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TOKYO BLUES CARNIVAL 2022開催。ブルースの楽しさと新時代の幕開け
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2022.4.13
tagged: 音楽ライターの眼, TOKYO BLUES CARNIVAL 2022
ブルースが野音に帰ってくる。2022年5月29日、東京・日比谷野外大音楽堂で開催されるTOKYO BLUES CARNIVAL 2022は、ブルース・ファン待望のセレブレーションだ。
1986年に第1回が開催されたジャパン・ブルース・カーニバルは、日本におけるブルース・シーンの最重要イベントだった。本場アメリカの伝説的ブルースメンに固唾を飲み、日本を代表するブルース・プレイヤー達に盛り上がる。B.B.キング、アルバート・キング、ボ・ディドリー、オーティス・ラッシュ、アルバート・コリンズ、バディ・ガイ、ソロモン・バーク、ジョニー・ウィンター、ピーター・グリーンなどのライヴを目撃するべく、我々は毎年、日比谷野音に向かった。
ただ、“聖地”とか“巡礼”とか、堅苦しくなってしまうことがないのがジャパン・ブルース・カーニバルだった。毎年開催されるのはだいたい5月下旬。春の終わりで好天に恵まれることが多く、真剣に聴き入るところは聴き入って、ビールを片手に会場の後ろの売店でおつまみを買い込んだりもする。MCを務めるゴトウゆうぞうと相方カメリヤマキによる“ブルースクイズ”も正解なら嬉しいし、間違えたらそれはそれ。開催時期も5月下旬だったりそうでなかったり、野音だけでなく地方公演もあったりする。そんな適度のユルさもあって、毎年“ブルースの楽しさ”をお腹いっぱい味わわせてくれるのがジャパン・ブルース・カーニバルだった。
だが、時代は移りゆく。2006年、ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルと改名、音楽性の幅を拡げたが2012年、ジョニー・ウィンターとサニー・ランドレスが出演した第26回を最後にいったんストップ。3千人を収容する大会場の野音でヘッドライナーを務める大物ブルース・アーティストを毎年確保することが難しかったなどともいわれたが、ブルース・カーニバルのない5月に、日本のブルース・ファンは“部屋ががらんとしちゃったよ……”とつぶやく日々だった。2020年からの新型コロナウイルスの影響もあり、ブルース信者で埋め尽くされた野音を想像することすら困難となった。
だが10年の月日を経て、ファンの心の空白は埋められることになった。TOKYO BLUES CARNIVAL 2022はブルースをルーツとする国内アーティストが集結、復活の狼煙を上げる待望のイベントである。
かつてジャパン・ブルース・カーニバルのステージに立ったアーティストも多く、懐かしさがこみ上げる。だが、単なるレトロに留まることなく、blues.the-butcher-590213には山岸潤史がゲスト参加、吾妻光良&The Swinging Boppersには伊東妙子(T字路s)がゲスト、三宅伸治&The Red Rocksには鮎川誠がゲスト、そしてコージー大内というスペシャル編成も多いラインアップは、ブルースの“現在”を感じさせるものだ。
そしてもちろん、“ブルースの楽しさ”も受け継がれることになる。ゴトウゆうぞう&カメリヤマキによる司会コンビも復活。会場を沸かせてくれるだろう。当日の天気はその日になってみないと判らないが、晴天ならば『ザ・サン・イズ・シャイニング』、雨ならば『ザ・スカイ・イズ・クライング』と、ぴったりのブルース・ナンバーが歌ってしまえばハッピーになれる(共にエルモア・ジェイムズによる名曲)。
TOKYO BLUES CARNIVAL 2022は日本におけるブルース新時代の幕開けを感じさせる祭典でもある。ブルースは新しい世代に受け継がれ、テデスキ・トラックス・バンドは大会場をフルハウスにする人気を誇っているし、クリストーン“キングフィッシュ”イングラム、マーカス・キング、セバスチャン・レイン、ジョアン・ショウ・テイラー、サマンサ・フィッシュなど、優れたブルース・アーティストが登場している。彼らが本邦でブレイクスルーを果たす舞台として、TOKYO BLUES CARNIVALには今後、日本のブルースの風物詩として定着していただきたい。
音楽の定義は時代によって変わるものだ。19世紀末にアメリカで生まれたブルースは悲しみや苦しみを描いた“憂歌”として口ずさまれたが、2022年には我々をとびっきりハッピーな気分にしてくれる。苛酷な労働条件やつれない恋人の束縛を歌ってきたブルースが、コロナ下の鬱屈した日常から我々を自由に解き放ってくれるのだ。
かつてジャパン・ブルース・カーニバルにも出演したリトル・ミルトンが『ザ・ブルース・イズ・オールライト』で“ブルースが帰ってきた!”と歌ったのは、TOKYO BLUES CARNIVALを予言していたのかも知れない。そして、ブルースはもうどこにも行きやしない。
日時:2022年5月29日(日)16:00(開場15:00)
会場:東京・日比谷野外大音楽堂 ※雨天決行
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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文/ 山崎智之
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