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からだが変わると音も変わる!無理のないからだの使い方が体感できる一冊『演奏がもっとラクになる アレクサンダー・テクニーク 実践のヒント48』

からだが変わると音も変わる!無理のないからだの使い方が体感できる一冊『演奏がもっとラクになる アレクサンダー・テクニーク 実践のヒント48』

アレクサンダー・テクニークという言葉をご存じだろうか。これは、創始者で俳優でもあったF・M・アレクサンダー氏の名前と「テクニック」に由来した言葉。舞台でセリフを言おうとすると声がかすれることから、自分のからだが舞台でどんな反応をしているのかを解明した結果、生まれたメソッドだ。
 
それを実践的に解説した『演奏がもっとラクになるアレクサンダー・テクニーク実践のヒント48』は、初心者にもわかりやすい注目の書だ。著者は、これまで2万人以上にレッスンをしてきた石井ゆりこ。学生時代、日本にアレクサンダー・テクニークを紹介した片桐ユズル氏のグループレッスンを体験し、知ったという。
「人前で話すワークで緊張してうまく話せなかった人が、このメソッドによってよろいが外れ、その人らしさがあらわれていきました。その場に立ち会えたことがすごく楽しくて、これは何だろう、学びたいと思いました」
 
それから学び始め、指導者コースでも学んで卒業後にレッスンを開始。教室には小学生から高齢者まで、演奏家や学生、会社員、主婦など多様な人が通っている。
 
アレクサンダー・テクニークには、意外な感覚が生まれたり、自分には無理だと思っていたことができたりする楽しさがあるという。その体験ができるのが本書。「ひざをゆるめて立ってみましょう」「力を入れずに腕を上げる」といった、誰もがすぐできるワークを紹介しながら、からだの声や気持ちの変化に気づけるよう導く。形から入るのではなく、常に自分に問いかけながら実践できるのが特徴だ。ピアノ、バイオリン、ギター、声楽などの演奏者の具体的な悩みにも触れ、故障のトラブルを防ぐヒントも提示している。
「からだと心はひとつながりのものなので、こうでなくてはいけないという気持ちにとらわれているとからだが緩みません。気持ちとからだの両方を見ていくことで、どちらも楽になっていくのです。ですからこの本では、具体的なワークと自分のからだへの意識を結びつけて伝えています」
 
どうするのが正しいかではなく、自分にとっての心地よさを探す。アレクサンダー・テクニークは、その楽しさを教えてくれる。「からだ全体への意識を繊細に探求していくと、自分の癖や習慣の奥に隠れていた新たな可能性があらわれることもあります。この本が、
そうした楽しい体験との出会いのきっかけになってくれたらと思います」
 
語りかけるような優しい文体、味わい深いイラストの世界観に惹かれ、読み進めるうちに自然とアレクサンダー・テクニークの考え方が醸成されていく。音楽をする人はもちろん、オフィスワーカー、より健康になりたい人、すべての人にぜひ手に取ってほしい一冊だ。

■演奏がもっとラクになる アレクサンダー・テクニーク 実践のヒント48

著者:石井ゆりこ
発売元:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
料金:2,200円(税込)
詳細はこちら

石井ゆりこ

石井ゆりこ〔いしい・ゆりこ〕
アレクサンダー・テクニークlittlesounds代表。20歳のときにアレクサンダー・テクニークに出会い、27歳より1,600時間(4年間)のトレーニングを受け、1999年に教師認定(ATI)。その後、ボストンのAlexander Technique Center at Cambridgeに短期留学し10年にわたり学びを深める。2016年より国立音楽大学非常勤講師。早稲田大学エクステンションセンターでも教えている。繊細な手のガイドにより、その人らしい楽で生き生きした感覚を取り戻せる楽しいレッスンに定評がある。

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