Web音遊人(みゅーじん)

仲道郁代

ベートーヴェンの室内楽を語り、奏でる大プロジェクト第2弾/仲道郁代インタビュー

日本を代表するピアニスト、仲道郁代が常に自身の演奏活動の核に据えてきた作曲家、ベートーヴェン。彼の室内楽作品を全曲演奏するという一大プロジェクトが2022年8月からスタートしている。ベートーヴェンの没後200年と自身の演奏活動40周年が重なる2027年に向けた壮大なプロジェクトだ。

作品番号順にベートーヴェンを探求

「これまでベートーヴェンのピアノソナタの全曲リサイタルシリーズを何度か行い、作品間における思考の連なりというものを感じ取ってきました。彼はモチーフを巧みに扱い、その変容や展開によって思考を発展させていく作曲家で、それはピアノソナタだけでなく、他のジャンルでも貫かれています。このプロジェクトでは、作品番号順に通してたどっていくことで、ベートーヴェンの思考に新たに触れることができるのではと期待しています」

前回は、作品1のピアノ三重奏曲第1番から第3番までを演奏しており、今後も作品番号順に演奏を行っていくという。第2回はチェロやバイオリンのためのソナタに、四手のためのピアノソナタや、ピアノ三重奏曲における初期作品が並ぶボリュームのあるプログラムだ。共演者は2013年ティボール・ヴァルガ・シオン国際バイオリン・コンクールで優勝した郷古ごうこすなお(バイオリン)と、2019年ミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人初優勝を果たした佐藤晴真(チェロ)、スウェーデン国際デュオコンクールで第1位を獲得した原嶋唯(ピアノ)という注目の若手が揃っている。

「前回、作品1を演奏してみて、後のベートーヴェンの作品に活かされているものが多いと、あらためて気が付きました。また、チェロの複雑さなど、すでに先輩であるハイドンを凌駕するようなものも見受けられます。第2回ではバイオリン、チェロそれぞれのソナタの第1番を演奏することで、各楽器の扱いの巧みさや個々の楽器に対する想いも感じてもらえることでしょう。共演は曲ごとに“この人”という方にお願いをしています。郷古さんと佐藤さんとは、2022年に七ヶ浜で共演をしています。とても素晴らしい音色に感銘を受け、またぜひご一緒したいと思っていました。原嶋さんは私の生徒なのですが、とても丁寧な音楽づくりをする方です」

Vol.1公演の様子

若手演奏家たちと創り上げるベートーヴェンの世界

共演者はすべて仲道自身がオファーをしている。前回、今回共に若い奏者が選ばれているが、それには理由があった。

「若い方たちとの演奏はとても楽しいのです。リハーサルではお互いに忌憚なく色々な意見を交わすことができ、年齢を超えて一緒に音楽をする仲間であるという感覚があります。今回ご一緒する皆さんは強い信念をもった演奏家。一つひとつの音について語り合いながら音楽を探求していけることは、この上ない喜びです」

本プロジェクトでは、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭や、出演者が語る時間も設けているという。

「平野先生は、作品における時代背景や、ベートーヴェンの人生などを解説してくださいます。私たち演奏者は、作品への想いをお伝えしたいと考えています。そのようななかから、また新たな発見をしていただけるとうれしいです」

プロジェクトを支えるCFXとホールの響き

この企画は仲道の中であたため続けていたものであり、それを実現する上で重要なのが会場となるヤマハホール、そしてヤマハのコンサートグランドピアノ「CFX」だ。

「ヤマハホールは室内楽にとってとても素晴らしい環境です。楽器同士の奏でる音が鮮やかに聞こえることで、それぞれがどのような役割を果たし、展開していくかをつぶさに聴くことができます。そして今回も大好きなピアノ、『CFX』が力を貸してくれます。CFXは、楽器のパワーはもちろん、ダイナミクスの幅が広く、より細やかで繊細なニュアンスを表現できるので、ベートーヴェンの魅力を、より実感していただけると思います」

第5回までヤマハホールで予定されているこのシリーズ。名演奏家たちが奏で、語るベートーヴェンの世界。ぜひ会場で、作品の新たな一面に触れてほしい。

■珠玉のリサイタル&室内楽 仲道郁代 ベートーヴェン “ピアノ室内楽”全曲演奏会 Vol.2

日時:2023年4月26日(水)19:00開演(18:30開場)
会場:ヤマハホール(東京・銀座)
料金(全席指定):公演チケット6,000円、ドリンクセット6,400円(限定数)、アルコールドリンクセット6,800円(限定数)
出演:仲道郁代(ピアノ)、郷古廉(バイオリン)、佐藤晴真(チェロ)、原嶋唯(ピアノ)、平野昭(音楽学者)
曲目:L.v.ベートーヴェン/チェロ・ソナタ 第1番 へ長調 Op.5-1、チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 Op.5-2、4手のためのピアノ・ソナタ ニ長調 Op.6、ピアノ三重奏曲 第4番 変ロ長調 Op.11 「街の歌」、バイオリン・ソナタ 第1番 ニ長調 Op.12-1
詳細はこちら

facebook

twitter

特集

ジェイク・シマブクロ

今月の音遊人

今月の音遊人:ジェイク・シマブクロさん「音のかけらを組み合わせてどんな音楽を生み出せるのか、冒険して探っていくのは楽しい」

10019views

音楽ライターの眼

シューベルト「弦楽五重奏曲」、C調言葉は変幻自在/宮田大と仲間たち~ウェールズ弦楽四重奏団と共に~

7275views

YEV104PRO/YEV105PRO

楽器探訪 Anothertake

音色と響きを磨き上げたステージ仕様の上位モデル、 エレクトリックバイオリン「YEV104PRO/YEV105PRO」

2509views

ピアノの地震対策

楽器のあれこれQ&A

いざという時のために!ピアノの地震対策は大丈夫ですか?

49915views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

8914views

出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)

オトノ仕事人

出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)

19670views

メニコン シアターAoi

ホール自慢を聞きましょう

五感で“みる”ことの素晴らしさを多くの方と共感したい/メニコン シアターAoi

3856views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8187views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

12718views

Leon Symphony Jazz Orchestra

われら音遊人

われら音遊人:すべての楽曲が世界初演!唯一無二のジャズオーケストラ

1711views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

9058views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

27113views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

5161views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

23911views

音楽ライターの眼

二重のイリュージョンにマイケルの声を聴く/SINSKE produce 打楽器アンサンブル

3144views

オトノ仕事人

最適な音響システムを提案し、理想的な音空間を創る/音響施工プロジェクト・リーダーの仕事

2542views

ゲッゲロゾリステン

われら音遊人

われら音遊人:“ルールを作らない”ことが楽しく音楽を続ける秘訣

2436views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

26669views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

24447views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

あれから40年、おかげさまで「音」をはずさなくなりました

5090views

楽器のあれこれQ&A

ドの音が出ない!?リコーダーを上手に吹くためのアドバイスとお手入れ方法

201867views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7406views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32895views