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チャイコフスキー国際コンクール第2位の若き天才ピアニストが待望のヤマハホール・デビュー!!/ジョージ・ハリオノ ピアノ・リサイタル
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2023.12.26
弱冠9歳でソロ・デビューを飾り、12歳でオーケストラと初共演。さらに史上最年少の15歳でフルスカラシップ奨学生として英国王立音楽院に入学し、2023年6月には難関チャイコフスキー国際コンクールで第2位入賞を果たしたイギリスの若き天才ピアニスト、ジョージ・ハリオノのヤマハホール初登場となった注目の公演を聴いた。
公演は2023年11月11日に行われた。その音色と性能を愛してやまないというヤマハCFXのピアノを用い、アコースティック楽器に最適かつ豊かな響きを追求して造られたヤマハホールで演奏できることに大きな期待を寄せていたハリオノ。この日の公演は、そんな彼の想いが結実し、みごとな大輪の花を咲かせていた。
ベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ 第18番』は、同時期の傑作『交響曲第3番「英雄」』と同じ変ホ長調で書かれた4楽章作品。当時30代の作曲者の力強い創意に溢れた本作を、颯爽と緩急巧みに織り上げるハリオノの姿は、作品の背景に重なるものがあり、チャイコフスキー国際を経て国際的な活躍を本格化させた彼の新たな船出における決意表明のようだった。
チャイコフスキーが最晩年に残した『瞑想曲』では、甘美な憂愁をあえて強調せず、音の粒を縦と横に流麗に重ねながら次の作品へと歌い継いでみせる。
リスト『夕べの調べ』でも、鐘の音を模倣やハープ風の伴奏部分をみごとに表現しつつ、敬虔な美しい旋律を若者らしい瑞々しさで輝かせていた。
だが、同じ作曲者による『ハンガリー狂詩曲第6番』では決然とした開始部分から表情が一転。極めて速いテンポで進み、細かい装飾音なども誠実に処理して華々しいフィナーレを現出する圧巻の名演だった。
切れ目のない4楽章形式のように書かれたシューベルト『さすらい人幻想曲』は、極めて演奏難易度が高いことで知られる大作。ここでのハリオノは、演奏が進むにつれて情熱と集中力が増してゆき、技巧的な難所も一点の曇りもない精確さで楽々とクリアしてゆく。さらに、作品の要所に潜むシューベルトらしい慈愛や自由な歌心もきちんと掬い上げていたのが素晴らしかった。
ロシアの指揮者&現代作曲家で、ハリオノの友人でもあるアルカディエフによる『フレイム・ソナタ』は、この日が日本初演。第2次世界大戦中にイギリス軍によって空爆を受けたロシアのカリーニングラードのケーニヒスベルク大聖堂の修復記念(2019年)に書かれたものだが、約13分にわたってその悲劇や祈りのような調べが実にドラマティックに展開されていたと思う。
ストラヴィンスキー『ペトルーシュカからの3楽章』では、「オーケストラの色彩をピアノ1台で表現できるような新たな視点で演奏したい」と事前に語っていた通り、実にきらびやかで、なおかつ品性も高い秀演を披露。特に難易度が高い第3楽章の左手のトリルも完璧で、完売御礼となったこの日の聴き手から万雷の拍手が贈られていた。
それに感じ入ったに違いないハリオノは、アンコールになんと、ピアソラ『リベルタンゴ』、坂本龍一『メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス』、ホロヴィッツ『ピアノのためのカルメン変奏曲』、シューマン/リスト『献呈』、久石譲『Summer』、マンシーニ『ムーンリバー』と6曲も演奏。若き日のエフゲニー・キーシンを彷彿とさせる天才ぶりとバイタリティに今も興奮さめやらぬ、衝撃の午後のひとときだった。
渡辺謙太郎〔わたなべ・けんたろう〕
音楽ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業。音楽雑誌の編集を経て、2006年からフリー。『intoxicate』『シンフォニア』『ぴあ』などに執筆。また、世界最大級の音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」のクラシックソムリエ、書籍&CDのプロデュース、テレビ&ラジオ番組のアナリストなどとしても活動中。
文/ 渡辺謙太郎
photo/ Ayumi Kakamu
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tagged: ヤマハホール, 音楽ライターの眼, ジョージ・ハリオノ
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