Web音遊人(みゅーじん)

横浜みなとみらいホール

海のみえるホールから多種多様なプログラムを届ける/横浜みなとみらいホール

市民が音楽を身近に感じ、親しむ機会をつくる場所として誕生した横浜みなとみらいホール。「ときめく音楽を 海の見えるホールから」をコンセプトに、抜群のロケーションの中で美しい音響と多種多様なプログラムを届けている。

光が射し込み、広がる海を臨む音楽ホール

ひらけた海の港町みなとみらいに建つ横浜みなとみらいホールは2021年1月から約1年10か月の休館を経て2022年10月にリニューアルオープン。より魅力的な空間に生まれ変わった。
「当館は駅から近く、雨の日でも濡れることなくお越しいただけます。そしてなんといっても景観の良さが自慢ですね。ホールの中で音楽を楽しみ、ホワイエに出ると、まるで外に出たような開放感を味わいながら遠く海を眺めることができます。めったにない空間ではないでしょうか」
そう話してくれたのは館長の新井鷗子(あらいおーこ)さん。横浜みなとみらいホールは全面がガラス張りで、外との境界を忘れてしまいそうだ。館外から見ても、この港町と見事な融合を果たしている。

横浜みなとみらいホール

横浜港の近くに建つ横浜みなとみらいホールの外観。ホワイエからは海を眺めることができる。

「大ホールのホワイエに、大きなモニュメントが設置されました。照明による色の変化をお楽しみいただけるようになっており、施設の中からはもちろん、外からもその美しさを感じてもらえると思います。また正面玄関もゴールドが印象的なものになり、ホールの存在感がより引き立つようになりましたし、大ホール、小ホール共にカーペットや座席のシートを寒色系から暖色系に変更したことで祝祭感や外の景色との対比がより際立つようになりました」(新井さん)
確かに、現実のさまざまなことを忘れて別の世界へと誘ってくれそうな正面玄関とガラス越しに見えるモニュメントはそれ自体が音楽を奏でているようで、つい足を運んでみたくなってしまう。

横浜みなとみらいホール

大ホールのホワイエに設置された大きなモニュメントはキラキラと輝き、光が降り注いでいるようで美しい。

だれもが安心して足を運べる空間

しかし、リニューアルしたのは見た目だけではない。安全面はもちろん、アクセシビリティの強化にも力を入れているという。
「まずは変わりゆく耐震基準にあわせ、耐震構造が強化されました。それから障がいがある方、ご高齢の方など、さまざまなご事情をお持ちの方にも当館へお越しいただきやすいよう、バリアフリー面にも力を入れています。具体的には、スロープや車椅子スペースの増設をはじめ、誰でもご使用になれるトイレの拡張などです。アクセシブルに音楽を楽しめる空間を確保したいという願いが今回のリニューアルで形になりました」(新井さん)
一方で同ホールが愛される理由として美しい音響も挙げられる。リニューアル前から、音楽ファンはもちろん、アーティストからも高い評価を得てきた。
「残響がありながらもクリアな響きを楽しむことができます。ホールの場所によって聴こえ方が違うのですが、それぞれの魅力を持っており、それを味わうのもおすすめです。ピアニストの反田恭平さんからもどの席で聴いても良い響きだと、お褒めの言葉をいただきました。以前、“無人オーケストラコンサート”という、オーケストラのメンバーそれぞれにマイクを設置して生演奏を収録し、その音源を収録時の奏者と同位置に置いたスピーカーから出力するプログラムを開催しました。客席だけでなく舞台上などホール内を自由に歩いて、いつものコンサートとは違った音の響きの違いを体感いただきました。それもこの響きがあるからこそ、よりお楽しみいただけるものです。さらに、指揮者のパーヴォ・ヤルヴィさんも音響を高く評価してくださり、ドイツ・カンマーフィルの公演で積極的にご利用くださっています」

ホールの顔ともいえるパイプオルガン

横浜みなとみらいホールを象徴するといっても過言ではないほどの存在感を放つパイプオルガン、愛称「ルーシー」は、今回のリニューアルにあたってオーバーホールが行われたという。

横浜みなとみらいホール

リニューアル前より親しまれていたパイプオルガンの「ルーシー」

「休館期間中、パイプオルガンのメンテナンスにかなりの時間を割いています。時間をかけて手入れをしたこともあり、より豊かで魅力的な響きになりました。また、2022年から第2代ホールオルガニストとして近藤岳さんが就任し、パイプオルガンの魅力を皆様にお届けするためのさまざまな企画や、次世代育成の取り組みなどを考えてくださっています」(新井さん)
最高の音楽を届けるコンサートホールでありながら、市民とのつながりも大切にする。リニューアルを経てさらに進化した横浜みなとみらいホールは、日常の中にあるささやかな非日常を味わいたいときに気軽に出かけられる場所として、これからも人々をあたたかく迎え入れてくれる。

■横浜みなとみらいホール

所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい2丁目3-6
TEL:チケット・公演内容について 045-682-2000/ホールご利用、その他について 045-682-2020
大ホール形式:囲み型シューボックス型
席数:2,020席(他に車椅子用スペース14席)
詳細はこちら

photo/ 平舘平

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

ケイコ・リー

今月の音遊人

今月の音遊人:ケイコ・リーさん「意識的に止めなければ、自然に耳に入ってくるすべての音楽が楽譜として浮かんでくるんです」

2229views

音楽ライターの眼

英国スペース・ロックの君主ホークウィンドが新作『ソムニア(夢)』を発表

1890views

マーチング

楽器探訪 Anothertake

見て、聴いて、楽しいマーチング

15571views

エレキベース

楽器のあれこれQ&A

エレキベースを始める前に知りたい5つの基本

3407views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

10095views

オトノ仕事人

ピアノを通じて人と人とがつながる場所をコーディネートする/LovePianoプロジェクト運営の仕事

17662views

札幌コンサートホールKitara - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

あたたかみのあるデザインと音響を両立した、北海道を代表する音楽の殿堂/札幌コンサートホールKitara 大ホール

17718views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

8594views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

13775views

われら音遊人

われら音遊人:オリジナルは30曲以上 大人に向けて奏でるフォークロックバンド

4297views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

クラス分けもまた楽しみ、レッスン通いスタート

4750views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29684views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

9000views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12816views

音楽ライターの眼

多様性の新クラシックへ、先導役はサクソフォン/田中靖人サクソフォン・リサイタル

2519views

ステージマネージャーの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

ステージマネージャーひと筋に、楽員とともにハーモニーを奏で続ける/オーケストラのステージマネージャーの仕事(後編)

17418views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8137views

楽器探訪 Anothertake

目指したのは大編成のなかで際立つ音と響き「チャイム YCHシリーズ」

10460views

水戸市民会館

ホール自慢を聞きましょう

茨城県最大の2,000席を有するホールを備えた、人と文化の交流拠点が誕生/水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)

4780views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

5186views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バイオリンの購入ポイントと練習のコツ

19773views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3024views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25066views