今月の音遊人
今月の音遊人:東儀秀樹さん 「“音で遊ぶ人”といえば僕のことでしょう。どのような楽器の演奏でも、楽しむことだけは忘れません」
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ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)
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2018.8.10
tagged: ホール自慢を聞きましょう, 荘銀タクト鶴岡, 山形
山形県の西北部に広がる庄内地方は、自然に恵まれた地として古くから豊かな食文化を育み、人々が生活をしてきたエリアである。その中で鶴岡市は、西に日本海、東に山岳信仰の場として有名な出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)を有し、観光地としても食の発信地としても広く注目されてきた。江戸時代初期から明治時代を経て現在に至るまで、多くの偉人を輩出した街としても知られている。
城下町としての歴史をもつ鶴岡は、その中心だった鶴ヶ岡城の周辺が街として繁栄。人々の生活・文化を育んできた名所・旧跡や和洋折衷の美しい建築物が数多く残っている。そうした中にあって、未来的なフォルムに目を奪われてしまうのが、2018年に完成した荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)だ。
TACT(=Tsuruoka、Art、Culture、Terrace。つまり鶴岡における芸術文化が集う場)というキーワードを名称とし、命名権を獲得した荘内銀行の愛称(荘銀)を冠しているこのホールは、1971年に落成した旧文化会館を改築。21世紀型の文化創造・発信地としてリニューアルオープンし、多くの人々に至福のひとときを提供する場となっている。2018年3月のグランドオープン時には、約20年ぶりにNHK交響楽団が鶴岡へ来演。さらに『NHKのど自慢』の公開収録、宝塚歌劇団、劇団四季、シンガーソングライター・松山千春のコンサート、松竹大歌舞伎など実に多彩な公演が続いた。
「庄内地方は酒田も含め、吹奏楽、合唱、アマチュアオーケストラなど音楽活動が盛んな地域ですので、音楽に対する理解や探究心も深く、ホールの改築が決まってからも多くのご意見が寄せられました。音がいいホールにしてほしいというご要望はもちろん多く、加えて舞台と客席との一体感がある空間にしてほしいというご意見や、主催公演を増やしてほしいという声もありました。ホール完成後の内覧会や公演にいらしていただいたお客様からは、自分もこのホールで演奏したいという声も寄せられています」(事務局スタッフ)
そうした公演が行われた大ホールは、客席数(固定席)が1,120。形状は立体的なワインヤード型であり、床には白木をふんだんに使用しているため明るい雰囲気である。ステージと客席の距離感も近く、音響面においても自然で明快な音が客席へ届き、大所帯のオーケストラ公演からピアノリサイタルまで瑞々しい音楽を味わえるだろう。ステージは天井が高いため、演出効果も重要なオペラやバレエを含む各種の舞台公演にも対応。客席から見えない部分にセットなどを組み上げるスペースもあり、多彩な公演を開催できるホールとして生まれ変わった。
もちろん、生音の素晴らしさを味わえるクラシック音楽のコンサートにも期待がかかる。2019年3月までのオープニングシーズンにおいては、人気若手奏者の三浦文彰と辻井伸行によるデュオや、吹奏楽ファン垂涎の海上自衛隊東京音楽隊コンサート、そして恒例となっている山形交響楽団の鶴岡公演(2019年3月の公演では、鶴岡の高校生やアマチュア合唱団が共演する)などが行われるのだ。
「地元の音楽団体や学校の吹奏楽部、合唱部などアマチュアの皆さんにも積極的に使っていただき、このホールで演奏したり歌ったりする喜びを味わっていただきたいです。小ホールや建物内の開放的なエントランスを使って、新しいことができないかと模索もしています」(事務局スタッフ)
可動席で約200名を収容できる小ホールは、固定客席のないフラットな空間。コンサートや発表会はもちろん、演劇やダンスなど多彩な公演にも気軽に使える。また、ガラス張りで周囲の街や隣接する致道館(旧庄内藩の藩校)の庭園を借景する広いエントランスも、アイデア次第でさまざまな可能性を秘めた空間だといえるだろう。気軽に出入りができる憩いの場としても親しまれており、取材で訪問したときには周囲の景色をスケッチしている人もいた。
ホールの外観は、中心部を頂点として四方へとなだらかな傾斜が広がっている山を思わせ、芸術を発信していく場としての雰囲気をかもし出している。周辺には鶴岡アート・フォーラムや慶應義塾大学の先端生命科学研究所など、モダンな建築物もあり、荘銀タクト鶴岡も地域の新しい文化形成においてシンボル的な場になっていくだろう。
所在地:山形県鶴岡市馬場町11-61
TEL:0235-24-5188
ホール形式:ワインヤード型
席数:固定席1,120席、多目的鑑賞室15席
文/ オヤマダアツシ
photo/ 阿部雄介
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