今月の音遊人
今月の音遊人:生田絵梨花さん「ステージに立つと“音楽って楽しい!”という思いが、いっそう強くなります」
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26年ぶりにラインアップを一新!「長く持っても疲れにくい」を実現し、フラッグシップモデルが加わったバリトンサクソフォン
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2020.12.24
tagged: 楽器探訪AnotherTake, バリトンサクソフォン, YBS-82, YBS-62, YBS-480
「バリトンサクソフォン(バリトン)は、低音パートを担う、吹奏楽やバンドを下支えする楽器という印象が強いかもしれません。でも実は、ベースラインだけでなく、ソロで主役も張れる、表現力豊かな楽器なんですよ」
そう語るのは、サクソフォンの開発を担当する内海(うちうみ)靖久さん。
2020年秋、26年ぶりにフルモデルチェンジし、「YBS-82」(カスタムモデル)、「YBS-62」(プロモデル)、「YBS-480」(スタンダードモデル)の3モデル展開となったバリトンサクソフォン。開発は、ヤマハのバリトンに長いあいだ存在しなかった、カスタムモデルを軸に進められました。
ちなみにカスタムモデルとは、トップアーティストがステージで使用することを想定し、最新の技術、ノウハウをつぎ込んだフラッグシップモデルのこと。専用の素材(真鍮)を使い、職人が手作業で形作るベル(一枚取りベル)を採用することなどによって、豊かな音色と響きを表現することができます。
「15年以上前から、トップアーティストの方々に協力いただきながら、メロディアスなソロにも対応できるカスタムモデルの開発を進めてきました。より繊細な音色変化をつけられるよう、低音域だけでなく、中高音域の響きの豊かさや、全音域における音と音のつながりの良さにこだわってつくりました」
「今回の開発は、どうすれば低音域の音程をより安定させることができるか……というところからスタートしました」と内海さん。試行錯誤の結果、ベルの全長を短くすることになりましたが、それは大きな決断だったそう。
「ベルを短くすると、ベルにあるトーンホール(音孔)の音程が変わってしまうので、音孔の位置を変える必要が出てきます。音程設計を一からやり直すことになるため、多くの時間と労力がかかりますが、音程、音質の改善のためにはベルを短くするのがベストという結論に至りました」
バリトンは、アルトより1オクターブ低く、管の長さが約2倍。そのため、音域が広く、あたたかく豊かな響きの音を鳴らせるのですが、管体の大きさと重量が奏者の負担となりがちです。
「ベルが短くなり重量が軽くなったのに加えて、ストラップをかける位置をこれまでより少し上にずらすことで、楽器のポジションを取りやすくしています。演奏には直接関係しませんが、楽器を構えるたび奏者にかかるストレスを、少しでも軽減したいと思いました」
全体のキイの間隔をできる限り狭めることで、手の小さい人でもキイ操作をしやすくなっているのもポイントです。
「私も手が小さいので、人知れず指がつりそうになるときがありますが(笑)、指を無理に伸ばさなくてもキイ操作ができるよう、キイ同士の間隔をミリ単位で縮めました。また、指にフィットしやすい形状にしたり、軽量化したりすることでもキイの操作性を上げ、奏者の負担を減らしています」
フルモデルチェンジで低音域の音程の安定性や操作性が上がり、さらに自由な表現が可能になったヤマハのバリトンサクソフォン。オプションネック(別売) も、内径と塗装の違いで15種類あるため、吹奏感をより自分好みにできたり、音楽ジャンルによって使い分けたりできます。
「近年は、作曲家にバリトンのための曲の制作を依頼し、バリトンメインで活動を行うアーティストも増えています。今回のフルモデルチェンジをきっかけに、バリトンという楽器が持つ可能性に注目が集まり、新しい表現が生まれたら嬉しいです」(内海さん)
吹奏楽やジャズのビッグバンドをはじめ、サクソフォン四重奏、ソロ、他の楽器とのアンサンブルなど、さまざまな演奏スタイルで活躍できるバリトンサクソフォン。メロディを奏でたり、ほかの楽器とハーモニーを重ねたり、ベースラインを支えたり……幅広い役割を果たすバリトンサクソフォンは、知れば知るほど奥深く、多彩な楽器です。