Web音遊人(みゅーじん)

ジェフ・リンズELO

ジェフ・リンズELOがライヴ映像作品/CD『ウェンブリー・オア・バスト〜ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』を発表

“ジェフ・リンズELO”が2017年6月24日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行ったライヴの全貌を収録した映像作品/CD『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』が発売される。

名義こそ”ジェフ・リンズELO”だが、6万人を集めたこの公演で演奏されたのはエレクトリック・ライト・オーケストラ=ELOの名曲の数々だ。1971年のデビュー作『エレクトリック・ライト・オーケストラ』の「10538序曲」から2016年に”ジェフ・リンズELO”として発表した『アローン・イン・ザ・ユニヴァース』からの「ホェン・アイ・ウォズ・ア・ボーイ」まで、彼らの軌跡を網羅したライヴとなっている。

正直驚かされるのが、本国イギリスにおけるその絶大な人気だ。ロックとストリングスを融合させたポップ・サウンドでデビュー、ディスコやシンセなどを取り入れながら1970年代と1980年代の音楽シーンを席巻したELO。いくつものヒット曲を世界のチャートに送り込み、根強い支持を得てきたことは認識していたものの、何とスタジアム公演とは!

日本でも人気を誇ってきた彼らだが、1983年に大阪で開催された日本SF大会『DAICON IV』オープニング・アニメーションで「トワイライト」が使われたり、TVドラマ『電車男』のオープニング曲でも同じ「トワイライト」が使用されるなど、オタク・カルチャーのシンボルのような受け入れられ方をしてきた。

「見果てぬ想い」(1974年)や「テレフォン・ライン」(1977年)のようなバラードがヒットしたせいで、海外でも”軟弱なバンド”という誹り(そしり)を受けることもあるELOだが、ウェンブリー・スタジアムを訪れた観衆は、大半が”普通の”音楽ファンだ。彼らは満面の笑みを浮かべながら身体を揺らし、音楽に身を委ねている。

自らのヒット曲に加えて、ジェフはポール・マッカートニー、ブライアン・アダムス、ジョー・ウォルシュなどをプロデュース。さらにボブ・ディラン/ジョージ・ハリソン/トム・ペティ/ロイ・オービソンとの覆面バンド、トラヴェリング・ウィルベリーズへの参加など、超一流アーティストとの共演も果たしてきた。そんな交流を経て、ELOは国民的バンドへと昇華されたのである。

日の長いイギリスの夏、まだ明るい中、ショーは「雨に打たれて」から始まる。『アウト・オブ・ザ・ブルー』(1977年)からの、シングル化されていない曲からのスタートだが、それからは大半が英米チャート上位にランクインしたヒット曲のオンパレードだ。

「イーヴィル・ウーマン」「オール・オーヴァー・ザ・ワールド」「ショウダウン」「オーロラの救世主(リヴィン・シング)」……次から次へとグレイテスト・ヒッツが披露される。

それに加えてサプライズとして、トラヴェリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ミー・ウィズ・ケア」が飛び出す。ロイ・オービソンのパートにバック・コーラスのイアン・ホーナルを加えるなどしながら、バンドはスタジアムを盛り上げていた。

さらにオリヴィア・ニュートン=ジョンとの共演で1980年にヒットした「ザナドゥ」をジェフ自らが歌う男声ヴァージョンもプレイされた。彼が歌うスタジオ・デモは既に編集盤などで公式リリースされているものの、ライヴで演奏されるのは貴重だ。

日本のファンも感涙必至の「トワイライト」も含め全23曲、約2時間。ブルーレイ/DVDには何箇所か曲間にジェフへのインタビューも挿入されており、ウェンブリー公演の裏話なども聞くことができる。

ライヴ後半、日が暮れてからは壮大なステージ・セットやライティング、レーザー光線、バンドのトレードマークであるUFOを再現したオブジェなど、ヴィジュアル・スペクタクルが全開。ウェンブリー・スタジアム独特のアーチもセットの一部となり、全編たっぷり楽しませてくれる映像作品だ。

2018年8月には35年ぶりとなるアメリカ・ツアーも敢行。ぜひ日本でも生「トワイライト」を聴かせてもらいたいところである。

ELOのライヴは、誰にでも必ず涙が出る瞬間がある。それは往年のヒットをしのぶ懐かしさの涙だったり、メロディの切なさ、そして美しさによる涙だったりする。ウェンブリーにポップ・ミュージックの涙雨が降った夜が、『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』にはあますところなく収められている。

■アルバムインフォメーション

『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』
ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム
発売元:ソニーミュージック・ジャパン
発売日:2017年11月29日
料金:2CD+BD(限定盤)6,480円/2CD+DVD(限定盤)5,400円/2CD 3,888円
※すべて税込
詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:佐渡裕さん「音楽は、“不要不急”ではない。人と人とがつながり、ともに生きる喜びを感じるためにある」

7247views

音楽ライターの眼

生誕250年のメモリアルイヤーに、ベートーヴェンの《第9》を改めて聴き直したい

2727views

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

楽器探訪 Anothertake

エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」

23329views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

26726views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ギタリスト木村大とピアニスト榊原大がトランペットに挑戦!

7164views

オトノ仕事人

アーティストの個性を生かす演出で、音楽の魅力を視聴者に伝える/テレビの音楽番組をプロデュースする仕事

8207views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

10334views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

13675views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12816views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

9416views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5440views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9904views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

8999views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

9999views

音楽ライターの眼

名手ぞろいの楽団員が一夜限りの室内楽/ベルリン・フィル スペシャル・アンサンブル Vol.3

6002views

オトノ仕事人

音楽をやりたい子どもたちの力になりたい/地域音楽コーディネーターの仕事

8746views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8136views

アコースティックギター「FG9」

楽器探訪 Anothertake

力強さと明瞭さが拓くアコースティックギターの新たな可能性

2419views

東広島芸術文化ホール くらら - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

繊細なピアニシモも隅々まで響く至福の音響空間/東広島芸術文化ホール くらら

13253views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

5864views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

6774views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10677views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9904views