切でなく、何も伝わらなかったのです。スピーチと同じで、ある作品を理解してもらえるよう伝えるにために不可欠なことは何か、ブーレーズは教えてくれました。得難い経験です」
音楽の伝統と発見を届けるため、ピアノに向き合い続けてきたベテランピアニスト、ジャン=エフラム・バヴゼ。2023年3月17日ヤマハホールで、趣向を凝らした自慢のプログラムを聴いておきたい。
ジャン=エフラム・バヴゼ ピアノ・リサイタル
日時:2023年3月17日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金(全席指定):公演チケット7,000円、ドリンクセット7,400円(限定数)、アルコールドリンクセット7,800円(限定数)
曲目:ドビュッシー/バラード(スラヴ風バラード)、ショパン/バラード 第2番 ヘ長調 Op.38、ショパン/ワルツ 第12番 へ短調 Op.70-2、ドビュッシー/ロマンティックなワルツ、ショパン/マズルカ 第19番 ロ短調 Op.30-2、ドビュッシー/マズルカ、ショパン/タランテッラ 変イ長調 Op.43、ドビュッシー/スティリー風タランテッラ、ブーレーズ/「12のノタシオン」より 第7番“厳かに”、ドビュッシー/12の練習曲 第1巻
詳細はこちら
本公演の優待チケット(一般:定価7,000円/優待価格 5,000円)を20枚(お一人2枚まで)ご用意いたしました。ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。
※ご応募の際は、ヤマハミュージックメンバーズの会員登録(登録無料)が必要です。
2023年3月6日(月)23:59まで
応募はこちら
文/ 高坂はる香
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