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今月の音遊人:小林愛実さん「理想の音を追い求め、一音一音紡いでいます」
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吹奏楽ポップスの代名詞『New Sounds in Brass』復活へのクラウドファンディングがスタート!
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2023.8.10
tagged: 吹奏楽, New Sounds in Brass, NSB, クラウドファンディング
1972年に第1集が発売されて以来、毎年新作が発表され、日本の吹奏楽ポップスを牽引してきた『New Sounds in Brass』(NSB)。国内外のヒット曲、ジャズやラテンの代表曲、ディズニーを含む映画音楽など、名曲の数々が吹奏楽版に編曲され、楽譜とCDによって吹奏楽界にポップスの魅力を普及してきた。
約半世紀にわたって愛され続けたこの一大コンテンツが、コロナ禍の活動自粛による休止を経て、再始動に向けてクラウドファンディングをスタートした。CDの録音でNSBと関わってきた東京佼成ウインドオーケストラ ホルン奏者の堀風翔さん(同団専務理事)と、楽譜を出版するヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスの松井加奈さん、金子文枝さんに話を聞いた。
名曲、名アレンジ揃いのNSB。管楽器や吹奏楽の経験がない人も、実はそのサウンドを耳にしている可能性が高い。たとえば野球の応援。甲子園の中継から聴こえる『アフリカン・シンフォニー』は、多くの学校が取り入れている応援の定番。人気曲『宝島』をはじめとして、テレビや映画でもしばしばNSBの音源や編曲が使われている。NSBの魅力について、堀さんはこう語る。
「私は中学、高校と吹奏楽部でしたが、当時はNSBの曲とは知らずに演奏していて、後になってこのシリーズだったと認識しました。それほど自然にレパートリーとして浸透しているのだと思います」
その鍵となるのが編曲。NSBの立ち上げにも尽力し、のちに「吹奏楽ポップスの父」と称された作曲家の故・岩井直溥氏が数多くの編曲を手がけた。
「プロになってNSBのレコーディングで演奏して、改めて編曲の素晴らしさと楽譜のクオリティの高さを感じました。編曲の仕方やオーケストレーションによって演奏の楽しさは大きく変わります。NSBはとても気持ちよく吹けますし、それは中高生も同じように感じると思います。演奏しながら音楽の根源的な楽しさを味わえるのもNSBの魅力のひとつですね」
そして、聴く側と演奏する側をつないできた役割も大きい、と堀さんは語る。
「吹奏楽部の演奏会には、吹奏楽を初めて聴くという方もいらっしゃいますが、NSBの曲ならどなたでも楽しめるのではないでしょうか。日本の吹奏楽界を双方向的に刺激してきた功績は大きいと思います」
NSBの曲を聴いて「演奏してみたい」と憧れた人の思いに応えたのが、楽譜を制作してきたヤマハだ。
「NSBの発売当時は、気軽に聴いたり演奏したりできる吹奏楽曲がありませんでした。そうした中でヤマハと岩井先生が出会い、このシリーズが生まれました。楽譜は、学校の先生たちもポップスの指導がしやすくなるように、スコアやパート譜は細部までこだわって作られました。ポップスは自由に演奏すればよいのですが、自由であるがゆえにかえってどう取りかかったらよいのかわからない、という声が当時ありました。それを受けて演奏の仕方をできるだけ詳しく楽譜に書きあらわし、まずは楽譜どおりに演奏してみよう、ということです。今でこそ、地域の催しなどでポップスが演奏されることが普通になりましたが、こうなるまでに半世紀近い年月がかかりました。その間、出版社として使命感を持って楽譜を出版し続けてきました」(松井さん)
「楽譜のクオリティとは例えば、すべての楽器・パートが揃わずとも美しく鳴り響くよう緻密に設計された編曲、演奏しやすいようにパート譜の要所要所にカウントや他パートのガイドを記載するなど、こうしたこだわりは脈々と受け継がれています。近年では海外からの注文も増え、改めてNSBのラインナップはどの国にも通用するエバーグリーンなものなんだと実感しています」(金子さん)
このように編曲、演奏、出版の各分野が強力なタッグを組み、歴史を築いてきたNSB。コロナ禍によって演奏活動が制限されたことから、2020年以降は新譜の発売が自粛に。しかし、復活を望む声の高まりを受け、東京佼成ウインドオーケストラが発起人となり、2024年春の楽譜・CD発売に向けたクラウドファンディングが2023年8月8日にスタートした。
「このシリーズのコンセプトを守りながら、何か新しいチャレンジができないかと発想したのがクラウドファンディングです。なるべく広い範囲の方々にご協力いただくことで、皆さんのパワーを少しずつ集め、この企画を続けていきたいと思います」(堀さん)
サブスクリプションやYouTubeなど、音楽を聴く環境は変化しているが、「CDには同じくNSBを支えてきたエンジニアさんや裏方さんの魂が詰まっています」と松井さん。クラウドファンディングは「参加者が見える形で手応えを感じられるので楽しみです」と金子さんも期待を寄せる。
東京佼成ウインドオーケストラには、すでにNSB再始動を喜ぶ声や熱い応援メッセージがたくさん寄せられているという。一つひとつの声は小さくても、それが集まれば必ず大きな力になっていくに違いない。NSBは日本の吹奏楽の宝。その宝を次世代にも継承できるよう、全国から多くの賛同が集まることを心から切に願っている。
文/ 芹澤一美
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