Web音遊人(みゅーじん)

Two Yamahas, One Passion バイクと楽器のデザインに込められた思い

Two Yamahas, One Passion バイクと楽器のデザインに込められた思い

2022年から遡ること67年前、ヤマハの前身である楽器メーカーがオートバイを発売しました。オートバイと楽器。まったく違う製品ですが、そのデザインには共通点はあるのでしょうか。それぞれのデザインに込めた思いをふたりのデザイナーが語り合いました。

山本 嘉一郎 大塚 生奈

(写真左)ヤマハ発動機株式会社 クリエイティブ本部 プロダクトデザイン部 山本嘉一郎さん(写真右)ヤマハ株式会社 デザイン研究所 プロダクトデザイングループ 大塚生奈せなさん

楽器メーカーが作ったオートバイ

山本:ヤマハモーターサイクル第一号である「YA‒1」をご存じですか。楽器を作っているヤマハ株式会社とバイクを製造しているヤマハ発動機株式会社は今は別の会社ですが、もともとは日本楽器製造という一つの会社でしたよね。「YA‒1」は、その時に生まれました。

大塚:楽器の会社がオートバイを作ったのは、不思議な感じがしますね。

山本:楽器とバイクのデザインは似ているところがあると思っています。どちらも基本的には機能部品だけで構成されていますが、機能を追求した結果なのに、そこに「カッコイイ」という価値観が生まれるのはなぜだろう。いつも考えているのですが、奥が深いです。

人間の体と共存するデザイン

大塚:私が初めてデザインを担当した楽器は「Remie(PSS‒E30)」というミニキーボードでした。誰に向けた楽器なのか、ユーザーの年齢層やレベルによってデザインは変わってきます。同じく担当した「PSR‒E360」メープル調は、インテリアを意識した木目調で、外側に向かって色の濃くなるサンバースト塗装をイメージしました。

Remie(PSS‒E30)

「Remie(レミィ:PSS-E30)」は子どもの小さな手でも演奏しやすいミニキーボード。1.2kgと軽量で持ち運びやすい。

山本:ヤマハ発動機には少し前まで「SR400」という機種がありましたが、過去タンクにギターなど楽器を想起させるサンバースト塗装を施したモデルもありました。自然な色合いを出すのに苦労したそうですが、そのぬくもりのようなものが長く愛する相棒としての魅力につながると感じています。

大塚:私は楽器以外でも、完全ワイヤレスイヤホン「TW‒E5B」のデザインも手がけています。美しく見えることを意識しつつも着け心地は重要なため、エンジニアと何度もやり取りしました。バイクのデザインでも、乗り心地や体との関係を重視するのではないでしょうか。

山本:人間の体と共存して使う製品をデザインしているので、タンクやシート周り、ハンドルなどは設計担当者と実験を重ねます。サイズは違えど、プロセスは同じなんですね。

ユーザーの気持ちを高ぶらせるデザインを

山本:僕が入社して初めてデザインに関わったのは「TMAX 560」。その主なマーケットはヨーロッパです。環境規制が厳しく、都市部に車が入れない国もあります。そんななか、このモデルは通勤にも趣味にも使え、かつ所有感をもたらす重要な立ち位置にいることを勉強させてもらいつつ、デザインに臨みました。バイクも楽器も、やはり魅力的であることが大事ですよね。長く大切に使いたいと思ってもらえるか否かはデザインの力が大きく関わっていると思います。バイクの場合は乗った人のテンションを上げたり、これから始まるライディングに期待させたりすることもデザインの大切な役割です。そのため、一つひとつのディテールにもこだわっています。

TMAX 560

オートマチック・バイク「TMAX560」。シルエットは前モデルより引き締まり、よりスポーツ性を高めている。

大塚:弾くとき、乗るときの気持ちが高ぶってほしい。愛着を持って長く使ってほしい。楽器もバイクも同じ思いでデザインしていることがわかりました。

山本:これからも刺激し合いながらつくっていくことができればいいですね。機会があれば楽器のデザインもやってみたいです。

ヤマハモーターサイクル第1号「YA‒1」
YA-1
ヤマハ発動機の原点は、ヤマハが初めて手がけたモーターサイクル第1号機「YA-1」。1955年、楽器メーカーだった日本楽器製造株式会社(現・ヤマハ株式会社)からデビューしました。開発にあたっては随所に新機軸が盛り込まれ、目指したスタイリングも国産他車とは一線を画すものでした。当時の二輪車は黒一辺倒だったなか、外装はマルーンとアイボリーのツートンカラー。3本の楽器調律の音叉が交差する七宝焼きのタンクマーク(写真中)と、音叉をモチーフにしたフロントフェンダーオーナメント(写真右)が優美な意匠として添えられ、その姿は「赤トンボ」の愛称で親しまれました。

 

対談の全編はYouTube「ヤマハ発動機公式チャンネル」からご覧いただけます。


ヤマハの未来を描くひと Vol. 09 デザイナー 山本 嘉一郎

ヤマハの未来を描くひと デザイナー 大塚 生奈

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:小曽根真さん「音楽は世界共通語。生きる喜びを人とシェアできるのが音楽の素晴らしさ」

21618views

ピョートル・アンデルシェフスキ

音楽ライターの眼

世界的ピアニストの奥深く妙なる響きに包まれて/ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタル

5290views

楽器探訪 Anothertake

改めて考える エレクトーンってどんな楽器?

134234views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!トランペットをうまく鳴らすコツと練習方法

125656views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

9962views

宮崎秀生

オトノ仕事人

ホールや劇場をそれぞれの目的にあった、よりよい音響空間にする専門家/音響コンサルタントの仕事

2733views

久留米シティプラザ - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

19613views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3219views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10360views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

1927views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

5381views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26127views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

11693views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

20134views

7月に樫本大進と共演するアレッシオ・バックス、バロック作品を収録したアルバムを再リリース

音楽ライターの眼

2017年7月に樫本大進と共演するアレッシオ・バックス、バロック作品を収録したアルバムを再リリース

4645views

オトノ仕事人

ピアノを通じて人と人とがつながる場所をコーディネートする/LovePianoプロジェクト運営の仕事

18340views

われら音遊人:Kakky(カッキー)

われら音遊人

われら音遊人:オカリナの豊かな表現力で聴いている人たちを笑顔に!

8395views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に

14356views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

24773views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.7

パイドパイパー・ダイアリー

最初のレッスンで学ぶ、あれこれについて

4807views

エレキギター

楽器のあれこれQ&A

エレキギターのサウンドメイクについて教えて!

1061views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

9056views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30897views