今月の音遊人
今月の音遊人:上原ひろみさん「初めてスイングを聴いたときは、音と一緒に心も躍るような感覚でした」
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演奏家として伝えたい強い想いがストレートに響いて感動的!千住真理子著『ヴァイオリニストは音になる』
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2015.11.20
tagged: バイオリン, 千住真理子, ヴァイオリニストは音になる, 時事通信社, バイオリニスト
2歳半になった頃、16分の1のバイオリンで練習を始め、12歳でプロデビュー。2015年にデビュー40周年を迎えたバイオリニスト千住真理子さんの新刊『ヴァイオリニストは音になる』が発売された。新聞の連載や講座の内容に加筆してまとめられた本書には、人間・千住真理子の魅力があふれている。
「天才少女」ともてはやされ、毎日14時間の練習を自分に課し、コンクールで1位になると、ますます「天才少女」と騒がれた。天才らしくあろうとするあまり、しだいに追いつめられ、世間の評価や日々の練習、社会とのかかわりなどのすべてがストレス要因となってしまった千住さん。「バイオリンを一生やめる」と一大決心し、大学時代の2年間、バイオリンから離れた。
そんな苦しい体験も淡々と綴られている本書からは、何をきっかけに、何が支えとなって、再びバイオリンを始めようと思ったのかが、明確に伝わってくる。
そのきっかけは、ボランティアの訪問演奏だった。
「そこの人たちは私に『天才少女』を求めていないことに気がついたのです。温かい、血の通った音楽を要求しているのだと。血の通った音を出そうと、その場所で私は初めて音楽と出会ったのです」(本書より)
そして、「天才少女と呼ばれて、皆をびっくりさせるような演奏をしようと努力した結果、どんどん音楽から離れてしまっていた」と気がつき、「そのことを知って、もう一度『音楽』をできるかもしれないと思い始めたのです」と続ける。
哲学科卒業という異色の経歴をもつ千住さん。NHK報道番組のキャスターや国際交流基金の文化大使派遣演奏会などを経験し、社会活動にも関心を寄せ、広い視野で独自の活動を展開している。そんな千住さんならではのエピソードが、力のある文章で率直に語られる。
旅での失敗のちょっと笑えるエピソード、名器ストラディヴァリウス「デュランティ」との出会い、がんで他界した母との往復書簡のこと、ホスピスや東北の被災地でのボランティア演奏など……。そんなさまざまな体験を追体験しながら、演奏家として「音楽する意味」を、読者もまた探し続けるのかもしれない。
意外にも「待てない人」だったり、実はユーミンが好きだったり、さらにはリフレッシュするための泳ぎ方やユニークな健康法まで、千住真理子というひとりの人間の魅力と、演奏家として伝えたいものに対する強い想いが胸に響いて感動的。
読んでから聴くか、聴いてから読むか。千住さんのコンサートスケジュールはオフィシャルサイトでご確認を!
千住真理子(せんじゅ・まりこ)
慶応義塾大学文学部哲学科卒業。1973年全日本学生音楽コンクール小学生の部全国1位。1975年NHK交響楽団と共演し12歳でプロデビュー。1977年日本音楽コンクールで最年少15歳で優勝。2015年デビュー40周年を迎え、全国各地で記念演奏会を開催中。日本画家の博氏、作曲家の明氏とともに、芸術家三兄弟としての活躍が大いに注目されている。
オフィシャルサイト:http://marikosenju.com/
『ヴァイオリニストは音になる』
著者:千住真理子
発売元:時事通信社
発売日:2015年7月31日
価格:1,800円(税抜)
文/ 芹澤一美
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